アプリ版X(旧Twitter)の最新バージョンで、従来の「引用ツイート」が「件の引用」という表記に変わりました。
「件(くだん)の引用」と読むのではないか?」
「未来を予言する妖怪・件(くだん)のこと?」
……といった声まで出ています。
SNSで話題の妖怪「件」とは何なのか。調べてみました。
未来を予言する妖怪「件(くだん)」とは?
湯本豪一記念日本妖怪博物館(広島県三次市)で学芸員を務める吉川奈緒子さんの解説によると、「件(くだん)」とは、江戸時代から出現の記録が見られる予言獣のこと。
人を意味する「にんべん」に牛と書かれた「件」の漢字が示す通り、人と牛とが一体になった姿の妖怪。生まれてすぐに予言を行い、数日のうちに死ぬそうです。
予言の内容は疫病の流行や戦争、災害など。世情が不安な時代を反映したかのように現れ、明治時代には日露戦争を予言し、昭和の太平洋戦争時には終戦を予言。新型コロナの感染拡大時に話題になった「アマビエ」と同様に、厄よけの方法として自らの絵を張り置くよう伝えたそうです。
日本妖怪博物館では2022年、「予言獣のチカラ アマビエとアマビコたち」という企画展を開催。「件」についても取り上げました。
この企画展で展示された「件獣之写真」(慶応3年=1867年)の大判錦絵は、現在の島根県で「件」が生まれたと報じています。その姿は、人の頭がついた牛。豊作と病の流行を予言し、3日で落命したとつづられています。
このとき、「件」の木彫りの像20体も展示しました。像の頭部は壮年の男性のようで、それぞれ異なる顔をしているとのことです。日本妖怪博物館の公式アカウントに写真が投稿されています。
ゲームのキャラクターを思い出した人も
90年代の児童番組『ウゴウゴルーガ』でCGクリエイターを務めた故・秋元きつねさんは、自身が手がけたTVゲーム「せがれいじり」の中で、件をモチーフにしたキャラクター「くだん」を登場させていました。「件の引用」という言葉で、この「くだん」を思い出した人もいたようです。
世情不安の時代に現れる「件」。Xに出現したのは必然だったのか……?
Twitterを買収したイーロン・マスク氏は7月以降、閲覧可能なツイート数を大幅に制限したほか、サービス名を突然「X」に改名するなど、ユーザーを翻弄する行為が続いています。
「件の引用」をめぐって、未来を予言する妖怪との関連が取り沙汰されたのも、サービスの行方に不安を覚える旧Twitterユーザーたちの心の現れかもしれません。
※引用ツイートされた場合に各投稿に表示される「○件の引用」という日本語を、そのまま使っただけという説もあります。