人通りの中で劇 あなたはこの作品を観ても、日常のいち場面に感じるでしょう

    劇を仕掛けるのは、オーストラリアの劇団「バック・トゥ・バック・シアター(BtBシアター)」。知的障がいのある6人の俳優を中心に構成している。

    野外を劇場に変えてしまう。そんな劇がいま、上演されている。

    通行人としてそれを目撃しても、日常のいち場面に感じるだろう。どんな会話をしているのかわかるのは、ヘッドホンを装着した観客だけ。雑踏の中で、どうして物語を紡ぐのだろうか。

    東京・池袋の街中で作品「スモール・メタル・オブジェクツ」を披露しているのは、オーストラリアの劇団「バック・トゥ・バック・シアター(BtBシアター)」だ。

    知的障がいのある6人の俳優を中心に構成している。

    2005年からこれまで、世界35都市の駅やショッピングモール、空港など屋内外の場所で上演してきた。日本では初演となり、開催中の「東京芸術祭2018」のメインプログラムの一つとなる。

    観客は特設の客席でヘッドホンをつけ、音楽とともに出演者4人による「怪しげな謎の取引」の会話を耳にする。

    ある"商品"を持つ2人と、その対価としてお金を払おうとする2人。だが、取引はなかなかうまく進まない。

    作品のテーマは「お金をめぐる人間の価値観」。

    最終的に勝つのは金銭か、はたまた友情か。作品を通して自らの価値観をも問われることになる。

    街中で展開される劇では、人々や車が行き交い、刻々と風景が変化する。二度と見ることのない一瞬が作品の一部となる。

    たとえば、通行人や腰を下ろす人に「あなたはギャリーですか?」と英語で話しかける場面がある。思いがけずエキストラとなった人のなかには、質問を聞き取れず、戸惑う人もいる。

    いつ、どこから出演者が現れるのかの予想が難しい点もまた、おもしろい。

    なぜ、そういった手法をとったのか。BtBシアターのエグゼクティブ・プロデューサーのアリス・ナッシュさんは、BuzzFeed Newsに語る。

    「ワイヤレスマイクとヘッドホンを使えば、雑踏の中で演じたとしても声を聞くことができます。『劇をするなら劇場で』という考えにとらわれず、場所を選ばずに新しい表現ができるかもしれないと思ったのが出発点でした」

    BtBシアターが常に意識するのは、社会的、政治的、文化的テーマを含んだ作品にすること。障がい者が役者という点を売りにしているわけではないが、主要な構成員だからこそ、この劇団を劇団たらしめるという。

    「作品はシンプルな物語。ですが、街のすべての人やモノが不可欠な要素で、万人に訴えかける内容です。観ていただければ、きっと驚きや発見があるはずです」

    上演は東京都豊島区の池袋西口公園で、10月29日まで。対象年齢15歳以上。詳細はこちらから