「お祈りメールに落ち込む」「正直やめたくなる」この気持ちとどう向き合えば?悩める就活生が専門家に本気で相談してみた

    正直しんどい、辛い、やめたい……!慣れない面接にインターン、そして次々届く「お祈りメール」。メンタルがやられることばかりの就職活動、このグラグラな気持ちとどう付き合っていけばいいですか?心の専門家にアドバイスを聞きました。

    多くの大学3年生が今、直面している就職活動。

    いわゆる「24卒」(2024年3月卒業見込の学生)を対象とした本格的な選考はまだ先ですが、インターン募集や説明会などはすでに多数、開催されています。

    私も大学3年生です。就活サイトなどの情報を参考に6月頃から就職活動を少しずつ始めました。

    2020年4月の入学早々、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、私たちの大学生活は「コロナ禍」とともにありました。授業はほとんどがオンライン。同級生だけでなく先輩・後輩とのつながりも少なく、クラブ・サークル活動もコロナ以前の時代のようにはいきませんでした。

    就職活動にも不安を抱えています。

    夏インターンの選考に参加し、ES(エントリーシート)を送り、面接を受けても結果はふるわず、落ち込む日々。メンタルの上下動も激しく、これから乗り越えていけるのか心配です。

    私のような悩みを抱える学生たちを、心の専門家の人々はどう支えているのでしょうか?早稲田大学保健センターのカウンセラーの樫木啓二さんと、精神科医の石井映美さんにお話を聞きました。

    早稲田大学保健センターの樫木啓二さんは、臨床心理士や公認心理師の資格を持つカウンセラーです。「学生相談室」で日々、学生たちの悩みを聞いています。

    早大の学生約5万人のうち、相談室を利用するのは年間1000人超。メンタルヘルス関連の相談だけでなく、勉学や進路、法律に関することまで、内容は多岐にわたります。

    石井映美さんは、保健センター内の「こころの診療室」で学生を診療する精神科医です。

    学生相談室と連携し、ただ悩んでいるという以上に、「眠れない」「食べられない」など日常生活に影響をきたしている学生に医療的なサポートをしています。

    こころの診療室では、市中のメンタルクリニックと同じように、症状に合わせて薬物療法や検査を行います。

    石井さんが精神科医として心や体に症状が出てしまっている学生たちと接するなかでも多いと感じるのは、「就活をきっかけに初診に至る学生」といいます。

    「早い方は、就活が控えていると考えただけで気が重くなり、就職活動中の学生は『なかなか決まらない......』と悩んでうつっぽくなる。学生生活のどんな時期でも、就活は悩みの種となりやすいと感じます」

    就活の定番「ガクチカ」がない私たち

    「24卒」で大学3年生の私は、今年6月から夏インターンシップの選考を受け始めました。

    ESに面接、グループディスカッション…。ゼミや課題に追われながら取り組む就職活動は困難なことだらけで、悩みが尽きません。

    おふたりに伺いました。

    👶私たち20年度に入学した大学3年生は、新型コロナウィルスの感染拡大と同時に大学生活が始まりました。感染予防対策の影響などで、思い描いていたようなキャンパスライフを送れませんでした。「ガクチカがない」などの悩みを抱えた学生に、どのようなアドバイスをしていますか?

    ※ガクチカ:「学生時代、力を入れて取り組んだこと」という多くの企業のESで採用される質問。サークル活動や長期インターン、アルバイト、留学などのトピックが学生からは人気。

    👨‍🏫(樫木さん):たしかに、私のもとに「アピールできることがない」と相談してくる学生さんは多いです。

    サークルや留学など、さまざまな活動が制限されてしまったみなさんは、いわゆる就活マニュアルにのっているような「ガクチカ」を書くのは難しいですよね。

    👶そうなんです、特に1年生の頃は、自宅で1人でオンラインで授業を受けるだけの毎日が続いていたので…。

    👨‍🏫(樫木さん):でも、困難な中でもきちんと勉強に取り組んでいたなら、それも素晴らしいことです。

    当たり前ですが、授業やゼミ、レポートなどを頑張ったというのは立派な「力を入れて取り組んだこと」です。むしろ、コロナ禍という大きな制約の中で、みなさん本当に頑張ったと思いますよ。

    私がもし、そのような理由で相談にきた学生さんとお話しするなら、「自分の宝探しをしよう」とお伝えします。

    気付いていないだけで、制限がある中でも取り組めていたことがきっとあるず。「頑張れたこと」や「自分らしく出来たこと」を書き出して探してみることをおすすめします。

    自分のことは客観視しにくいですから、カウンセラーに限らず、周囲の人に相談するのもよいと思いますよ。

    20通もの「お祈りメール」

    👶不採用の連絡、いわゆる「お祈りメール」をもらうと、やっぱり落ち込みます。今まで約30社の選考に参加して、20社以上落ちました。

    本格的な就職活動ではさらにショックを受けると思うと、今から“しんどい”のですが、どのように気持ちを立て直せばいいでしょうか?

    👨‍🏫(樫木さん):それは大変でしたね。エントリーシートを1社提出するのに多くの時間とエネルギーをかけているからこそ、「あれだけ時間かけたのにダメだった…」と、ダメージがあるのでしょう。

    👩‍⚕️(石井さん):大学での生活は問題なく過ごせていたとしても、就活をきっかけに心の病を患ってしまい、その後さまざまなサポートを受けるようになる学生は一定数います。

    就活は、それくらいストレス負荷が高いものであり、落ち込むのはある意味で当たり前だとまず思ってください。

    これまでの学生生活の多くの困難は、入学試験をはじめ、自分が頑張った分だけハードルを超えられる可能性が高かったはずです。

    それでわりとうまくやってきた学生が、「頑張ってもダメだった」という結果から自分を否定されたように受け取ってしまうので、非常に辛いだろうと思います。

    👶一生懸命書いたり取り組んだ分、面接やエントリーシートには自分が詰まっていると考えてしまい、落ち込むんですよね。

    👨‍🏫(樫木さん):準備を十分したにも関わらず、落ちてしまった場合は、「相性が合わなかったんだな」とか「向こうが求めているものとは違ったんだな」と、自分自身と結果をちょっと切り離して考えてみたらいいと思いますよ。

    👩‍⚕️(石井さん):私もそのように声をかけます。企業は、自分の都合で選んでいるに過ぎませんと。

    「優秀な順に選んでいるのではなく、企業の都合で勝手に採用を決めているので、あなたの価値をジャッジしているわけじゃないのよ」といつも言っています。

    「就活やめたい」気持ちとの向き合い方

    👶「就活を辞めたくなる時」が頻繁にあります。それは、進学したい等の前向きな理由ではなく、目の前の選考1つ1つに疲弊してしまった末の自暴自棄だと思っています。どうすればいいのでしょうか?

    👨‍🏫(樫木さん):そのような時にはちょっと立ち止まって、自分のこれまでの就活の方向や自己分析や企業分析を振り返ってみてもいいかと思います。

    闇雲に、「とにかくやらなきゃ」「もう決めなきゃ」と思っても、空回りするだけで、これまでと同じ方向で進めてもうまくいかない場合があります。自分のコンディションが悪ければ、まずは休んで体調を整えてほしいです。

    👶でもやっぱり、休む勇気も出なくて辛いんですよね。休むと周囲に置いてかれてしまいそうで。

    👩‍⚕️(石井さん):私も「今週来週はとにかく休みなさい」と言います。あと「優先順位の低いところは思い切って捨てなさい」とも伝えます。

    とにかく内定がなくて焦っている学生さんは、本選考では70社、80社くらいまでかなり数を広げていることがあるので。

    👶焦る気持ちは、すごくわかります。でも、数を増やせば増やすほど追い込まれて疲れていくんです。

    👩‍⚕️(石井さん):そうなんです。量を増やしてもパフォーマンスが上がるわけじゃないですよね。

    調子が悪くて鬱状態になればなるほど、視野狭窄に陥ってしまってしまう。

    自分の体や心の悲鳴を無視して突っ走ってしまっている学生さんは少なくないので、「まずは休もう」と繰り返し説得しています。

    👨‍🏫(樫木さん):企業によっては秋採用も通年採用もありますから、やり方は1つではないんですよね。そういう風にちょっと視野を広げていただけるといいかなと思います。

    それに加え、心身の不調がとても大きい場合には、まずは卒業を目指そうとアドバイスしています。

    4年生は、就活と同時並行で卒業と卒論がありますから、それにはとてもエネルギーがいります。まずは卒業を目指して、それが落ち着いてから就職活動する、という方法もあります。

    漠然とした不安につぶされそう

    👶就活を前にして、将来に対して漠然とした不安を常に抱えています。今まで経験してきた受験よりも選択肢が多くて広く、不安で不安でどうしようもありません。それに対する対処法はあるんでしょうか。

    👩‍⚕️(石井さん):心理的にも「事前の不安」は非常に大きいものなんですよね。実際ちょっとやってみれば「あ、こんな感じなんだ」と見通しがつくし、始まってみるとなんとかなることも多いです。

    「事前の不安」は誰でもあるんだ、と思っているうちに不安の対象がどんどん具体化してきます。具体化すれば、もう後は取り組むだけです。

    👨‍🏫(樫木さん):そうそう。初めてのことに対して不安を感じるのはすごく自然なことですよ。そのため、「不安に感じちゃいけない!」と、強く不安を遠ざける必要はありません。「不安に思って当然だ!」というくらいを思ってみてはいかがですか?

    👩‍⚕️(石井さん):不安はちょっと辛いけど、悪いものじゃないんですよ。不安がないと準備しませんから。

    👶たしかに...!!!

    👨‍🏫(樫木さん):他にも、面接の時にすごく緊張してしまうと話す学生が相談に来ることがあります。でも、ドキドキするのは、別の見方をすると、心臓が心拍数を上げて血液を一生懸命身体中に送っていて、体が応援してくれているとも考えられます。

    👩‍⚕️(石井さん):面接官も「緊張している真面目な子なんだな」と好意的に見てくれると思いますよ。

    👶「不安」や「緊張」など漠然とした怖い気持ちがすこーーし薄れてきました。

    👨‍🏫(樫木さん):人生の先輩として、社会人のお話を伺ってみるのもいいかもしれませんね。インターネットのサービスなどを利用してもいいし、大学のキャリアセンターなどが開催するイベントで、OG・OBの方からお話を聞くことも出来ると思います。

    今は立派に働いている人たちでも、学生時代は同じような不安や怖さを感じていたはず。「自分だけじゃないんだ」と思うと安心できるかもしれません。

    他の人と比べてしまう…。

    👶最後の質問です。私は、友人たちの就活の進み具合がすっごく気になっています。

    業界や志望企業が違っても、自分より選考を通過してそうな人のツイートなどを見てたまに病んでいます。この気持ちには、どう折り合いをつければいいのでしょうか。

    👩‍⚕️(石井さん):実際に「仲良しの〇〇くんは、自分よりも大きい企業に入った」など仰る学生さんはいらっしゃいます。ですが、考え方次第だと思いますよ。

    コンパクトな会社に入れば、その分会社で担うことが出来る役割も大きいでしょうし。早く決まってしまった人はその時点から夢は広がらないけれど、自分はまだ選ぶことが出来るかもしれない、とか...。

    どんなことも、100%いいこと、悪いことしかないなんてことはないんですよね。いろんな側面から物事を見られるように心がけておくことが必要なのかもしれません。

    👨‍🏫(樫木さん):ただ、どうしても周りの人と比較してしまう時もありますよね。

    その上で、学生さんには周囲と比較する相対的な視点のみならず、自分の成長を認められるような絶対評価的な視点も持っていてほしいなと思います。

    実際、就活の時期を乗り越えていく学生さんと相談室でお会いしていると、どんどん成長していく姿が見られます。話し方とか、言葉遣いとかがしっかりしていっています。

    逆に、もう心が折れてしまって、もう一度というのはもう辛いとかおっしゃる学生もいます。たくさん応募したのに落ち続けているとか、最終面接で落とされて、またエントリーシートの提出からなんて無理です...みたいにね。

    とにかくそういう時は一緒に残念がって、それでまた少しでもスタートできるように心がけて接しています。私たちが直接的に何かをしてあげられるわけではありません。学生が納得するまで、我々は伴走をしていくだけです。

    本人の今の考えや、自分は何を大切にして働きたいのかという思いを受け止めつつ、考えを整理するお手伝いがをできればと思っています。

    👶伴走...っていい言葉ですね。親でもなく、友人でもなく、採用担当者などではないサポーターがいてくれる心強さを感じました!


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