

初めての金ちゃんヌードル





可もなく不可もなく、ただ普通に、美味しい。

金ちゃんヌードルとはきっと、西日本民の心の拠り所なのでしょう。金ちゃんヌードルを食べると懐かしい思い出が蘇る。あの日の茶の間、買い食いした店先、初恋のあの子…遠い記憶を鮮明に蘇らせてくれる装置、それが金ちゃんヌードルなのです。

出会いは思いがけないところに潜んでいると言いますが、街角のドン・キホーテも例外ではありません。
レトロな面構えに目を奪われ、気づけば買い物カゴに放り込んでいました。初対面なのに遠い昔に会ったことがあるような気がして、それを確かめたくて。
聞けば徳島発の商品で、西日本ではソウルフードの位置付けの金ちゃんヌードル。同僚いわく、皆がこれを食べて育つのだとか。
そうか、関東、東北にとってのペヤングというわけか。
丁寧にフタを開けたら、閉じ込められた2つの小袋(かやくとスープ)を取り出します。金ちゃんヌードルを知るということは、この小袋(かやくとスープ)をそっと置くことから始まる、長年の経験からそうすべきだと思えたのです。
指先に神経を集中し、小袋(かやくとスープ)の中身を丁寧に移します。
それいけ!と飛び出した具材を眺め、「ヨシヨシ」と心の中で小さく呟きました。並々と熱湯を注ぎ、シュワシュワと小さく音を立てるソレを眺め、また、「ヨシヨシ」と心の中で呟きました。
お湯を入れたらあわてず、じっくりと3分待つことが定石。金ちゃんヌードルも例外ではありません。1分でもダメ、4分でもダメなのです。
ふわりと漂う海の香り。
胸の奥の方から込み上げてくる何かを抑え、割り箸を手に取り顔を近づけます。ズルリズルリと麺をすすり、あぁなるほどな、と。
きみが海の香りの正体?
おそらく僕は二度と金ちゃんヌードルを買うことはありません。東北で生まれ育った僕に、金ちゃんヌードルは必要なかったのです。
金ちゃんヌードルとはきっと、西日本民の心の拠り所なのでしょう。金ちゃんヌードルを食べると懐かしい思い出が蘇る。あの日の茶の間、買い食いした店先、初恋のあの子…遠い記憶を鮮明に蘇らせてくれる装置、それが金ちゃんヌードルなのです。
持っても熱くないよう二重構造になっている金ちゃんヌードル。優しい。これをみて旧ペヤング思い出し、ノスタルジーに浸ってしまいました。