アメリカを恐れぬドゥテルテ大統領来日 日本は、どこまで信用すべきなのか

    日本との軍事関係強化を懸念する声も

    米国のオバマ大統領をも恐れぬ男、フィリピンのドゥテルテ大統領が10月25日夕、来日する。中国訪問中に発した「米国との決別」宣言は、日米両国を動揺させた。

    テレビ朝日などの報道によると、来日前日の24日夜、ドゥテルテ大統領は「米国との軍事同盟は変わらない」との考えを示した。

    親中方針を転換し、米国と関係改善を狙った発言とも理解できる。だが、ドゥテルテ大統領は、反米発言の直後に釈明するパターンを以前から繰り返している。人権侵害を批判する米国への強硬な態度が軟化する確証はない。

    ブレのあるドゥテルテ大統領の発言を、フィリピン人はどう分析し、日本政府に何を期待しているのか。外交問題に詳しいフィリピン人専門家らに聞いた。

    「日本ならば紳士的に注意できる」

    デ・ラサール大学(フィリピン)のリチャード・ヘイダリアン教授(政治学)は「聞き手を喜ばせる癖があり、矛盾した発言をすることがある。しかし、米国との関係性を断って、中国につくことはないだろう」とBuzzFeed Newsに話した。

    さらに、「ドゥテルテ大統領は親日家で、『アジア人のためのアジア』という世界観を持っている。中国と接近する方針についても、日本ならば紳士的に注意できるだろう」と期待感を示した。

    フィリピン外務省の取材経験が長いフィリピン人記者も、同様に楽観的な見方を示している。

    訪日経験もある男性記者はBuzzFeed Newsに「ドゥテルテ大統領が『中国と軍事同盟を結ぶ』と断定的に言い切ったことはない。発言の狙いは、貿易、投資、外交のレベルでの中国との関係改善だろう」と話した。

    ドゥテルテ政権は親中なのか

    フィリピンは海を隔てた日本の隣国。日本の支援事業で整備されたインフラ設備も多く、経済的なつながりも強い。フィリピンのアキノ前政権は日米両国と協力し、南シナ海での海洋支配を広げる中国に対峙してきた。

    フィリピンが軍事的に親中国家となれば、日本の安全保障政策にも影響が出ることは必至だ。

    国際仲裁裁判所の裁判では、南シナ海における中国の領有権主張に法的根拠はないとする裁定が出た。

    フィリピンは国際仲裁裁判所の判断を盾に中国と対峙すると日米両国はみていたが、ドゥテルテ大統領は中国との二国間交渉再開で合意した。

    「米国との決別」発言をめぐって、岸田文雄外務大臣は「真意を直接確認したい」という考えを示している。

    フィリピン大統領府の番記者は「日本が南シナ海問題を切り出せば、ドゥテルテ大統領も踏み込んだ発言をするのではないか」と見ている。

    未だ不透明な外交方針

    一貫性に欠けるドゥテルテ大統領の発言に懸念を示す識者もいる。

    南シナ海情勢に詳しいフィリピン人軍事アナリスト、アントニオ・クストディオ氏はBuzzFeed Newsに「ドゥテルテ政権の真意を見極めるのは困難」と強調した。

    「大統領と閣僚の意見ですら矛盾している。安全保障の方針について、フィリピンの防衛大臣もドゥテルテ大統領と十分な協議ができていない状態」(クストディオ氏)

    欧米諸国はドゥテルテ大統領の違法麻薬撲滅作戦を非難しているが、日本政府はこれまで強く批判したことはない。フィリピンに対する配慮が透けて見える。

    ドゥテルテ大統領は10月25日夕に日本に到着し、岸田外務大臣らとの夕食会に出席する。27日までの滞在中には安倍首相との首脳会談、天皇陛下との面会が予定されている。

    日本は、どこまでドゥテルテ大統領を信用すべきなのか。厳しい選択が迫られている。