最も短かった所信表明演説 北朝鮮情勢、少子高齢化、憲法改正…安倍首相が語った全て

    衆参両院の本会議で所信表明演説。

    安倍晋三首相は11月17日午後、衆参両院の本会議で所信表明演説をした。

    北朝鮮情勢と少子高齢化を「国難」と掲げ、「政策の実行」の必要性を強調。与野党の枠を超えて建設的な政策論議をし、「共に日本の未来を切り拓いていこう」と呼びかけた。

    演説は約3500字で、1次含め安倍内閣で最も短かった。

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    国難は、北朝鮮情勢と少子高齢化

    緊迫する北朝鮮情勢、急速に進む少子高齢化。今、我が国は、まさに国難とも呼ぶべき課題に直面しています。国民の信任なくして、この国難を乗り越えることはできません。

    先般の総選挙の結果、衆参両院の指名を得て、引き続き内閣総理大臣の重責を担うことになりました。

    「安定的な政治地盤のもとで、政策をひたすらに実行せよ」

    これが総選挙で示された国民の意思であります。お約束した政策を一つ一つ実行に移し、結果を出していく。

    全身全霊を傾け、国民の負託に応えていくことを、この議場にいる自由民主党および公明党の連立与党の諸君とともに、国民の皆様にお誓い申し上げます。

    我が国の未来を切り拓くことができるのは、政策です。そして、政策の実行であります。この国会において、それぞれの政策を大いに語らせ、建設的な議論を行いながら、国民のための施策をともに前に進めていこうではありませんか。

    安全保障環境は、戦後最も厳しい

    今、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しいといっても過言ではありません。国民の信任を背景に、積極的な外交政策を展開してまいります。北朝鮮による我が国を飛び越える相次ぐミサイルの発射、核実験の強行は断じて容認できません。

    先般、トランプ大統領が来日し、日米同盟の揺るぎない絆を世界に示しました。トランプ大統領は拉致被害者の一人一人の写真を真剣な眼差しで見つめながら、ご家族の想いのこもった訴えに熱心に耳を傾けてくれました。

    ご家族もご高齢となる中で、拉致被害者の方が再び故郷の土を踏み、ご家族と抱き合う時まで私の使命は終わりません。

    北朝鮮の核・ミサイル問題、そして拉致問題を解決する。北朝鮮にその政策を変更させなければならない。そのために国際社会とともに北朝鮮への圧力を一層強化してまいります。

    先日のAPEC東アジアサミットにおいても、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席をはじめ、各国首脳と北朝鮮問題に対する緊密な協力を確認いたしました。

    日中韓サミットを早期に開催し、3カ国の連携をさらに深めてまいります。北朝鮮による挑発がエスカレートする中で、あらゆる事態に備え、強固な日米同盟のもと具体的に行動を取っていく。

    ミサイル防衛体制をはじめとする我が国の防衛力を強化し、国民の命と平和な暮らしを守るため、最善を尽くしてまいります。

    経済社会システムの大改革に挑戦する

    この5年間、アベノミクス改革の矢を放ち続け、雇用は185万人増えました。この春、大学を卒業したみなさんの就職率は過去最高です。

    この2年間で正規雇用は71万人に増え、正社員の有効求人倍率は調査開始以来初めて1倍を超えました。この経済の成長軌道を確かなものとするため、今こそ最大の課題である少子高齢化の克服に向けて力強く踏み出すときであります。

    生産性革命、人づくり革命を断行いたします。来月、新しい経済政策パッケージを策定し、速やかに実行に移します。人工知能、ロボット、IOT、生産性を劇的に押し上げるイノベーションを実現し、世界に対抗する生産性革命を牽引していく。

    2020年度までの3年間を「生産性革命集中投資期間」と位置づけ、人手不足に悩む中小・小規模事業者も含め企業による設備や人材への投資を力強く促します。

    大胆な税制、予算、規制改革。あらゆる施策を総動員することで、4年連続の賃金アップの勢いを更に力強いものとし、デフレからの脱却を確実なものとしてまいります。

    「人生100年時代」を見据えた経済社会のあり方を大胆に構想し、我が国の経済社会システムの大改革に挑戦します。

    幼児教育の無償化、真に必要な子どもには高等教育を無償化を

    幼児教育の無償化を一気に進めます。2020年度までに、3歳から5歳まで全ての子どもたちの幼稚園や保育園の費用を無償化します。

    0歳から2歳児も、所得の低い世帯では無償化します。 待機児童解消を目指す安倍内閣の決意は揺るぎません。

    本年6月に策定した「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度までに32万人分の受け皿整備を進めます。

    どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば高校、高専にも、専修学校、大学にも行くことができる。そういう日本に皆さん、していこうではありませんか。

    真に必要な子どもたちには、高等教育を無償化します。 いくつになっても、誰にでも、学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。そのためのリカレント教育(社会人になった後に大学や大学院で学び直すこと)を抜本的に拡充します。

    こうしたニーズに応え「人づくり革命」を牽引する拠点として大学改革を進めてまいります。

    「全世代型」の社会保障制度へ

    2020年代初頭までに50万人分の介護の受け皿を整備する。その大きな目標に向かって、介護人材確保への取り組みを強化します。

    他の産業との賃金格差をなくしていくため、更なる処遇改善を進めていきます。

    子育て、介護など現役世代が抱える大きな不安を解消し、我が国の社会保障制度を、お年寄りも若者も安心できる「全世代型」へと大きく改革してまいります。

    女性が輝く社会、お年寄りも若者も障害や難病のある方も誰もが生きがいを感じられる「一億総活躍社会」をつくり上げます。

    再来年10月に引き上げが予定される消費税の使い道を見直し、子育て世代、子どもたちに大胆に投資していく。消費税による財源を、子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランス良く充当することで、財政健全化も確実に実現してまいります。

    少子高齢化を乗り越え、我が国が力強く成長する道筋を、皆さん共に描いていこうではありませんか。

    高い技術やノウハウの世界への展開は、成長するチャンス

    インドの広大な大地を、日本が誇る新幹線が駆け抜ける。この9月、高速鉄道の建設がスタートしました。200回を超えるトップセールスが実を結び、インフラ輸出額は5年間で10兆円増加しました。

    我が国の高い技術やノウハウを世界に展開することで、少子高齢化の中でも、大きく成長できるチャンスが広がります。

    自由で公正なルールに基づく経済圏を世界に拡大していく。11カ国によるTPP協定の早期発効を目指します。併せて、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)が野心的な協定となるよう交渉をリードしてまいります。

    EUとの経済連携協定が、4年以上に及ぶ粘り強い交渉の末、大枠合意に達しました。人口6億人、世界のGDPの3割を占める巨大な経済圏。アベノミクスの「新しいエンジン」です。

    若者が将来に夢や希望を持てる「農林水産新時代」を

    農家の皆さんの不安や懸念にもしっかり向き合い、安心して再生産できるよう十分な対策を講じてまいります。水田のフル活用を図り、我が国の豊かな中山間地域、美しい故郷を守り抜いてまいります。

    世界への挑戦は、手間暇かけてこしらえた質の高い日本の農林水産物にとって大きなチャンスです。農林水産物の輸出は、本年も5年連続で過去最高を更新するペースで伸びています。

    40代以下の新規若手就農者は、調査開始以来、初めて3年連続で2万人を超えました。 農政改革は地方創生の大きな切り札です。年内に生産性向上に向けた抜本的な林業改革、水産業改革のプランを取りまとめます。

    農林水産業全体にわたって改革を展開し、若者が将来に夢や希望を持てる「農林水産新時代」を切り拓いてまいります。

    被災地の生業の復興、心の復興を力強く支援

    東北の被災地では、農地の8割以上が作付け可能となり、全ての漁港が復旧しました。原発事故で大きな被害を受けた福島では帰還困難区域を除き、ほぼ全ての避難指示が解除されたことに続き、先月から中間貯蔵施設が稼働しました。除染土壌の搬入を進め、2020年には身近な場所から仮置き場をなくします。

    被災地の復興を一層加速するため、今後とも生業の復興、心の復興を力強く支援してまいります。

    本年も全国各地で自然災害が相次ぎました。激甚災害の速やかな指定が可能となるよう、その運用を見直します。事前防災・減災対策に徹底して取り組み、国土強靭化を進めてまいります。

    与野党の枠を超えて、建設的な政策論議を


    自由民主党と公明党が野党として過ごしたあの3年3カ月。


    私たちは、なぜ政権を失ったのか。痛切に反省し、国民の皆様の声に耳を傾けるところからスタートしました。

    全国各地でミニ集会を行い、国民の皆様からの厳しい声を糧に「政策」を鍛え上げました。

    そして、その「政策」の実行にこの5年間、私たちは全力を尽くしてまいりました。

    日本の未来をしっかりと見据えながら今何をなすべきか。与野党の枠を超えて、建設的な政策論議を行い、共に前に進んでいこうではありませんか。

    共に知恵を出し合いながら、共に困難な課題に答えを出していく。そうした努力の中で、憲法改正の議論も前に進むことができる。そう確信しています。

    政策の実行、実行、そして実行あるのみであります。我が国が直面する困難な課題に真正面から立ち向かい、共に日本の未来を切り拓いていこうではありませんか。

    ありがとうございました。

    BuzzFeed JapanNews