「痴漢は俺の敵」バッジ制作 男性が語る痴漢抑止への思い

    なぜ「男性向けバッジ」を作ったのか?

    「痴漢は俺の敵」——。そんな強烈なメッセージを込めたバッジが話題を呼んでいる。バッジを作ったのは、都内の会社員男性そんきょばさん(30)。痴漢被害に苦しんだ女子高生が考案した「痴漢抑止バッジプロジェクト」に触発され、「男性向けも作ろう」と制作したという。どんな思いを込めたのか。話を聞いた。

    男性がバッジをつける意味は?

    ——バッジを作ったきっかけは?

    「女性向けの痴漢抑止バッジプロジェクトを知った時に、痴漢を減らすための取組みに、男性が登場しない事にふと気がついたんです」

    「女性の痴漢被害の経験談を見聞きしながら、『女性が自衛すればいいだけの問題じゃないのでは?』『男性にも何かできないか?』と感じました」

    「それで『男性用のも作りませんか』とTwitterでつぶやいたら、リアクションが非常に好意的で、仲の良いフォロワーさんからも『言ったからにはお前が作れよ、作ったら買うから』って言われました」

    「これは有言実行するしかないな、と動き始めました。デザインはイラストレーターの妻に構想を伝えて、手伝ってもらいました」

    「強烈なインパクトを与えたかった」

    ——どうして「痴漢は俺の敵」という言葉を選んだのですか。

    「それは、痴漢を踏みとどまってもらうためです。バッジを見た人に強烈なインパクトを与えるため、あえて激しい言葉やデザインを選びました」

    「駅には『痴漢は犯罪です』というポスターが貼ってあります。もうみんな見慣れていますよね。でも、それでも痴漢をする人はいる。それは社会の空気が、まだ『痴漢の存在』を許容しているからではないでしょうか」

    「痴漢の話題になると必ず、女性が自衛すべきだという声が上がりますが、そういった意識の表れだと思います。被害者の女性や警察だけじゃなくて、電車に乗っている人たち『みんなが痴漢を許さない』という社会にしていくべきでしょう」

    「痴漢は他人事じゃない」

    ——バッジのことがネットで広まりましたが、周囲の反応は?

    「全体としては、とても好意的でした。特に女性からは『ついに、男性側からこういう取組みが出てきてくれた!』と猛烈に歓迎されました。やっぱり、あまりいなかったんでしょうね」

    「私も今回まで痴漢問題に本腰を入れて取り組む機会は無く、実質的に放置してきたわけで、あまり胸を張れる立場じゃありません」

    ——男性からは?

    「男性からも想定以上に好意的な意見が多いです」

    「中には、えん罪をとても気にする声もありますが、その方々には安心してもらいたいですね。本家の女性用も含めて、バッジの目的は『痴漢を踏みとどまらせること』で、逮捕ではありませんので」

    「実際、痴漢は男性にとっても他人事なんかじゃありません。男性が被害者になることだってありますし、自分の好きな人や家族が被害に遭うかもしれない。そういった意味でも、男性が痴漢抑止に反対する理由なんて無いと思います。そもそも犯罪ですしね」

    「えん罪を恐れる善良な男性達だって、痴漢の被害者です。自分が痴漢するわけでもないのにビクビクさせられて、人混みに紛れる痴漢に隠れ蓑として利用されているわけです。そういう人にも、ぜひ一緒に立ち上がっていただきたいですね」


    男性向け痴漢抑止バッジは、電車に乗るときだけ使えるように、簡単につけたりはずしたりできるクリップ式にした。直径57ミリ、44ミリ、38ミリの3種類を作り、3月12日に都内でイベントを開いて販売する。価格は数百円を予定。

    そんきょばさんは、痴漢抑止への思いや痴漢被害の体験談など「男性からの声」をクラウドワークスで募集している。