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【フロリダ銃乱射】ゲイタウン新宿二丁目の静かな夜 人種・性差を超えた追悼

「私がそこにいてもおかしくなかった」

米フロリダ州オーランドのゲイクラブで起きた、アメリカ史上最悪の銃乱射事件。49人の犠牲者を追悼し、負傷者の回復を願うため、SNSでつながった約150人が6月14日夜、日本最大のゲイタウン新宿二丁目に集った。

夜の公園に集った人たち

新宿二丁目。繁華街から少し外れたところにある花園西公園。ジャングルジムと滑り台、ブランコがぽつぽつと置いてある、小さな公園だ。

午後8時。その静かな公園に、人種も年齢もセクシュアリティも、多種多様な人たち、およそ100人が集った。

大きな白い紙が地面に敷かれている。「日本語は何て書く?」「東京はひとつオーランドと共に、にしようか」。英語、日本語が混じりあう会話が交わされている。

キャンドルが配られた。灯った火を、それぞれが隣の人のキャンドルにも移していく。

公園の中央に、事件で亡くなった人たちの顔写真が並べられる。その周りを参加者がぐるっととり囲む。

犠牲者の名前が読み上げられていく。

胸に手を当てて、目を瞑る人。伏し目がちに写真を見つめる人……。それぞれが静かに思いを馳せる。

集会を呼びかけたアナ・ラライアさん(25)とソナール・マルカンさん(29)が話す。マイクを使うわけでもなく、大声を出すわけでもない。集まった人たちはじっと、その言葉に耳を傾けた。

交差点に佇む人たち

同じころ、公園から徒歩数分のところにある、仲通り交差点では、また別の呼びかけで集まった人たちがプラカードを掲げていた。

「PRAY FOR ORLANDO(オーランドのために祈る)」「NO HATE」。イスラム教徒への差別反対を訴えるものもあった。

交差点は、数多くの飲食店が軒を連ねる繁華街のまっただ中。その一角、LGBT運動を象徴するレインボーの旗を背にして、約40人が一言も発せずに佇んでいる。

なにか喋ったりしないんですか? 集まりを呼びかけた都内の会社員ゆうすけさん(42)にそう尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「スピーチも考えていたけど、今回の事件は複雑で、なんて言っていいかわからなくなったんです。言いたいこと、追悼の気持ちは、人それぞれ違うだろうし……」

通りかかった人たちの多くが足を止める。徐々に、人数が増えていく。

合流

その交差点に、公園で集会をしていたグループが横断幕を手に歩いてきた。公民権運動の象徴となった歌「We Shall Overcome」を、大きくはない声で、しかし誇り高く歌いながら通過する。

交差点に立っていたグループも、行列の最後尾に付いていく。

「自分らしくあることを、誰も止めることはできません」

合流した2グループは花園西公園に戻って、スピーチを始めた。

よく通る声で、ハッキリと権利を主張する人がいる。

「私たちが自分らしくあることを、誰も止めることはできません……」

一方で、涙ぐみ、震えた声を絞り出しながら話す人もいた。

「私たちの仲間が殺されてしまうことに、とてもとても悲しみを抱いています……」

聴衆はじっと聞いている。スピーチが終わると、指をぱちっとならす。拍手の代わり。騒がしくなりすぎないための工夫だ。

「憎しみや暴力からは何も生まれません」

参加者に聞いた。

横浜から来たそうさん(38)は、ゲイのナイトクラブで銃乱射事件が起きたと知ってショックを受けた。加害者がそのクラブの常連だったと聞いて、さらに複雑な気持ちになった。結局、事件についてどう受け止めるべきか、考えはまだまとまっていないという。

「でもこれだけの人が、どこからともなく集まった。いろんな人が気にしているんでしょうね」。自らを安心させるかのように、何度かうなづいた。

国内最大級のLGBTイベント「東京レインボープライド2016」の共同代表を務めた、山縣真矢さんの姿もあった。

「こんなとき、セクシュアリティや人種、国、宗教を超えてパッと集まれるのは、LGBTコミュニティの特徴ですね。憎しみや暴力からは何も生まれません。こんな事件は二度と起きてほしくない」

中野区議会議員の石坂わたるさんは、次のように話した。

「日本では近年、比較的明るいニュースが続いています。でもLGBTの権利侵害は、世界中で起きている。海外にも日本にも追い詰められている人がいることを忘れてはいけません」

「生きてるって感じた」

多様性と尊厳にみちた追悼集会は、22時すぎに幕を閉じた。

「恐怖のままではいられない。こういうときだからこそ連帯を」と集会を呼びかけたソナール・マルカンさん(29)は、BuzzFeedにこう語った。

「きのう呼びかけたばかりなのに、想像以上の方が集まってくださって、驚きました。生きてるって感じたという人もいたし、オーランド出身だけど日本にいるから何もできずに悩んでいたという人もいました。これから手を携えて、もう一歩、一緒に歩いていこう。みなさんのそんな思いを感じました」


バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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