世田谷区小6男子・組体操事故 3年後も後遺症 「息子はきのうも倒れた」

    世田谷区が提案した「話し合い」両親は応じる意向

    当時小学6年生だった次男(14歳)が、組体操の練習中の事故で重い後遺症が出たとして、両親が世田谷区と担当教諭を訴えた裁判。4月25日、東京地裁で開かれた第1回口頭弁論後に、父・定松佳輝さんと母・啓子さんが記者会見し、区が提案した「話し合い」に応じる意向を示した。

    世田谷区が法的責任については争いつつも話し合う姿勢を示したことについて父・佳輝さんは「息子の生活を考えると、できるだけ、お互いの決着できるところを早く見付けて、解決したいという気持ちです」と述べた。

    どんな状況だったのか?

    事故は2014年4月14日午前11時15分ごろ、世田谷区立小学校の体育館で、授業中に起きた。

    両親によると、次男は5月の運動会に向けて、組体操の「倒立」を2人組で練習していた際に、頭と背中を床に打ち付けた。事故後、視覚異常や頭痛、ふらつきなどが出て、一人では歩けないような状態になり、1年ほどは車いす生活だった。事故の4カ月後に「脳脊髄液減少症」と診断されたという。

    現在の症状について、母・啓子さんは次のように話す。

    「中2までは、学校に通えても毎日4時間が限度で、給食で帰ってくるとぐったりしていました。体育も参加できない内容が多く、行事への参加も限られていました。頭痛・腰痛などの症状に悩まされながら学校に通っていました。中3からは受験を意識して、学校内で休憩させてもらいながら、なんとか6時間目まで学校にいようとしています。しかし、昨日は授業中に疲れで倒れ、保健室に運ばれたので、私が迎えにいきました」

    そして事故については、次のようにコメントした。

    「学校で生活していれば、何かしらのケガをするのは仕方ないと思っていました。大切なのは、事故が起きないように十分に安全配慮をすること。それでも事故が起きた場合は、初動対応とその後の正しい報告、子ども・家族へのフォローが必要だと、強く感じました。組体操を廃止にしてほしいと思ったことはありません。安全にできる組体操もあると思うからです」

    今回の事故は、学校や教育委員会との話し合いが決裂し、裁判に至った経緯がある。ここに至って区側が提案した「話し合い」について、次男はどう受け止めているのか。

    父・佳輝さんは次のように話す。

    「息子は最初、『和解は嫌だ』という反応でした。もう3年も不自由な思いで生活しているので、話し合いというのは、あまり納得していないようでした。家族の中で一番苦しんだのは息子ですから、仕方ない部分もあると思います。これから私たちは、息子に対しても説明して納得してもらえるような解決をしたいと思っています」

    和解のポイントは?

    なお、担当教諭は「国家賠償法に基づき、法的責任は負わない」と主張し、争う姿勢を示している。

    和解が成立するかはこれからの話し合い次第だが、世田谷区側も現時点ではまだ、具体的に和解条件を提示してきてはいないという。両親は「まずは、区と担当教諭に謝罪してもらいたい」と話していた。

    【訂正】啓子さんの名前の漢字を訂正しました。