LGBTの存在「まだ想定外」 電話相談は年間38万件。3人に1人が「死にたい」

    少しでも早く、「当たり前の存在」へ。

    東京都渋谷区・世田谷区が「同性パートナーシップ」制度を導入したことを皮切りに、LGBTなど性的マイノリティが抱える問題への対応について、議論が活発になってきている。

    だが、そうした自治体でも、まだ取り組みは始まったばかりだ。

    書籍『「LGBT」差別禁止の法制度って何だろう 地方自治体から始まる先進的取り組み』(かもがわ出版)の出版記念として9月19日、都内で開かれたトークイベント(LGBT法連合会など主催)で、その現状が報告された。

    スピーカーの一人で、電話相談「よりそいホットライン」(0120-279-338)を運営する社会的包括サポートセンターの熊坂義裕・代表理事は、次のように話す。

    「日本では5世帯に1人、性的マイノリティの方がいる計算になる。ところが自治体や会社、社会も、そういう想定をしていない。性的マイノリティの存在を、当たり前に思うような日本にしていかなければならない」

    ホットラインにかかってくる相談

    社会的包括サポートセンターの「よりそいホットライン」は、24時間無料で電話相談を受け付けている。熊坂さんによると、コール数は年間1100万回以上。性的マイノリティ専用回線には38万回がかかってきて、10本に1本が相談につながる。

    性的マイノリティ専用回線は、全体と比べて若い人からの相談が多く、10代〜20代が約3分の1をしめるという。

    悩みの多くは人間関係。恋愛・結婚や偏見・差別・周囲の無理解、友人・知人関係などだ。相談者の3人に1人が「死にたい気持ち」を示しているという。

    相談内容は、次のようなものだ。

    • 性別に違和感がある。このままの自分で働ける自信がない。
    • 性別に違和感があるが、仕事・お金がないので手術が受けられず、性別変更できない。
    • 同性の同級生に告白したら、それを言いふらされ、クラス中から避けられるようになった。

    困難、3つの特徴

    ホットラインの運営委員を務める原ミナ汰さんによると、これらのLGBTが直面する困りごとには、3つの特徴があるという。

    (1)困難が見えにくく、潜伏してしまう。(2)社会のあちこちにある「性別規範」と密接にかかわっている。(3)地域で周囲の人に頼れない。

    性別規範とは何か。原さんの分析はこうだ。

    同性カップルに対する忌避感や差別は根強くある。「男はこうすべきだ、女はこうすべきだ」といった意識を持つ人が、家庭や地域、学校、職場にいて「男女の境界線を「警備」している。

    たとえば、同性カップルが一緒に暮らしていたり、手をつないで歩いていると、「あの2人はなんだ?」と見とがめる。たとえば、部屋を借りにきた同性カップルに「ご関係は?」と聞き、拒否してしまう。

    LGBTの選手数、過去最多だったリオ五輪

    だが、世界を見渡すと、施設のユニバーサル化や災害時、証明書類の性別配慮など「多様性への合理的な配慮」が求められるようになってきている。

    原さんは、リオ・オリンピックでは史上最多、50人以上の選手が性的マイノリティ(LGBT)だと表明していたことを指摘し、次のように話していた。

    「東京オリンピックでは、もっと数が増えるでしょう。ここは世界の注目が集まるポイントです。しっかりやっていかないと」