
性犯罪の内容を抜本的に変更する改正刑法が6月16日、参院本会議で可決、成立した。強姦罪の定義を変え、女性以外も対象とする「強制性交等罪」に改めることや、法定刑の下限を3年から5年に引き上げることなどが柱。
これまでの強姦罪は被害者が「女性」に限定されていた。今回の改正で、女性以外も「強姦の被害者」に含まれることになった。
大改正に伴い、附帯決議では、9つの点への配慮が盛り込まれた。そのうちのひとつがこれだ。
《強制性交等罪が被害者の性別を問わないものとなったことをふまえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において、被害者となり得る男性や性的マイノリティに対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを、関係機関等に対する研修等を通じて徹底させるよう努めること。》
「性的マイノリティへの差別禁止が明示された」
2014年から法務省のヒアリングに協力し、性的マイノリティへの配慮を訴え続けてきた青森県の団体「レイプクライシス・ネットワーク」代表の岡田実穂さんはBuzzFeed Newsの取材に対し、次のようにコメントした。
「附帯決議ではあるけれども、性的マイノリティについて、偏見に基づく不当な取り扱いをしないということが明示されました。暴力被害に関する文脈で実質上の差別禁止項目が附帯であれ入ったこと、これこそが、プライド月間(※6月はアメリカのLGBTプライド月間)の私のハイライトです」
まだまだ残る課題
大きな改正ではあるが、「性犯罪被害者の置かれた現状が、これで解決するわけではない」と、岡田さんは言う。
「今回の改正は、もちろんよかったと思います。改正で、膣だけではなく、口でも、肛門でも強制性交等罪は成立するようになりました。親告罪も撤廃され、最低量刑は5年になりました」
「しかし、私たちの要望が十分に盛り込まれているとは言えません。たとえば、手指や器具の挿入も同じように被害者を傷つけますから、強姦罪の対象に含めるべきだと私たちは考えています。しかし、今回は陰茎による被害しか認められませんでした」
「レイプは暴力だ」
「また、レイプは“性交”ではなくただの暴力です。にも拘らず、まるでレイプは性交の延長線上にあるものとするような強制性交等罪という名称にも反対をしてきました」
「改正に関する審議時間はあまりに短く、議論が尽くされたとは言えません。現実問題として、性犯罪の被害者、特に男性・性的マイノリティなど社会から性暴力の被害者として認識されづらい人たちは、本当に沢山の偏見に基づく酷い扱いをされています」
改正法の附則には、施行後3年をめどとして、性犯罪被害の実情や改正後の状況をふまえ、実態に即した対処をするための検討をして、必要な措置を講じる、と盛り込まれた。
岡田さんはこう、決意していた。
「今回の法改正が、少しでも、少しでも進んでいくきっかけになってくれたらと願っています。そのために活動を続け、また、サバイバーとして、サバイバーと共にあることを諦めないでいこうと思っています」