覚せい剤を使用したとして逮捕されたASKAさんが12月19日、不起訴になり、釈放された。ASKAさんは逮捕時、尿検査で陽性だったと報じられていた。だが、共同通信によると、覚醒剤成分が検出された液体について、ASKAさんはお茶だと供述。警視庁は、その液体がASKAさんの尿だと立証できなかったという。
薬物事件に詳しく、ソーシャルワーカーとしても活動している平林剛弁護士は、ASKAさんの逮捕時、BuzzFeed Newsに次のように語っていた。
「前提として、『逮捕=有罪』ではありません。本人が認めているならともかく『100%ない』とブログで言っている以上、慎重に判断する必要があります。たとえ結果が陽性だとしても、尿検査のミスや不正などの可能性も残るからです」
ASKAさんの不起訴を受けて、平林弁護士に改めて話を聞いた。
——平林さんは、不起訴を見通していたのですか?
いいえ。そうではありません。その話をしたのは、ASKAさんの有罪を前提とする報道が多かったので、冷静さを取り戻して欲しいと考えたからです。
逮捕は、「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があって、証拠隠滅などを防ぐために、あくまで暫定的に身柄を拘束する制度ですから。
——今回、2度目の逮捕から不起訴までの流れで、専門家として気になった点があれば、教えてください。
一連の報道を見ていると、ASKAさん本人にどうなってほしいのかわからない報じ方・・・むしろ、ASKAさんを再犯に追いやりたいのではないか、とさえ感じるものがありました。
——どういうことですか?
薬物依存症患者の多くは、自分の生きづらさや、人生の中で受け止めきれないことをごまかすために薬物を使います。こうした考え方を「自己治療仮説」と呼びます。
そのような状態から立ち直ろうとしている人たちにとって、何よりも効果的なのが、家族や一緒に薬物から抜け出そうとする仲間など、周囲のサポートです。
ところが、11月の逮捕後の報道は、ASKAさんのサポートをしている妻との、プライベートな夫婦関係にも踏み込むようなものなど、ASKAさんを逆に孤立させてしまいかねないものが数多くありました。
報道内容は、真実なのかも知れません。しかし、ひとつ覚えておいてほしいのが、本人が孤立してしまえば、再犯の可能性は飛躍的に高まるということです。
精神的に追い詰めてはいないか?
私がいま一番気になるのは、ASKAさんの今後です。
ASKAさんが、今回の逮捕前に薬物を使っていたのかどうかは、部外者である私たちにはわかりません。
もしASKAさんが、本人の話しているとおり薬物を絶っていたとしたら、そのショックは計り知れません。報道のショックがきっかけで薬物に手を出す可能性すらあります。
また仮に、本当は薬物から抜け出せていなかったのだとしても、今回のように好奇の目にさらされたことは、ASKAさんの回復に悪影響しかありません。
そもそも今回の報道の多くに、ここまでのニュースバリューはあったのでしょうか。
我が国では、報道に限らず、「規制薬物を使った=人でなし」とばかりに、本人を精神的に追い詰め、結果として再犯に追いやるような風潮があるように感じます。
本当に社会が、本人の回復、そして、それを願い支える家族、支援者たちのためを思うなら、本人を精神的に追い詰めるのではなく、見守っていく必要があると思います。