ウクライナ侵略を巡り、駐日ロシア大使館がTwitterに「ドイツとポーランドの生物兵器をめぐる活動」と投稿したことに対し、“名指し”された2国が強く反発している。
それぞれロシア大使館の投稿を引用し、ドイツ大使館は「DISINFORMATION(虚偽情報)」、ポーランド大使館は「FAKE NEWS(フェイクニュース)」と、同じくTwitter上で否定した。
ロシア大使館の投稿はこれまで様々なメディアがファクトチェックし、誤情報や偽情報と判定されている経緯がある。
黙って見過ごすわけにはいかない
ロシア大使館の投稿があったのは、5月12日午前9時前。資料が添付され、このような文脈がつづられていた。
「ロシア国防省:ウクライナと関係あるドイツとポーランドの生物兵器をめぐる活動に関する(資料)」
「ドイツ側の研究所はドイツ連邦国防省に従属している。例えば、『連邦軍微生物学研究所』『ロベルト・コッホ研究所』等」
添付資料には「ドイツのバイオセキュリティープログラム」「25地域の健康な個人から約3500の血清サンプルが集められている」などと書かれてあった。
これに気づいたポーランド大使館は同日午後4時前、Twitter上でロシアを「ならず者国家」として強く非難した。
「駐日ロシア連邦大使館はポーランドとドイツが協力して生物兵器を開発しているという情報を拡散していますが、これはデマです」
「両国ともそのような活動には関与していません。ロシアは、ウクライナでの犯罪行為から世界の関心を逸らそうとしているならず者国家です」
また、同日午後11時過ぎには、ポーランド外務省の「虚偽を広めている間、ロシアは不法にウクライナの領土を犯している」と書かれた投稿をリツイートしている。
ドイツ大使館も午後6時過ぎ、ロシア大使館の発信内容を否定するツイートを出した。
「これはまさに偽情報です!ウクライナ関連でドイツとポーランドが協力して生物兵器を開発しているという事実はありません」
「ロシアが偽情報を流し続けるのを私たちは黙って見過ごすわけにはいきません」
13日午後1時現在、ポーランド大使館の投稿には4300いいね、ドイツ大使館の投稿には1.5万いいねがついている。
リプライ欄も大半が「ほとんどの人がここ(ロシア大使館)のtweetは信じてない」「ちゃんと否定するのは大事」などとロシア側に否定的だった。
逆に、ロシア大使館のツイートのリプライ欄には、「通常兵器が枯渇してきて核、生物兵器を使用したい意図が透けて見える」「そろそろ生物兵器を使う気か」と心配する書き込みもみられた。
米国大使は皮肉も
ロシア側のSNS発信からは、これまでも誤情報や偽情報が指摘されている。
最近では、「ウクライナは自国民に対するジェノサイドを続けている」という文言を添えてロシア大使館が投稿した写真が、ウクライナではなくイラクでの米兵の写真だったことを、BuzzFeed Newsがファクトチェックして指摘した。
その後、ロシア側は投稿を削除。BuzzFeed Newsの直接取材には応じない一方、報道を「意図的に歪曲」と批判する声明を公式Facebookにアップした。
ロシア大使館はまた、ポーランドとドイツに関する投稿をした12日に、「ペンタゴン(アメリカ国防総省)がウクライナ・ハリコフの『第1精神病院』で人体実験を行った」ともツイートした。
これに対し、朝日新聞の国末憲人・ヨーロッパ総局長が「2月にここに行ったぞ。単なる田舎の精神科病院だったけど」「病院の敷地を訪ねた時、警備もいないし機密保持感ゼロ」と発信した。
国末記者は開戦直前の2月10日、ロシアとの国境地帯の病院周辺を訪れ、記事にしている。
アメリカ大使館は、精神病院を巡るツイートには13日正午現在、反応していない。
しかし以前は、ロシア大使館のツイートにラーム・エマニュエル駐日米国大使が反論し、Twitter上で日本語で「口論」することもあった。
ロシア側が「ウクライナ政府が自国内でロシア系住民を虐殺し続け、アメリカとNATO(北大西洋条約機構)はそれを黙認している」といった内容を投稿。
これに対し、エマニュエル大使は「きっと制裁で予算が厳しくなり、ケーブルテレビを解約せざるを得なかったのでしょう」と、「ロシア側のメディアを見ても事実はわからない」といった皮肉を飛ばした。