ダイハツ、1989年からの検査不正で全車種の出荷を停止。「上司に相談しても意味がない状況」、第三者委が指摘

    ダイハツ工業の奥平総一郎社長は「現場の負担やつらさを十分に把握せず、放置してきた」と語りました。

    ダイハツ工業は12月20日、国内外で販売中の全車種の出荷を停止したと発表しました。現在生産中の全28種を含む64車種において、不正なデータを用いて国の認証を取得していたことが判明したため。  

    ダイハツは2023年4月、社内の内部通報で不正が見つかったと発表。外部の弁護士らで作る第三者委員会が進めてきた調査のとりまとめを12月20日に公表しました。

    委員会は安全性に関する実験方法の不正や虚偽記載があったと認定。不正は1989年から確認され、対象はすでに生産終了しているものも含め64車種に及び、中にはトヨタやマツダ、SUBARUブランドから販売されているものも含まれています。

    原因について報告書は、「(試験に)『絶対に合格しなければならない』『不合格は許されない』という、まさに一発勝負の強烈なプレッシャーに晒されながら業務を行っていた」と記載しています。

    「上司に相談しても意味がない」社風

    報告書は「ダイハツの存在意義として開発部門の組織内で根付いたもの」として“短期開発”を挙げています。

    窮屈なスケジュールで開発日程の死守が求められており、「『自分や自工程さえよければよく、他人がどうあっても構わない』という自己中心的な風潮、組織風土が『社風』として深く根付いている可能性がある」と指摘。

    さらに「『できて当たり前』の発想が強く、何か失敗があった場合には、部署や担当者に対する激しい叱責や非難が見られる」と記載されています。

    また会見での説明では、上司が多忙で現場にほとんど出向かず、「相談に行っても意味がない」という状況があったと説明。経営層は「認証手続きについてはある意味で無関心だった」といいます。

    不正の原因について奥平総一郎社長は会見で「経営陣・管理職が現場の負担やつらさを十分に把握せず、放置してきたことにあると考えています。その結果、プロジェクト推進を優先し、法令、ルールを守れない企業文化が形成された、その全ての責任は経営陣にあります」と語りました。

    安全性の問題は確認されていない

    再検証の結果、現状では安全性の問題はないといいます。会見で奥平社長は「社内で安全性を再検証した結果、乗り続けて問題がある事象は発生しなかった。今まで通り安心して乗っていただければと強く思っている」と話しました。

    またトヨタ自動車の100%子会社であるダイハツ。トヨタについて委員会は「ダイハツの経営幹部が気づいていないなかで、トヨタ側では気づき得なかった」としています。

    12月21日には国土交通省が立ち入り検査

    国土交通省は12月21日、大阪府池田市の本社に立ち入り検査に入りました。道路運送車両法に基づいた行政処分も視野に調べています。