ベストセラー新書「日本会議の研究」(扶桑社)に登場する男性が、名誉を傷つけられたとして、著者の菅野完さん個人に3000万円の損害賠償などを求めている裁判。1月26日、東京地裁で第2回口頭弁論があり、本格的な論争が始まった。
同書は、民間の保守派団体「日本会議」のルーツや歴史、彼らが展開してきた保守系の市民運動について取材、検証しているもの。
裁判の争点は、この男性が主題となっている同書第6章の6カ所が名誉毀損にあたるかどうか。
原告男性は、それらの記述で名誉が傷つけられたとして、(1)本の出版差し止め、(2)損害賠償3000万円と、(3)謝罪広告を求めている。
一方、著者・菅野さん側は名誉毀損には当たらないと主張。この日は、同書に公共性・公益性があり、この本の記述によって原告男性の社会的評価は低下していない——などと反論した。
次回弁論では、記述の真実性や真実相当性が主な論点となる。
原告男性はこの裁判とは別に、出版社の扶桑社に対して出版差し止めの仮処分を申し立てており、東京地裁(関述之裁判長)は1月6日、1カ所の記述について「真実でない部分がある」として仮処分を認めた。削除命令が出たのは、宗教団体の活動の中で自殺者が出たが、宗教団体の幹部だった男性がそれについて「馬耳東風であった」とする記載だった。現在「日本会議の研究」は、この部分に修正が入ったバージョンが販売されている。
今回の裁判は、仮処分とは別の法廷で審議されている。そのため、名誉毀損にあたるかどうかの判断は一から議論されている。
原告代理人の弁護士は、仮処分とは別に著者個人を相手取った裁判を起こした理由について、「まず出版社に差し止めを求めたのは実際に本を出しているから。著者を訴えたのは今後、出版社を変えて出版されたら困るからだ」と、記者たちに語った。