音楽教室がJASRACを提訴 裁判のポイントは「演奏権」

    6月20日、東京地裁への提訴を「音楽教育を守る会」が発表

    音楽教室の事業者団体「音楽教育を守る会」は6月20日、JASRACに対する訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。JASRACが音楽教室での演奏についても料金を徴収する方針を示したことに対して、JASRACにその権利がないことを確認するための訴訟としている。

    原告には音楽教室事業者249社が名を連ねている。

    この訴訟のポイントは、音楽教室で教師・生徒が演奏する場合に、著作権法の「演奏権」が及ぶかどうかだ。

    演奏権のルールは、次のとおり。

    「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ、または聞かせることを目的として、上演し、又は演奏する権利を専有する」(著作権法22条)

    このケースに当てはまるなら、演奏する権利は著作者が独占しているわけだから、演奏したい人は著作者に許可してもらわなくてはならない。

    著作権を管理する団体のJASRACとしては、音楽教室での演奏もこのケースに当てはまるので、「許可がほしいなら、料金を支払ってください」と言っているわけだ。

    音楽教育を守る会の主張

    一方、訴状などによると、「守る会」側は次のような理由を挙げて、著作権法22条に定められている「演奏権は及ばない」と主張している。

    1. 「公衆」に対する演奏ではない。

    個人レッスンや、教師1人:生徒3人〜5人のレッスンでの演奏が「公衆」に対する演奏とは考えられない。

    2. 音楽を教えるため、教わるための演奏は、「聞かせることを目的として」いない。

    音楽の著作物の価値は人に感動を与えるところにある。コンサート、ライブ、カラオケ等はまさにそうだ。

    一方、音楽教室での演奏は、曲の一部分について繰り返し行われることがほとんどで、音楽の芸術的価値を享受させるための演奏とはほど遠い。

    3. 「文化の発展に寄与する」という法律の目的にあう解釈をすべきだ。

    民間の音楽教室なくして、音楽文化は発展しない。著作権法の目的は「文化の発展に寄与する」こと。これに背を向けるような著作権法の解釈は許されない。

    教室側「音楽教育と、音楽文化の発展を守るための訴訟だ」

    「音楽教育を守る会」は2016年、JASRACが音楽教室での楽曲演奏について著作権料を徴収する方針を固めたことに対し、2017年2月に音楽教室の事業者たちが結成した。現在約340社が加盟している。

    会側はこれは単なるお金の問題ではなく、「日本の音楽教育および将来の音楽文化の発展を守るための訴訟」だと強調している。

    一方、JASRAC側はBuzzFeed Newsの取材に対し、「訴状が届いていないので、コメントは控えさせていただきます」と回答した。

    【関連記事】BuzzFeed Newsは6月16日、この問題について双方に主張を聞いたインタビュー記事を掲載している。

    (※サムネイル=Mixetto / Getty Images / 時事通信)