出所不明・疑わしい「パナマ文書に載っている日本企業リスト」にご注意

    報道元のICIJは、まだリストを公開していない。

    「パナマ文書」によって、世界の指導者や著名人と、税率が極めて低いタックスヘイブン(租税回避地)の関係が続々と明らかになる中、インターネット上に「パナマ文書に載っている日本企業リスト」なるものが拡散した。だが、報道元はリストを公開しておらず、信ぴょう性は全く不明だ。

    パナマ文書に載ってた主な日本企業 バンダイ 大日本印刷 大和証券 ドリームインキュベータ ドワンゴ ファストリ ジャフコ JAL 石油資源開発 丸紅 三菱商事 商船三井 日本紙 双日 オリックス 日本郵船

    この報道の中心となり、パナマ文書を管理しているNPO国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、パナマ文書に含まれる21万の海外法人とその関係者の名前を「5月に」公開すると表明している。

    また、データそのものは「公共性のないプライベートなデータも含まれているため公表しない」という。

    ICIJには、日本の報道機関からも、共同通信と朝日新聞が参加している。日本の大企業についての情報があれば、この2社が報じる可能性が高い。

    実際に共同通信は、警備大手セコムの創業者が、英領バージン諸島などの複数の法人で、大量のセコム株を管理していることがわかったと報じている

    また、朝日新聞によると、パナマ文書には日本国内を住所とする約400の人や企業の情報が含まれている。その中に医者や実業家はいたが、政治家や公職者は見つからなかったという。

    だが両社とも、リストにある企業については、報じていない。

    「企業リスト」はどこから出てきた?

    それでは、噂となっている「企業リスト」は、一体どこから出てきたものなのか。

    このリストに掲載されているのは、ICIJが2013年に開設したサイト「オフショアリークス」にある企業の情報だという指摘がネット上ではでている。実際に「噂の企業名」を、オフショアリークスで検索すると、その多くがヒットする。

    オフショアリークスは、ICIJの調査で判明したタックスヘイブンに設立されている法人名や住所、その関係者の名前を記したデータベースで、10万以上の法人、ファンドなどが含まれている。

    パナマ文書に掲載されている企業・個人名も今後、このオフショアリークスに追加される予定だが、現時点ではまだ反映されていない

    文書に載った意味は?

    仮にパナマ文書やオフショアリークスを調べていて、特定の企業名を発見したとして、そのことをどう受け止めるべきなのだろうか。

    注意しなければならないのは、パナマ文書やオフショアリークスに名前が掲載されているからといって、それだけで即座に問題があるケースだとは断定できないことだ。

    ICIJも特設ページに設けたFAQの中で、「パナマ文書を読み解くのは難しい」「公共性のある情報を見つけるために、メディアパートナーの多大な貢献が必要だった」などと説明している。

    また、ICIJは「パナマ文書に登場するすべての人が、税金逃れや脱税をしていると考えるべきですか?」という質問に対して、次のように答えている。

    「いいえ。タックスヘイブンでの法人設立には正当な理由もありますし、多くの人は税務当局に要求された場合、それらを申告します」

    ICIJには、世界65カ国から200人近いジャーナリストが参加している。一連の調査報道は今後も続くもよう。タックスヘイブン問題に対処するためには各国の協力が不可欠で、今後、日本でもデータに基づいた議論を始める必要があるだろう。