赤ちゃんを柔らかいタオルの上に寝かせたり、厚手の布を「ミノムシ」のように体に巻きつけたりする動画が拡散している。
Twitterでは「最高」「次の機会に実践」といった声も上がっているが、赤ちゃんを柔らかい物の上に寝かせると、窒息事故につながる危険性がある。
具体的に危険なポイントは何か。どのように寝かせればいいのか。国の資料をもとにまとめた。
「1年前に知りたかった」ツイートが大きく拡散
拡散している動画は、“コの字”に丸めた掛け布団や、柔らかいタオルの上などに赤ちゃんを寝かせるもの。
柔らかいタオルの上にうつ伏せで寝かせたり、厚手の布を体に巻きつけたりするシーンもある。
インドネシアの子供服販売業がTikTokで発信した動画とみられるが、あるアカウントが動画を引用して「1年半前に知りたかった」とツイートすると、瞬く間に拡散した。
14日正午現在、このツイートは925万インプレッション、1.9万リツイート、11.4万いいねと広まっており、「タオルでなんでも作れちゃう」「かわいい」「すごい裏技」と好意的なリプライも集まっている。
窒息事故を引き起こした事故事例
しかし、寝ている赤ちゃんの近くに柔らかいタオルやクッションを置いたり、柔らかい物の上にうつ伏せで寝かしたりすると、窒息事故を起こす危険性がある。
消費者庁によると、厚労省の「人口動態調査」の5年分(2016〜20年)を分析したところ、0歳児の「不慮の事故」は350件だった。
そのうち、死因は「窒息」が271件と77%を占めており、原因は「ベッド内」が118件と最も多かった。
消費者庁に報告があった具体的な事故内容としては、
・子どもを仰向けで寝かせ、大人用のタオルケットを体にかけた。30分後に様子を見にいくと、柔らかい枕の上でうつ伏せになり、タオルケットが首に巻き付いていた。(0歳7か月、意識障害で入院)
・低反発マットに子どもを寝かせて目を30分ほど話していたら、初めて寝返りをしたため、顔がマットに埋もれていた。心臓マッサージで息を吹き返した。(0歳5か月、窒息)
といったものだ。
マットレスなどは固めのもので
厚生労働省は、「ふかふかした柔らかい敷布団やマットレス、枕は、うつ伏せになった場合に顔が埋もれてしまい、鼻や口が塞がれて窒息する」と危険性を指摘している。
敷布団やマットレス、枕は、赤ちゃん用の固めのものを使い、掛け布団は自力で払いのけられる軽いものを使わなければならい。
また、できるだけベビーベッドに寝かせることを推奨しており、その際は「動かないだろう」と油断せず、転落しないように柵を上げたり、隙間をなくしたりする必要がある。
このほか、赤ちゃんは寝ている間も寝返りをしたり、ずり上がったりするため、近くに枕やタオル、衣服、よだれかけ、ぬいぐるみなどを置くことは危険だ。
首に巻き付いてしまう可能性がある“ひも”のようなものも同様という。
SIDSを発症させる危険性も
動画のように、うつ伏せで乳幼児を寝かせてしまうと、何の予兆や持病もないのに死に至る「乳幼児突然死亡症候群(SIDS)」を発症させる可能性が高くなる。
厚労省によると、乳幼児のSIDSによる死者数は、1996〜2014年が538〜125人。以降は16年(109人)を除いて60〜90人台で推移し、21年は81人だった。
SIDSは、うつ伏せ、仰向けのどちらでも発症するが、寝かせる時にうつ伏せに寝かせた時の方がSIDSの発症率が高いということがわかっている。
つまり、動画のようにうつ伏せで、しかも柔らかいタオルの上に寝かせることは危険ということだ。
同省は「医学上の理由でうつ伏せで寝ることを勧められている場合以外は、仰向けで寝かせてほしい。睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも有効だ」としている。