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「こんな幸せになれる式は初めて」と反響。祖母のための式、手紙で語られた言葉

男性同士の2人は、日本で「結婚式」を挙げられないけれど、ウエディングセレモニーを開きたいと思った。おばあちゃんのため、LGBTQ+の人を含む、すべての人のために。

《今まで思っていただけの“ハズバンド“という言葉を全力で叫びたい》

イタリア人のヴィンチェさんは、健太さん宛ての手紙に、こんな風にしたためた。

2人は男性のカップル。東京都内の式場で和装の晴れ着に身を包み、生涯をともに過ごすことを誓い合った。

出会いは2017年だった。健太さんが、ゲイ向けのアプリを見ていると、たまたま自宅のそばにいたヴィンチェさんが画面に表示された。

「かっこいい」。容姿に惹かれ、すぐに声をかけた。

健太さんが、周囲にゲイであることをカミングアウトしてから半年後。ヴィンチェさんも来日して数ヶ月後のことだった。

実際に会って話すと意気投合した。その日は夜が明けるまで語り合い、すぐに同棲を始めた。2人はそれぞれ、こう振り返る。

健太さん「顔がタイプなのは、今でも変わりません。それに、ヴィンチェは、いつも僕を理解しようとしてくれるんです。人生を考えた時、自分に必要な人だと思えました」

ヴィンチェさん「私はすぐに飽きるタイプなんです。でも、健太のことは全然飽きない。他の日本の男性とは、魅力が全然違いました」

式は「おばあちゃんのため」

4年後の2021年、ヴィンチェさんがプロポーズし、婚約した。

とはいえ、日本では同性同士の結婚は法的に認められていない。

正式な「結婚式」ではないけれど、ウエディングセレモニーを開きたいと思った。

健太さんの育ての親であるおばあちゃんに、晴れ姿を見せたかったからだ。

おばあちゃんは、健太さんの成長を見届けることを目標に生きてきた。健太さんが20歳になると、「悔いはない」と言うようになった。

それではいけないと、次の目標にしたのが「健太さんの挙式」だった。

だが、健太さんが結婚しようと思った相手は、女性ではなく男性だ。

そのことを打ち明けると、「もう会いたくない」「式にも行きたくない」とまで言われた。

「おばあちゃんは昔の人の考え方。ましてや息子のように育てた孫がゲイで、相手が外国人とわかって、大きなショックを受けたんです」

サポートにまわってくれたのは、健太さんの姉だった。「おばあちゃんの大事な健太が、大切だと思っている人がいる。その人は、おばあちゃんにとっても大切な人になるんじゃないの?」と説得を重ねてくれた。

その結果、ヴィンチェさんをおばあちゃんに紹介できた。おばあちゃんは予想外に彼を気に入り、今では2人を応援してくれている。

式場で流した涙。語られた思い

2人は1月末の式当日、ゲストたちに温かく迎えられ、大粒の涙がほほをつたった。指輪を交換し、誓約書に署名。誓いのキスもした。

おばあちゃんは、「健太、おめでとう。おばあちゃん、会いたいよ」と祝福のビデオメッセージを送ってくれた。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、老人ホームからの外出許可がおりなかったそうだ。

おばあちゃんに晴れ姿を直接見てもらうことはできなかった。けれど、2人は式を挙げてよかったと思っている。

ゲストの人たちに、自分たちの思いを届けられたからだ。

人を好きになり、愛すことに年齢も性別も何もかも関係ない、「純粋に人を好きになる気持ちが大事」だと伝えたかった。

ヴィンチェさんは手紙を読み上げると、健太さんを「宝石」だと表現した。そして、こんな言葉を残した。

《今まで思っていただけの“ハズバンド“という言葉を全力で叫びたい。愛は、条件を知らない。愛の表現は、色々でいい。みなさんに知ってもらいたいです》

健太さんは、手紙で日本社会がつくりあげた「見えない男性像」に苦しんだ過去を振り、こう語りかけた。

《僕たちは日本の法律上、結婚することができません。みんなと同じように育って、同じご飯を食べてきたのに。好きになった相手がたまたま男性だっただけで、結婚の選択肢が与えられないのが現状です》

《結婚をする/しないではなく、全ての人たちに選択肢の一つとして、平等に結婚という権利を与えられる社会になってくれたら嬉しいし、そうなると信じています。そして、この式を通じ、誰かの背中を押せたら嬉しいです》

今回の式は、LGBTQ+のカップルの挙式を無料で実施する取り組みに応募して実現した。

LGBTQ+カップルのため、祝福の機会を積極的に提供している「CRAZY WEDDING(クレイジーウェディング)」と、ゲイ向けのアプリ「Blued」を運営する「Blued Japan」が協同でプロデュースした。

両社は「セクシュアリティに関わらず、愛で結ばれる2人は祝福されるべき」「すべての人に等しくお祝いを」という思いが一致し、企画した。

式後、ゲストたちから「こんな幸せになれる式は初めてだった」「自分たちが声を出さなきゃ」と声をかけてもらい、2人は反響の大きさを実感したという。

いつかセレモニーではなく、「結婚式」を開きたいと考えている。

日本で、法的に結婚を認めてもらえる日が必ずくる。2人はそう信じている。

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