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「野球賭博」はアウト、「円陣声出し」はセーフ ルールはどうなってる?

野球協約と報告書をひもとき、弁護士に聞いた。

試合の勝ち負けにお金をかける野球賭博問題。日本野球機構(NPB)は「野球賭博」に関わった選手を処分する一方、試合前の円陣声出しでお金をやりとりする行為は処分せず、再発防止にとどめた。判断の違いはどこから来るのか。

NPBは3月22日、巨人所属の高木京介投手に1年間の失格処分を下した。昨年11月にも、巨人の3選手が野球賭博をしていたとして、無期失格になった。

一方、処分がなかったのが、セパ両リーグ7球団で発覚した「円陣声出し」行為だ。この問題は産経新聞が最初に報じ、各社が一斉に追いかけた。

試合前の円陣に参加した選手と、その中心でかけ声を出した選手とが、試合結果に応じて1000円〜1万円程度をやりとりしていた。NPBは再発防止策として「野球に関する金銭授受を一切禁止する」旨の通達を出すのにとどめた。

野球賭博とは何か?

プロ野球選手が野球賭博に参加することは、プロ野球界のルール「野球協約」で禁じられている。わざと負ける「八百長」につながれば、プロ野球の土台が崩壊してしまうからだ。

野球協約は、野球賭博について(1)八百長に直結する場合、(2)八百長に直結はしないが将来的に八百長にいたる懸念のある場合との、2つに分けている。

(1)を禁止するのは177条。「所属球団が直接関与する試合について賭をすること」(177条1項6号)がダメだとされている。これをした選手は「永久失格」となり、2度とプロ野球に関われない。

(2)を禁止するのは180条。「所属球団が直接関与しない試合、または出場しない試合について賭けをすること」(180条1項2号)がダメとされているほか、野球賭博常習者との交際などが禁止されている。禁止行為をした場合の処分は「1年間、又は無期の失格」となる。

高木選手が「巨人の試合に賭けていた証拠」はなかった

NPBが3月22日に公開した報告書によると、高木選手は、2014年4月末〜5月上旬ごろ、当時チームメイトだった笠原将生選手を介して、野球賭博の常習者たちと野球賭博をした。

賭けの回数は3〜4回で、8〜9試合の勝敗に関してだった。ただし、所属球団(巨人)の試合に賭けていた証拠はなく、八百長の痕跡はなかったという。

つまり、所属球団が直接関与する試合について賭けをしていなかったため、高木選手は、(2)の180条違反とされたわけだ。

高木選手本人は「ほとんど全部の試合で負け、合計で80〜90万円の負けになったので、この賭けをやめた」と供述したという。

処分が軽かった理由は?

高木選手の処分である「1年間の失格」は、昨年、他の3選手が「無期の失格」にされたことに比べて軽かった。

それは、積極的に野球賭博をしていた他の3選手と比較すると、他者への勧誘、期間、回数、賭博常習者との交際など、「関与の程度について、相当な差異が明らかに認められる」ことや、真摯に反省していることなどを考慮した結果だとされている。

「円陣声出し」は野球賭博と違うのか?

それでは「円陣声出し」はどうか。

野球評論家の張本勲さんは3月20日、TBS系の情報番組「サンデーモーニング」で「野球賭博と一緒にしてもらいたくない」と発言した。

「こんなことはどこの世界でもやってますよ」「我々もよくやるじゃないですか。100円硬貨をポーンと上に投げて、裏か表か。それでラーメン賭けたりするじゃないですか」

NPBは「広い意味で(野球賭博事件の)背景の一つになっている」として禁止を通達したが、「野球協約には抵触しない」としている。「非予想型だから賭けには当たらない」というのがその理由の一つだ。

だが、スポーツ法務を扱う多田光毅弁護士は、次のように疑問を呈する。

「たしかに、円陣声出しは、従来から問題視されてきた野球賭博と比べて金額が少額ですし、外部の野球賭博常習者も関与していません」

「それにプロ野球選手が、数千円程度を支払うことを恐れて、あえて敗退につながる行為をするとは考えにくいでしょう」

「しかし、あくまで程度の問題にすぎません。仮に支払う金額が高額になった場合、選手が怠慢行為をする可能性も全くないとはいえないように思います」

賭博罪の可能性

そもそも円陣声出しは「厳密に解釈すると、刑法の『賭博罪』に当たるのではないか」と多田弁護士はいう。

「『非予想型だから』という主張は、賭博行為にならない理由としては弱いように思われます。自ら勝敗を予想したかどうかは、賭博罪の要件ではありません」

「賭博とは、当事者が自由に左右できない偶然の事情によって、賭けた財物を得るか失うかを争うことをいいます。『円陣声出し』は、野球の勝敗という偶然の事情によって賭け金を争うという点で、この要件に当てはまります」

「仮に賭けるのがその場で食べてしまう程度の物や、数百円程度のお金なら、形式的には賭博に当たるような行為でも、賭博罪にはならないとされています。しかし、集まる額が数万円に及ぶとなると、少額とは言えないでしょう」

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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