埼玉の公立中学校で「アベノマスク着用」とプリントを配り、批判の声 市教委は「遺憾」

    埼玉県深谷市の市立中学校で、保護者宛のプリントに「アベノマスク着用」と国から支給されたマスクの着用を義務づけるかのような表現があった。市教委は「事実」と認めている。

    埼玉県深谷市の中学校で、保護者に配られたプリントに「アベノマスク着用」と国から支給されたマスクの着用を義務づけるよう読み取れる項目があり、SNS上で議論を呼んでいる。

    深谷市教育委員会は、このプリントが配られたことは事実と認めたうえで、「市教委からの指示ではなく、学校単独で行ったこと」だと、BuzzFeed Newsの取材に語った。

    プリントには、「アベノマスク着用(別のマスク着用生徒については携帯しているか)の確認」と明記され、「個別指導」の欄には「アベノマスク(着用、もしくは持参を忘れた生徒は少人数教室に残る)」とあった。

    このように、生徒が着用するマスクは「アベノマスクでないといけない」と捉えられ、そのマスクを忘れた生徒は個別指導の対象となると読み取れる表現となっている。

    市教委によると、このプリントは5月22日、10校ある市立中学校のうちの1校で配られた。

    その学校のある学年で、分散登校があった5月22日にプリントが配られた。学級担任が記したものを学年主任や校長が確認したうえで用意した。他に「アベノマスク着用」と呼びかけた学校はないという。

    学校側の狙いと齟齬

    市教委学校教育課の担当者は、「国から学校に支給された布マスクを有効活用してほしいとの思いで、学年の担当者が書いた」とBuzzFeed Newsに話す。

    というのも、国は4月、全国の小学校、中学校、高校などに児童生徒と教職員1人あたり1枚ずつ行き渡るように布マスクを配った。当該学校でもそのマスクを受け取り、5月22日に生徒に渡した。

    学校側は、独力でマスクを用意するのが難しい家庭がある中、「国が用意したマスク=アベノマスク」と表現すれば、保護者に伝わりやすく、学校に配布されたマスクを活用してもらいやすいのではないか、と考えたという。

    しかし、保護者から「学校から配布されたマスクを着けなくていけないのか。他のマスクではダメなのか」という問い合わせが市教委にも寄せられたという。

    Twitterでは「学校が『アベノマスク』って言葉を使う事にびっくり。で、それを強要している事にもびっくり。他マスク認めない事にもびっくり」「アベノマスクでなければならない根拠を教えてくださいと問い合わせるべき」などと批判の声があがった。

    なぜ「アベノマスク」を強制し、着用や持参していない場合の罰則を設けていると捉えられる表現となったのか。

    市教委の担当者は「罰則を設けているわけではなかった」と話す。

    「6月1日から登校が始まるので、家庭的にマスクを用意するのが難しい生徒たちに、学校が個別に聞き取りをしたかったといいます」

    「国から配られたマスク限定という思いは、当初からなかったそうです。しかし、配慮したはずが、『アベノマスク』というそもそも誤った表現になり、言葉足らずな表現になってしまったと話しています」

    「『強制』や『罰則』と捉えられる表現になっており、遺憾です。誤解を招く表現になってしまったことを、学校として反省しています」

    どのマスクかは「保護者の判断」

    当該学校は5月25日午後、保護者たちにお詫びのメールを一斉送信した。そして、生徒に着用してもらうマスクは限定することなく、どんなマスクでも構わないと連絡したという。

    また、市教委は26日、市内の幼稚園、小学校、中学校の園長と校長が集う会で事情を説明し、注意喚起する。担当者は言う。

    「言葉一つで大きな問題になってしまう。保護者や子どもたちに誤解を生じないよう、一つ一つの言葉を丁寧に扱わなくてはいけないと伝えます」

    市教委としては「保護者の希望に合うマスクの着用」を今後も周知していく。

    「布マスクは、衛生面でどうなのかと疑問に思い、使い捨てマスクや手作りマスクが良いという保護者もいらっしゃると思います。そのことから、保護者の判断にお任せしています」

    「マスクは着用してもらいたい。そのため、もし用意できなかったり、忘れたりした子がいれば、学校で用意した予備のマスクを配っています。全員に行き渡る使い捨てのマスクは確保しています」