「稲田防衛大臣辞任」主要5紙はどう論じたのか 各紙の社説を比べてみた

    7月28日、特別防衛監察の結果の公表され、稲田朋美防衛大臣は辞任した。主要5紙の社説で書かれていたこととは。

    稲田朋美防衛大臣が7月28日、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加していた陸上自衛隊による日報問題の監督責任を取り、辞任した。事務方トップの黒江哲郎事務次官と陸自トップの岡部俊哉陸上幕僚長も近く辞める。トップの3人が辞める異例の事態となった。

    この日、特別防衛監察の結果が公表された。

    陸自に保管されていた日報の電子データが残っているという事実について、稲田氏が報告を受けていたのかが、最大の焦点となっていた。

    監察結果では、稲田氏が隠蔽を了承したとされる今年2月の会議について、関係者の説明の食い違いから「日報データの存在について何らかの発言があったことは否定できない」とあいまいにした。

    そして、「日報データの存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった」と結論づけた。

    稲田氏は28日の会見で「報告を受けた認識は今でもないが、監察結果は率直に受け止める」と改めて強調した。

    防衛相は、8月3日に予定される内閣改造まで、岸田文雄外相が兼務する。

    主要5紙は、それぞれ稲田氏の辞任をどう論じたのか。BuzzFeed Newsは、各紙の7月29日朝刊に載った社説を比べた。

    1. 読売新聞「体制刷新で混乱に終止符打て」

    「体制刷新で混乱に終止符打て」と見出しを立てた読売新聞は、「極めて深刻な事態である」と稲田氏ら3人の辞任について触れ、「省内の混乱収拾のため、体制を刷新して出直すのはやむを得まい」とした。

    「看過できないのは情報流出が相次いだことである」として、文民統制(シビリアンコントロール)に「支障を来しかねない」と批判した。

    日本を取り巻く安全保障環境は険しさを増し、防衛省の責務はさらに重くなっている。防衛の本質から離れた問題を巡って失態を重ね、国民の信頼を損ねたことは、極めて残念である

    2.朝日新聞「隠蔽は政権全体の責任だ」

    朝日新聞は「単に防衛省・自衛隊の問題にとどまらない」として「隠蔽は政権全体の責任だ」という見出し。

    実力組織である自衛隊をいかに統制するかという民主主義の根幹にかかわる問題が、安倍政権でこれほどまでに軽々に扱われている。まさに政権全体の姿勢が問われているのだ。

    監察結果について「極めて不十分だった」と酷評。日報データの存在を示す書面を用いた報告がなされた事実が「なかった」のであれば、口頭での報告はあったのか、と「多くの人が疑問に思うはずだ」として批判のトーンを強めた。

    政権にとって都合のよい結論をただ示されても、納得する人はどれほどいよう。

    防衛相の指示で行われる監察が防衛相自身に機能するだろうか。結果をみれば、制度の限界を露呈したというほかない。

    3.毎日新聞「文民統制に疑念を招いた」

    「文民統制に疑念を招いた」と掲げた毎日新聞は、一文目に「国の安全保障を担う巨大組織を揺るがす異常な事態である」と書いた。

    「深刻なのは」文民統制に「疑問を抱かせた」ことと苦言を呈し、具体例を示した。

    稲田氏は学校法人「森友学園」との関係についての国会論議で批判の的となり、自衛隊内からは指導力への疑問が強まった。不満は稲田氏の服装に及ぶこともあったという。

    稲田氏と「保守的な思想を共有している」安倍晋三首相を、安倍首相が目論む憲法9条の改正に言及しながら批判した。

    それほど重視する自衛隊なのに、稲田氏を防衛相として送り込んだのは、お気に入りの稲田氏にキャリアを積ませるためだったとみられている。稲田氏の一連の失態は、安倍流改憲論の浅さをも浮き彫りにした。

    4.日経新聞「自衛隊の隠蔽体質ただせぬ政治の無力」

    日経新聞は「自衛隊の隠蔽体質ただせぬ政治の無力」と社説にした。

    「日本の国防に対する信頼を損ないかねない異常な事態である」と論じ、文民体制が「機能していない」と指摘した。

    陸自は当初の誤った判断に縛られ、防衛省幹部の事なかれ主義が是正の機会を失わせた。最終的に政治家である防衛相が事実を把握し、適切に指示をする文民統制の仕組みも機能していないという重大な問題をはらんでいる。

    「防衛相はいざとなれば自衛隊を統率する立場であり、他の閣僚に増して首相の任命責任は重大だ」と安倍首相の責任を問い、野党が求める国会の閉会中審査に応じるとともに、防衛省と自衛隊の「立て直しに全力をあげてもらいたい」とした。

    5.産経新聞「国の守りは大丈夫なのか」

    産経新聞は見出しを「国の守りは大丈夫なのか」とし、稲田氏は「国防の基盤を台無しにしたのであり、責任は重大である」と厳しく批判。安倍首相の任命責任は「極めて重い」とした。

    自衛隊の精強さを保つには、国民の高い支持が欠かせない。統率のとれた自衛隊でなければ、日本を攻撃しようとする周辺国への抑止力たりえない。

    監察の結果では、稲田氏が隠蔽に関与したとする疑惑が解消されたわけではなく、「見過ごすことはできない」と指摘。国防への不安をこう綴った。

    いざ有事になったときに戦えるのか。内閣支持率に響くか否か、などという話ではすまない。

    稲田氏の辞任の時期について、明確な批判を社説に盛り込んだのは、朝日、毎日、日経の3紙だった。「遅きに失した」「遅すぎたといえよう」と表現した。