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一目惚れした女性同士のカップルの恋、「この人なら大丈夫」と確信した会話

最高の1日だったことはわかる。

ジェニー、あなたは毎日私に素敵な言葉を贈ってくれるよね。「愛している」「美しい」「完璧だ」

その全てをこれからは私からも贈り続けさせて下さい。

ずっと、ずっと。だから「ずっと一緒にいて下さい」の答えはもちろんイエスです。

2020年、なるみさん(27歳)が、パートナーのジェニーさん(28歳)に送った「誓いの言葉」だ。

2人は、女性同士のカップル。「私たちが式をすることで、誰かの勇気になれたら」と、ウエディングドレスを身にまとった。

出会いは2020年1月。女性限定で登録できるマッチングアプリだった。

アプリの画面に映るなるみさんの顔を見て「一目惚れしました」と、ジェニーさんは照れながら振り返る。

マッチングしてから1週間のやりとりを経て、会うことにした。

なるみさんは、自身が開いた香水を調合するワークショップに誘ったのだ。ジェニーさんのために、1人だけの予約枠を最後の時間帯に設けた。

待ち合わせの時間になり、ジェニーさんは会場に着くと、扉越しになるみさんの顔を見た。

「なるちゃんが笑顔で手を振って近づいてきてくれて、やっぱりかわいいと思いました」

この人なら大丈夫。確信した会話

かわいくて、しっかりしていて、知的そう。2人がアプリのプロフィール欄を見て感じた第一印象の共通点だ。

文章でやり取りを交わしていた時、不思議と自然体でいられた。

ただ初対面の時、少しだけ変化があった。ジェニーさんが恥ずかしそうにし、なかなか目線を合わせなかったそうだ。

ジェニーさんは「きれいすぎると思ったからですよ」とのろける。

なるみさんはその日に感じ取ったことがあった。

「食事をしている時は、さっきのシャイガールはどこいったってくらい話してくれて。この人とはずっと一緒にいるだろうな、と直感で思いました」

意気投合した2人は、2回目のデートで深い話もじっくりした。

日本では同性同士の結婚がまだ認められていないけれど、どう考えているのか。子どもについてはどうか…。

それぞれの考え方を知り、「問題ないなと思いました」と見つめ合って笑う。

この人なら大丈夫。ともに確信した。

深い話を終えた後、ジェニーさんが告白したそうにしているのが伝わった。なるみさんは「すごいもじもじしてたんですよ」と懐かしむ。

でも、なかなか告白の言葉を聞けなかった。

帰る時間が近づき、電車に乗った。そして、別れる予定だった乗り換えのホームでその瞬間は訪れた。

2人はぎゅっとハグをした後、なるみさんが「頑張れ」と投げかけた。その言葉を受けると、ジェニーさんが勇気を振り絞って 「付き合ってください」と申し出た。

「お願いします」

悩んだ挙式、「どうやったらできるかを考えて」

それから週末になると、なるみさんの自宅でおうちデートをする日々を送った。

コロナ禍で電車を利用しなくてもいいようにと、ジェニーさんの父親が毎回送り迎えをしてくれた。2人の交際を最初から全面的にサポートしてくれたのだ。

なるみさんは言う。

「ジェニーは私のことを、家族やお友達にもちゃんと紹介してくれました。そして、家族のみんなは、最初から家族の一員として迎えてくれて。嬉しかったです」

どちらの両親にも認められ、応援され、コロナ禍での挙式に向けて準備を進めた。

2人が利用したのは、完全オーダーメイドのオリジナルウエディングブランド「CRAZY WEDDING」を運営するCRAZYのキャンペーンだった。

セクシュアルマイノリティのカップルのサポートにも力を入れるCRAZYは、5組限定で無料で挙式を実施するキャンペーンを打ち出していた。

それを知った2人は、同社の「全ての人が結婚式を挙げられる世の中を作りたい」「一生のパートナーが見つかり、愛を誓い合うことに同性も異性も関係ありません」との思いに感銘を受け、応募した。

とはいえ、社会はコロナ禍だ。ジェニーさんは式を挙げられるか不安にもなった。

そんな彼女に、なるみさんは言った。「緊急事態宣言が発令されて、絶対に開催できなくなるまでは、どうやったらできるかを一緒に考えてほしい」

ジェニーさんは「確かに、そうだな」と素直に受け止めた。そして、無事に式を執り行った。

『美女と野獣』の曲に込めた思い

2020年11月2日。式場には20人が参列した。ジェニーさんの父親は牧師で、司式をしてくれた。司会者はジェニーさんの兄が務めた。

Zoomを利用して、60人ほどがオンラインで出席し、アメリカにいる親族にも式の様子をリアルタイムで届けた。

食事のほか、会場と同じ香りを感じてほしいと香り付きの花びらもリモートで参加した人に郵送するなど工夫した。

どれだけ会場と一体感が出せるか、おもてなしができるかを考え抜いた式だった。

替え歌やダンスを中心に披露し、どこにいても参加者が楽しめる式を心がけた。

2人がアニメ『美女と野獣』の曲で踊った時には、こんな気持ちを込めた。

美女のように美しい部分も、野獣のように汚くなってしまう部分も、2人ともある。だから、それを一緒に認め合いながら、これからも生きていこう。

ほとんど座ることなくあっという間に時が過ぎた。式後は達成感でいっぱいに。

「楽しかった。もう一回、式を挙げる?」と言い合うほど、たくさんの友人に祝われた式となった。

本当の「結婚式」を挙げたい

とはいえ、2人はまだ式は終わっていないとの気持ちでいる。

日本で同性婚が認められた後、「結婚式」を挙げたいのだ。

今回の式で、その時のために別で用意したドライフラワーのブーケを大切に保管している。時が来たら、もっと多くの人を招待して、盛大にブーケトスをする日を夢見る。

式を機に、なるみさんはカミングアウトしていなかった友人たちにも、LINEを通してジェニーさんとの関係を報告した。

全員から「おめでとう」と返ってきて、実感した。

「『愛に境界線はいらない』というCRAZYさんの言葉通り、祝福されているカップルに対し、何か境界をつけるような人は1人もいませんでした」

札幌地裁は2021年3月17日、同性カップルが婚姻による法的効果を得られないことは「違憲」だとする初の判断を下した。同性婚の実現に向けた法整備が必要だと示された形だ。

この判断に、弁護団と支援者らは「結婚の平等へ 大きな一歩」と記したバナーを掲げた。

なるみさんとジェニーさんがブーケトスする日に向かって、日本は少しずつ近づいている。

式の日、ジェニーさんが両親への手紙を歌にした。こんな歌詞がある。

No more pretending my girlfriend is a boy

もう自分の彼女を男の子に置き換えて話さなくていい

And I know I'm shining Just 'cause I can be myself

自分が自分でいるだけで自分がとても輝いているように思えた

Don't know how hard it's gonna be to live open

オープンにして生きることがどれだけ大変かわからないけど

But I know I had the best day with you today

最高の1日だったことはわかるんだ

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Girls Right TV / Via youtube.com

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