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恋愛感情を持たない私の話。こんな悩みを抱えるのは私だけじゃないはず。

「自分だけがおかしいんだ、と思ってひとりで抱え込まないでほしいです。そして、皆が多様な生き方を認め合える世の中になればいいな、と思います」

「恋愛」とは何だと思いますか?

私たちの身の回りには、当たり前のように「恋愛」があります。自分が恋愛をしたり、友人との話に出てきたり、小説、映画など様々な創作物で描かれているのを見ることもあるでしょう。

ただ、今回紹介するのは宇宙野悠さん(@soranoharuka)が投稿した「恋愛感情を持たない私の話」という漫画。

恋愛に関してモヤモヤを抱える人も、そうでない人も読んで欲しい作品です。

「恋愛感情を持たない私の話」

「恋愛感情というものがない」と話す主人公。その違和感の始まりは、小学校時代までさかのぼります。

「好きな人」が分からず、選択式のテストのような感覚でクラスメイトの男の子の名前を挙げた主人公。バレンタインデーに乗り気な家族がお菓子を買ってきてしまいます。

ただ、そんなお菓子を渡せるわけもなく…。

「ひたすら自分を守りたいクズだった」

へのへのもへじ君に対して「キモチワル」といった自身のことを「クズだった」と振り返ります。

この一件から、主人公は異性との交流を避けるようになりますが…。

「好きな人できへんのはおかしいやろ〜」

ですが、大学入学後に「恋愛」にあふれる環境に放り込まれた主人公。

周囲のカップルの存在や何気ない会話から、自分の中で「恋愛感情とは何か」という問いに向き合い、モヤモヤを感じることもありました。

何がおかしくて、何が「普通」なのでしょうか?

「俺達そろそろ付き合おうよ」

「一般的に見れば」ごく自然な流れだったとしても、主人公は「ひどく裏切られたような気分だった」と言います。

ただ、友人は2人の交際に肯定的で…。

「そのうち普通になれるのかな…」

「普通になること」を目指して、交際をスタートした主人公。

ただ、違和感はふとした瞬間に訪れます。

「私が、わるいのだろうか」

彼と付き合ったはものの、ふとした瞬間にあるコミュニケーションの齟齬。

主人公はモヤモヤとした気持ちを抱え続けます。

「幸せってなんですか」

「幸せになってほしいから」と、自分に対して望まれている選択肢を「幸せ」とは感じられない自分。

その「幸せ」とは、一体誰のためのものなのでしょうか。

主人公は1人で悩み続けます。

小学校の頃から抱えてきた「恋愛感情がない」というモヤモヤ。

最終的に、そのモヤモヤは完全には晴れません。今後どうなるかも分かりません。

ただ、「自分の心には嘘をつかない」ことを決め、マンガで伝えることを選んだ主人公。

最後の1コマの主人公の表情が作品の中で1番晴れやかに見えます。

BuzzFeedは投稿した宇宙野悠さんに話を聞きました。

コルクラボマンガ専科」というマンガの学校の4期生である宇宙野悠さん。先輩の3期生が「自分のことを描く」という課題の一環で描いた漫画が非常に印象的で感銘を受けたそう。

そして、自分もやってみようと思ったことが今回の漫画を描いたきっかけだったと振り返ります。

「正直自分にとっては消してしまいたい過去ですが、その頃の感情を描くことで自分の心の整理になるかもしれない、同じ悩みを抱える人に何か伝えられるかもしれない、と思い、自分が1番悩んでいた『恋愛感情を持てないこと』をテーマにしました」

漫画を描く上で1番時間をかけたことは「自分の感情と向き合う」ということ。

「あのとき自分は何が辛かったんだっけ、何を思ってあの選択をしたんだっけ、とひとつひとつゆっくり思い返しました」

そのようにして描かれた作品には、多くの人が心を動かされています。

生きづらさを感じていたところ、こちらの漫画を拝見してとてもしっくりしました。

すごい共感。恋愛感情ないわけじゃないけど、恋人がいるのがステータスとか、結婚=幸せとか違和感なんよなぁ。

この作品を読んで自分のセクシャリティを理解出来た気がしました。
恋や男女愛ばかりが「愛」ではありません。「恋」を持たないからといって異常と思い悩む必要なんかない。勇気を貰いました。

私も一生結婚したくないからめちゃくちゃ共感した。 結婚=幸せって誰が決めたん?価値観の押し付けうるさいんよなあ…。

あーめちゃめちゃ共感。
20代の時、好きって何?って真剣に友達に聞いたらきょとんとされたなー。友情の好き(友達)<恋愛の好き(彼氏彼女)みたいなのが、なんか解せない。

普通って何だろう…。

漫画の中で、主人公は「普通」になろうと苦しみます。普通とは何か、宇宙野悠さんにお聞きしました。

「周りから言われてきた言葉の中で感じていたのが『異性に恋愛感情を抱くのが普通』『付き合っている相手とは性的な接触を持ちたいのが普通』『結婚願望があるのが普通』ということでした」

<イメージ画像>

「実際にこれらのことを否定すると『変わってるね』と言われてきました。でも実際、これに当てはまらない人間なんて星の数ほどいると思います」

「今考えると『普通とは何か』という問いは明確な答えが出るものではないような気がします。人間なんてひとりひとり違うものですから」

「自分が描いた創作漫画『恋しない小石内さん』の主人公が言ったセリフに、『“普通”ってさ、今まで“多くがそう”であったものを、勝手に“それがルール”みたいに思い込んじゃってるんだよね』というものがありますが、まさにその通りだと思っています」

「マンガで伝えていく」ということ。

漫画の中でもあるように、「みんなが幸せだと思うソレは私にとっては幸せじゃない」ということに向き合い、「マンガで伝えていこう」と思うようになるまでの経緯をお聞きしました。

「結婚しないとひとりになっちゃう」ということを感じ出したのは、20代後半くらいから友達が次々と結婚していった時期だったそう。

「もちろん結婚してからもずっと仲良くしてくれている友達もいるのですが、やっぱり自分の家庭が最優先になっていくだろうし、どんどん取り残されていくような気持ちになりました」

「また、自分は兄弟や歳の近い親戚もいないため親からも心配されていて、『結婚しないでずっとひとりでどうするのよ…』と言われてきて、自分自身不安にかられていました」

「そういった不安もあり、恋愛感情として好きになれない人と付き合い、このまま結婚すれば親も安心する、これが正解なんだと自分に言い聞かせていました」

「でも、いくら想像しても結婚して家庭を持つ未来が自分の望むものではなく、まるで他人の人生を演じようとしているような違和感が拭えませんでした」

そのように周囲の知人や家族からの影響を受けながら、葛藤した過去について「今思うと付き合っていた相手にも本当に失礼なことをして申し訳なかった」と振り返ります。

付き合っていた人と別れ、この先ずっとひとりの人生で何して生きようと考えた時に、思い浮かんだのが「漫画」だったとのこと。

漫画家は子供の頃からの夢ですが、自身が漫画を描くだけではない“ある思い”について話します。

「ただ漫画を描くだけじゃなくて、漫画を通して自分が抱えてきた悩み、見出した希望を伝えていくことによって、それが誰かの心に届けば、家庭を築くことのない私でも自分なりに生きた証を残せるのではないかと思いました」

大きな反響を受けて。

誰かの心に届けば、と思い執筆した今回の漫画。「自分だけじゃなかったんだ!」「読んでて泣きそうになった」「今のままでいいんだと思えた」などの多数の声が寄せられ、こう感じたそうです。

「自分だけがおかしいんだ、と悩んでいた頃の自分を救えたような気分になりました」

また、読者からの声は今後の創作意欲にもつながったんだとか。

「畏れ多くも『漫画にしてくださってありがとうございます』などの感謝のお言葉もいただき、漫画に描いて良かった、これからも漫画で伝えていこう、と励みになりました」

読者へのメッセージ✉️

最後に、漫画を読んでくれた人へのメッセージをお願いしました。

「今回の漫画で描いたような悩みに限らず、何か悩みを抱えて辛い思いをしている人、ひとりでそれを抱え込んでいる人に、必ずどこかに同じ悩みを抱えている人はいる、ということを伝えたいです」

「身近にいなくてもどこかにはいて、今の時代はSNSで繋がることもできます。具体的に何かができるというわけではありませんが、悩みを共有できる仲間がいるだけでも少しは救われるのではないでしょうか」

「自分だけがおかしいんだ、と思ってひとりで抱え込まないでほしいです。そして、皆が多様な生き方を認め合える世の中になればいいな、と思います」