メイクで「武装」する主人公を描いた漫画が話題です。
白野ほなみさん(@ShironoH)がTwitterに「透明人間になりたくて、メイクで武装する【美少女】の秘密」と漫画を投稿したところ、6000回以上リツイートされ、2.7万を超える「いいね」が集まりました。
「感動して、語彙が無くなりました」「とっても染みるお話でした」「読み終わったら自然と泣いてました」「どうしても主人公と自分を重ねてしまいました」などの多くの共感の声が寄せられています。
メイクによってかわいくてカンペキな「皮」をかぶる主人公アオイ。そんな「秘密」とは、一体何なのでしょう…?
「いっつもお化粧をちゃんとしている」「『ザ・女子』って感じ」と、褒め言葉としてめぐに言われたアオイ。ただ、あまり嬉しそうではありません。
汗をかいているのにストールを外さない理由もわかりません。これが「秘密」なのでしょうか?
そして、アオイが大慌てで帰った後にめぐが拾った落とし物とは……。
「かわいくて」「カンペキで」「誰もが好きになる女の子」として毎日を過ごすアオイ。バイトの先輩との会話や母との電話で、なにか違和感を抱えた表情を見せます。
そんなアオイが隠している「秘密」とは。
「ぜんぜん大丈夫じゃないよ」
自分の体型を鏡にうつしてつぶやきました。
第2話はそんなアオイの幼少期の記憶にさかのぼります。
幼少期、「男のくせに、変だよ」そんな一言で傷ついたアオイ。
アオイにとってメイクとは「かわいい」「カンペキな」「女の子」になるための武装。何があっても、そのような装いで大学に向かいますが…?
アオイの秘密について、「私知ってた」と言うリカ。しかもそれは「最初から」だそうで…?
「ジェンダーとかそういうの色々…全然詳しくないけどさ」「メイクもスカートもないアオイだったとしても、きっと私は声をかけていたよ」
アオイはそんな言葉をかけてくれたリカに、自分の想いを伝えます。
武装する手段であったメイクが溶けて流れるくらい、思い切り泣いたアオイ。
その心情には変化が訪れたようで…👀✨
BuzzFeedはこの作品を投稿した白野ほなみさんに話を聞きました。
白野ほなみさんは現在、アセクシャルの女性とゲイの男性の偽装結婚を描く『わたしは壁になりたい』を連載しています。
今回の漫画のタイトルは『カラーレスガール』。Twitterに1話と2話を投稿すると、多くの共感の声や「いいね」を集め、「『ホッとした』という感覚が大きいです」と話します。
「リツートやいいねをたくさんいただけたことは幸運なことだと思っており、概ね好意的に捉えていただけてとてもありがたいと個人的に感じています」
また、時間を割いて送ってもらえたコメントや感想全てに対して、感謝の気持ちが大きいとも受け止めています。
さまざまなコメントの中で、特に印象に残ったものを挙げるとするならば、マイノリティと呼ばれる方からの「勇気をもらいました」というコメントだったそう。
「LGBTQやマイノリティのキャラクターを登場させるにあたり『当事者の方にどう受け止められるのか』というのは、連載を始めた当初からいつも気にかけていて、心配や不安が尽きませんでした」
「そんな中で拙いながらも、今まで感じてきたこと、自分が欲しかった言葉、かつての自分に届けたい思いを織り交ぜて描いてきた作品でした。その中の何かが読んでいただいた方々に届いているのなら、少しでもプラスの何かを感じ取っていただけたなら、とても光栄です」
「自己肯定感を失わないための大事な手段」
アオイのことを「メイクで武装する」と表現する白野ほなみさん自身も葛藤の末に、メイクを「自己肯定感を失わないための大事な手段」の一つであると捉えているんだとか。
「私は中学時代からニキビやアレルギーなどが原因で、いわゆる素肌が『綺麗』ではありません。今は感染症対策の影響で、マスクの着用が常になっていますが、それでもなお、ファンデーションも塗らず出掛けることには苦痛を感じてしまうほどです」
「自分のありのままのルックスを肯定したいと内心では願っていますが、現実はなかなかうまくいきません。 ですが、矛盾を承知の上で今のわたしにとって、メイクは『自己肯定感を失わないための大事な手段』の一つなのです」
「私は極端な例ではあるとは思いますが、見た目やその人の印象に与えるメイクの影響は大きいと感じます。また、その上で『メイクをすること』の意味も人によって変わるでしょう。しっかりフルメイクをするのが好きな人もいれば、メイクをまったくしたくない人もいるように」
「問題なのは、現在の社会において『<女性>がメイクをすること』が半ば強制である事だと思います」
「少しずつ変化してきているとは思いますが、特に仕事や公式の場において、女性はメイクをすることが半ば義務と化し、反対に男性はメイクをしないことがスタンダードです」
「仕事の場など社会と関わる際に、TPOに合ったメイク、好ましいと感じる見た目や格好が求められる場面があるのは、仕方のない事だと思います。ですが、もっと選択肢が増えることで、苦痛が軽減する人も少なからずいるのではないでしょうか」
「メイクをするもしないも、どんなメイクをするかも『義務』ではなく、個人の『選択』の1つだと捉えられる場面が、日々の生活や社会の中で、もっと増えればいいのにと思わずにはいられません」
「メイクで武装する」アオイが、リカやめぐとの関わりを通して自身の外見について捉え直したストーリーに対し、「なんだか勇気をもらいました」「これからの世界の教科書でした」というコメントが寄せられたのも納得です。
読者へのメッセージ。
最後に、投稿した作品の読者に対してのメッセージをお聞きしたところ、「まずは、拙い作品を読んでいただいてありがとうございますと伝えたいです」とのことでした。
「ツイートに載せた1話と2話では、アオイが友人2人に自分を肯定してもらう所でお話が終わっています。しかし、アオイや周囲の子たちの物語は『カラーレスガール』という作品の中で続いていくので、もし続きが気になる方がいれば、お手にとって最後まで読んでいただけますと幸いに思います」
全3巻の『カラーレスガール』。2話の最後には友人2人に肯定され、髪型や服装が少し変わったアオイ。この先が気になる人は読むしかありませんね…👀✨