令和になって…。"小さな神社"の違和感と願い

    「書いてもらわんほうが良かった」。参拝者の誰にもそんな思いをしてほしくない。

    神社や寺院の参拝・参詣の証として受け取れる「御朱印」ブームが続いている。

    そこに改元が重なり、令和元年の日付が入った御朱印を手にしようと、各地の神社で参拝者が長蛇の列を作った。

    そうしたなか、北九州市にある神社で御朱印を書き続けた宮司が、抱えていた思いをTwitterに投稿して話題になっている。

    「大変な御朱印ブームがきている。ただ、その分、マナーが悪い人が増えてきたと耳にするようになった。だから、Twitterに書いたんです」

    そうBuzzFeed Newsに話すのは、到津八幡(いとうづはちまん)神社の宮司、石崎信考さんだ。

    令和初日となった5月1日、この神社にも多くの参拝者が訪れた。全国各地の神社と同じくお参りを終えると、御朱印を求める人も多かった。

    御朱印を書き続けた石崎さんはこの日、神社のTwitter公式アカウント(@itouzu)で思いを綴った。

    お昼御飯を食べる事なく、9時間程御朱印を書き続けると、意識がモウロウとしてきます。私の右手は悲鳴をあげています。

    「小さな神社」からのお願い

    令和の幕開けは、10連休となったゴールデンウィーク(GW)と重なった。そのため、参拝者はひっきりなしだった。

    石崎さんは「この神社は、宮司の私と権禰宜の神職2人だけの小さな神社」と語る。

    それでも、御朱印を多くの人に手渡すために2人で心を込めて書いた。ただ、忙しさのあまり、GW中にツイートでこんなお願いをした。

    出来ましたら、12時〜13時は避けて頂けると助かります。お昼ご飯を食べるお時間を頂きたくおもいます。

    皆様のご都合もあろうかとは存じますが、お許しくださいませ。

    「マナーが悪い人」とは

    石崎さんは、御朱印を求めてたくさんの人が参拝することを悪く思っているわけではない。むしろ、ありがたいことだと思っている。

    「マナーが悪い人が増えてきた」とするのは、あくまで一部の人に対してだ。その体験の一つを、「先日の出来事」としてTwitterに綴っている。

    御朱印をお書きして「どうぞ」と渡しましたら「特別御朱印も欲しい」といわれたので「参拝の証として授与してますのでお一人様一つのみです」と申し上げたら、何と私の書いたページを引きちぎって「お返ししますから、特別御朱印を下さい」と言ってきたのです。

    こういう事をされると、とても悲しくなります。当然、特別御朱印はお渡しせず、お初穂も頂かずにお帰り頂きました。「ブーム?」が過熱すると色んな事が起こります。連休も終わった事ですし、もう、落ち着くでしょうね。

    二度と同じ思いをしてもらいたくない

    石崎さんは30年ほど前、勤労学生として明治神宮で修行していた。

    「御朱印ブーム」がない頃だった。ある男性の参拝者に、自らが書いた御朱印を手渡した。

    すると、男性は「こんなんなら、書いてもらわんほうが良かった」と口にしたという。

    御朱印を書くことに慣れておらず、自身でも「字は下手くそですよ」と振り返るが、大きなショックを受けた。

    「書いてもらわんほうが良かった」。もう誰にもそんな思いをしてほしくないから、今回の一連のツイートに至った。

    「コレクターのような人」への願い

    石崎さんは話す。

    「ただのコレクターのようになっている人がいます。御朱印とは何かを理解せず、神様への信仰もなく、美しいものを集めるだけになってしまっているのは悲しいです」

    御朱印とは、神社や寺院に参拝・参詣して神や仏とご縁を結んだ証とされている。

    石崎さんはそういった御朱印の意味を理解したうえで、マナーをわかってもらいたいと訴える。

    それは、この神社のように「1人1枚」の決まりや、お参りをせずに御朱印だけを受けることだけでない。

    近くの神社では、書かれた御朱印を見て「インターネットに載っていたものと違う」といった苦情も聞くという。

    御朱印は、書く神職によって個性はさまざまだ。手書きゆえに、統一された文字になるとは限らない。

    「ネットに載っていた同じ字がほしい」などの要望も同じで、「書いた本人が傷つくと言うことをわかってほしいです」と石崎さんは言う。

    「少人数の神社では、御朱印が集中すると社務が回らなくなります。これはわがままな希望ですが、特に土日の御朱印は午後1時から午後4時までにおいでいただき、夜に社務所を訪れないようにお願いしたいです」

    「令和に元号が変わったのを契機に、御朱印を始められた方もいらっしゃると思います。みんなが気持ちよく御朱印集めをしていただけたらと願っております」