痴漢は深刻な問題です。
被害者は声をあげて抵抗しづらく、被害に気づいた周囲も勇気を出して手を差し伸べづらいという現実があります。
そんな中、声を出さなくても助けを求められる警視庁の防犯アプリ「Digi Police(デジポリス)」が、痴漢の現行犯逮捕につながった例が出たことから、改めて注目を集めています。
BuzzFeed Newsの取材に、警視庁が応じました。
被害者の4割が「相談していない」
痴漢被害はどれくらい拡がっているのでしょうか。
東京都台東区の岩倉高校は今年1月、同校の1、2年生を対象に、痴漢被害に関するアンケート調査を行いました。
同校はJR上野駅のそばにあり、電車で通学する学生がほとんど。痴漢被害を訴える生徒が毎年いるため、実態調査に乗り出しました。
その結果、「痴漢被害に遭ったことがある」と回答したのは、
女子生徒が、27%(181人中48人)
男子生徒が、3%(591人中17人)
でした。
女子生徒は4人に1人が「痴漢被害に遭ったことがある」という結果になったほか、男子生徒も痴漢に苦しんでいる現状が浮かび上がりました。
また、被害後に相談した相手(複数回答)については、「相談していない」が40%に上りました。
同校によると、生徒らは「恥ずかしさから相談できない」や「体が固まってしまい、声を上げられない」と理由を説明したといいます。
同校はこの調査結果を踏まえ、生徒同士で痴漢被害の実態や対策を話し合う機会をつくり、注意喚起しました。
痴漢被害の少女を救ったアプリとは
「警察白書」(2021年)によると、2020年の痴漢行為の検挙数(電車以外も含む)は1915件。電車内での強制わいせつの認知件数は143件でした。
一方、恐怖や恥ずかしさなどから泣き寝入りする被害者も一定数おり、認知されている被害は「氷山の一角」だとみられています。
そんな中の4月15日、電車で痴漢の被害に遭った少女が、警視庁の防犯アプリ「デジポリス」を使って周囲に助けを求め、現行犯逮捕につながったことに注目が集まっています。
デジポリスは2016年3月に配信が始まったアプリ。画面を押せば音が鳴る防犯ブザーも備えられており、総ダウンロード数は約50万件に達しています。
痴漢撃退機能の使い方は以下の通りです。
- デジポリスのアプリを起動し、下部の「痴漢撃退」を押す
- 画面に「痴漢です 助けてください」と表示される
- その画面を押すと、色が赤くなり、「やめてください」と音が流れる
音はマナーモードでも鳴る仕組みとなっています。
痴漢に気づいた人も
また、今年4月からは周囲の乗客が痴漢に気付いた場合にも対応できるようになりました。
「ちかんされていませんか?」と表示することができ、勇気を出して声をかけなくても、画面を見せることで被害の確認ができます。
警視庁の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に対し、「新機能」についてこう期待を示しています。
「電車内では被害者はもちろん、被害に気付いた周りの人も声を出しにくい。画面を見せるだけで、周りの人が行動するハードルが低くなれば」
デジポリスでは、痴漢撃退機能のほかにも、子どもへの声かけ事案やオレオレ詐欺、自転車の窃盗事件など「犯罪発生情報」のまとめなども見ることができます。
詳細やダウンロードは警視庁サイトから。