知床遭難事故、条件付き運行に国交相は「あり得ない」。会見中の社長の態度に非難の声も。

    4月27日に記者会見を開いた社長は曖昧な説明を繰り返しました。ネット上では、安全管理上の問題や社長の態度について指摘する声も上がっています。

    北海道・知床半島沖で4月23日、乗員乗客26人を乗せた観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が消息を絶った事故。

    運行会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(58)が27日に開いた会見では、「条件付き運行」や「無線の故障」といった安全管理上の問題が露呈した。

    会見では、桂田社長があいまいな説明に終始し、時折笑うような表情も見せていた。SNSではこうした面にも批判が出た。

    基準はあいまい

    会見の冒頭、桂田社長は事故当日の朝についてこう話した。

    「午前8時から船長と打ち合わせをした際、『午後から天気が荒れそうだが、10時からのクルーズは出航可能』と報告を受け、条件付き運行として認めた」

    海が荒れれば引き返す条件付き運行には、記者から具体的な説明を求める質問が相次いだ。

    波の高さなど引き返す具体的な基準はあるのか、判断は誰がするのか、条件付き運行はよくあることなのかーー。

    桂田社長は自社の安全基準を、「波が1メートル、風速が8メートル以上で欠航。視界も300メートル以上ないと欠航」とした上で、次のように説明した。

    「安全基準は明確なものではない。海がしけておらず、天気予報も大丈夫で、通常通りだったので出航した」

    「引き返すのは現場の船長の判断。途中で引き返してもお客様は一定の料金を支払うことになっていた。条件付きは前からやっている」

    しかし、その日は波浪、強風注意報が周辺に出ていた。付近は春先に海が急に荒れることもあるが、桂田社長はそれらについても「承知していた」という。

    記者から「悪天候でも条件付き運行が可能なら、安全基準は何のためにあるのか」と問われると、「基準は明確ではないので……」と言葉少なだった。

    斉藤鉄夫国交相は28日、出航判断の基準を示した安全管理規定があるとし、「条件付きはあり得ない」と突き放した。

    チェックミス

    無線の故障についても質問が飛んだ。

    桂田社長は事故当日の午前8時半頃、他社から「無線のアンテナが壊れている」と指摘を受けていたという。

    アンテナは事務所の屋根に設置され、船とのやりとりに欠かせない器材。しかし、桂田社長は業者に修理を依頼しただけで、カズワンの出航を取りやめなかった。

    その理由については、こう説明した。

    「他社の無線で対応できるし、携帯電話でも使えるので」

    しかし、無線は「他社が聞いてくれることを期待した」と、自社の社員を他社の事務所に配置する対策などはとっていなかった。

    また、事故当日まで無線が壊れていることに気づかず、通じるかどうかの確認作業もしていなかったといい、「私のチェックミス」とした。

    桂田社長はこのような安全管理上の問題について問われた際、このように話した。

    「チェック漏れのところが。シーズン初めだったので……。安全管理がずさん、結果的にはそのような形だと思います」

    「まあ、今となれば、このような事故を起こしてしまったことですので、(出航は)判断的には間違ったと考えております」

    開き直りみたい

    SNSでは、桂田社長の態度や表情を指摘する声が上がった。

    安全管理上の問題が会見で露呈したことについて、「こんな状態で客を乗せていたのか」「無線も壊れたままで出航するなんて」などの投稿が見受けられた。

    また、桂田社長は「天気予報を見誤ったのではないか」という記者の質問に対し、「自然現象なので、天気図も常に当たるわけではない」と回答。

    これについても、「開き直りみたい」「天気予報を根拠にしないで海に観光客を連れ出してはいけない」という意見も上がった。

    また、記者の質問の後に笑うような表情を見せたことについては、「反省しているのかな」「実にひどい会見だった」「発言や対応が軽い」と非難する人が相次いだ。