約200万人が暮らす北の大都市・札幌で、ヒグマを目撃したという情報提供が相次いでいる。
ヒグマは5〜7月が繁殖期で、オスを避けた子連れのメスが市街地に出てくることがある。昨年6月には市内で4人が相次いで襲われる被害もあった。
市は被害者にならないための方法として、「ヒグマと出くわさないことが最も重要」と呼びかけている。
これから観光客も増えるシーズン。どうすればヒグマに遭遇するリスクを減らせるのか。また、万が一ヒグマに出くわしてしまったらどうすればいいのか。
BuzzFeed Newsは札幌市に取材した。
そもそもヒグマとは
札幌市によると、ヒグマは国内では最も大きい陸上動物で、北海道にしか生息していない。
大きさは、オスが2メートル、体重150〜400キロほど、メスが1メートル50センチ、体重100〜200キロほどだ。
繁殖期は5〜7月で、オスは行動範囲を広げて山林を動き回る。一方、子グマを連れたメスは繁殖に参加しない。
しかし、メスと交尾するためにオスが子グマを殺すことがある。そのため、この時期に子連れのメスがオスのいる山林を避けて市街地に出没することがある。
また、独り立ちしたばかりの若いオスも迷って市街地に出没することもあるという。
Googleマップで
札幌市は、ヒグマとの事故を防ぐためには、「出遭わないことが最も重要」としている。
そのため、ホームページ上で「ヒグマの出没情報」を提供している。
ヒグマの目撃情報などがあった日時や場所を一覧にしており、今年は4月以降、43件の情報が寄せられている。
また、2016年からGoogleマップを活用し、地図上に出没場所を分かりやすく示している。
「地図へのリンク」をクリックすると、出没情報を落とし込んだ地図が表示される仕組みだ。
地図上のマークをクリックすると、日時と場所、内容を確認できる。
赤いヒグマのマークは、「ヒグマを目撃(親子)」だ。母グマは子グマを守るために攻撃してくることがある。
今年3月末には札幌市西区の住宅街に近い山中で、冬眠の巣穴調査をしていた男性2人が母グマに襲われた被害もあった。
黒いヒグマのマークは「ヒグマを目撃」、足跡のマークは「足跡、フンなどの確認」。そして、はてなマークは「ヒグマらしき動物を目撃」だ。
この「ヒグマらしき動物を目撃」の情報が最近は増えているといい、札幌市環境共生担当課はこう分析している。
「昨年4人が相次いで襲われたり、市街地近くの山に巣穴があったりと、市民に不安が広がっています。そのため、ヒグマ『のような』といった通報が増えていると考えられます」
市は公式LINEでもヒグマの出没情報を通知している。
YouTubeには
一方、ヒグマと出遭わないためには、音を出して行動することも重要だ。
一般的にヒグマは人を避けると言われている。鈴の音を鳴らしたり、声を出したりすることで、人の存在をアピールできる。
実際にヒグマが人の存在を察知してその場を立ち去る様子が、札幌市のYouTube公式チャンネルに公開されている。
1頭のヒグマが落ち着かない様子で周囲をキョロキョロと見渡している。しばらくすると、その場を立ち去っていった。「7分後」と場面が切り替わると、「クマよけの鈴」をつけた通行人が現れた。
ヒグマが鈴の音を察知してその場から立ち去ったことがうかがえる。もし、鈴をつけていなければ、ヒグマと出くわしていたかもしれないーー。
ヒグマに遭遇したら……
では、万が一、ヒグマに遭遇した場合、人間はどのような行動をとればいいのか。
札幌市は、「慌てず、騒がず、落ち着いて、状況を判断してから行動してください」と呼びかけている。
具体的には次の3点が重要だ。
- 走って逃げない
- 子グマを見つけたら引き返す
- クマ撃退スプレーを使用する
ヒグマは人間が背中を向けて走って逃げると、本能的に追いかけてくる。
大声を出したり、石を投げたりすることも興奮させてしまうため危険で、ヒグマを見ながらゆっくりと後ずさりをして、その場から立ち去らなければならない。
また、子グマがいると、母グマがいる可能性が高い。子グマに近づくと、母グマが子グマを守ろうと攻撃してくるという。
そして、本当に襲われそうになった時はクマ撃退スプレーを使用する。
唐辛子成分入りのスプレーを噴射することで、ヒグマの攻撃から身を守ることができるが、噴射距離は5メートルほど。すぐに使えるように腰などに装着しておく必要がある。
札幌市環境共生担当課の担当者は次のように語った。
「実際に住宅街や市街地近くでヒグマの被害があるので、出没情報のチェックなどを十分に行ってほしいです。『ヒグマに出遭わないこと』が一番の対策ということを理解して行動していただけたらと思います」