「親子3人乗り自転車」事故は氷山の一角。子どもの命を守る6つのポイント

    街中で見かける「3人乗り自転車」。子育てに必要な乗り物ではありますが、運転するには細心の注意を払う必要があります。安全に利用するにはどうすればいいのか、専門家に聞きました。

    大阪府東大阪市で4月11日、親子3人が乗った自転車が転倒し、道路に投げ出された3歳の男の子がトラックにひかれ、死亡する事故があった。

    道路交通法では安全基準を満たした場合に限り、子ども2人を乗せる「3人乗り」を認めているが、過去にも同様の痛ましい事故が起きている。

    3人乗り自転車は、子どもの保育園への送り迎えや子連れでの買い物など、子育て世帯には欠かせない交通手段という面がある。

    BuzzFeed Newsは専門家に取材し、3人乗り自転車を安全に利用するポイントを尋ねた。

    まず経緯を振り返る


    NHKによると、事故が発生したのは4月11日午前9時ごろ。東大阪市善根寺町の国道で、3歳の男児を前に、5歳の男児を後ろに乗せていた母親の自転車が転倒した。

    そのはずみで3歳の子が道路に投げ出され、後ろからきたトラックにひかれて亡くなった。現場は片側1車線で、歩道やガードレールはなかったという。

    このような事故は、これまでも起きている。

    2013年2月、川崎市の市道で母親と娘2人が乗った自転車が転倒。後ろに座っていた5歳の女児が投げ出され、トラックにひかれて死亡した。

    横浜市でも2018年7月、1歳の男児を抱っこひもで前に抱えて走っていた母親の電動自転車が転倒し、男児は頭を強く打って死亡した。

    致死率2倍超

    「自転車は車と同じ『乗り物』。日常的に使うことで慣れが生まれますが、常に危険が潜んでることは忘れてはいけません」

    そう語るのは、「自転車の安全利用促進委員会」(東京)メンバーで、自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんだ。

    より安全に乗る方法について、以下の基本的な6ポイントを挙げてくれた。

    1. 両足は地面にペタッとくっつく程度にサドルを調整する
    2. 身長、体格に合った大きさの自転車に乗る
    3. 夫婦で自転車を共有する場合、身長の低い方にサドルやハンドルの位置を合わして使う
    4. 「徐行」で走る意識をもつ
    5. 大人も子どもも、みんな必ずヘルメットをつける
    6. 子どもにベルトなどを装着する


    特にヘルメットは重要だ。

    警察庁によると、2017〜2021年の間、自転車に乗っていて亡くなったのは、計2145人。その6割近い1237人は、頭部のけがが致命傷となり亡くなっていた。

    ヘルメット着用の場合の致死率は0・26%だったのに対し、非着用は0・59%と、2倍超だ。

    「急いでいると『めんどくさい』と基本対策を怠ることが多いですが、その一手間で事故に遭うかどうか、事故にあった際に助かるかどうかが決まることを想像してほしいです」

    遠藤さんは3人乗り自転車の特徴についても触れた。

    「自転車に子ども2人を乗せると、自転車をこぐ大人と子どもたちの体重に車体の重さを合わせれば、100キロを超えます」

    「重いと、乗り降りや止まる時などにバランスを崩してしまうことが多くなります」

    「電動アシストの最大時速は24キロ。重さ100キロの自転車がこの速度で衝突した時の衝撃は、計りしれないほど大きいのです」

    転倒した際に大人が子どもの上に倒れてしまい、大けがをさせてしまうこともあるという。


    昔は原則禁止

    3人乗り自転車はかつて、原則としては禁止されていた。

    しかし、子育て世代から「それなしでは生活できない」という強い要望が出たことで、利用が認められた経緯がある。

    2008年3月4日付の朝日新聞などによると、警察庁は2007年、3人乗り自転車の禁止を交通規則に改めて明記しようとした。

    しかし、子育て中の世帯から「2人いる子どもをどうやって保育園に送り迎えしろというのか」などと強い反発が上がった。

    これを受け、警察庁は方針を転換。ブレーキの性能やフレームの強度などが満たされた場合に限り、2009年から認めるようにした。

    遠藤さんは「3人乗り自転車は、子育てには必要」としたうえで、こう語った。

    「一度気持ちが緩んでしまうと、そのまま危ない運転を続けてしまう。事故は氷山の一角なので、『きちんと走る』ことをもう一度意識してほしい」

    警視庁のホームページによると、3人乗り自転車を利用するには、運転者が16歳以上で、強度や性能など一定の安全基準を満たしたものでなければならない。

    他に2人の子どもを乗せている場合は、「抱っこひも」で子どもを背負って運転することはできない。幼児用座席には体重の上限もあり、前は15キロ、後ろは22キロとなっている。

    また、乗せてよいのは「小学校就学前」の子どもまでとなっている。

    (表現を一部、更新しました)