
おふくろの味ってあるじゃないですか


おふくろ"たち"の味
僕のふるさとは福島県の葛尾(かつらお)という小さな村だ。


豚肉を炒めてぶっかけると最高



なぜ焼肉のタレなのか
葛尾村には焼肉屋などない。これまであったと聞いたこともない。
それどころか、商店だって数える程度だ。
じゃあなぜタレ?
タレ作りをする婦人会「ひまわりグループ」の責任者 松本順子さんに活動のルーツを聞いた。


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全国各地のグルメな情報を届ける特集「全国のおいしい!」。福島の超絶ローカルな焼肉のタレを紹介する。
親元を離れて早20年。母親がつくる料理の味がいまでも懐かしく、無性に恋しくなるときがある。
肉じゃが、唐揚げ、あまい卵焼き……気軽に遠出できないこのご時世、母の手料理とは疎遠になってしまった。
しかし、僕の家には常備できるおふくろの味がある。
焼肉のタレだ。
僕のふるさとは福島県の葛尾(かつらお)という小さな村だ。
日本テレビ系列「鉄腕DASH」のDASH村企画で米作りをしているあの田舎、といえばなんとなくわかる人もいるだろう。
葛尾村では、一部集落のお母さんたちが集まり、なぜか焼肉のタレを大量に作る行事がある。
おふくろの味、というより、おふくろ"たち"の味というのが正しいのかもしれない。
形状は市販の焼肉のタレよりトロみが弱く、醤油ベースでシャバシャバめ。
玉ねぎやリンゴなど野菜の繊維がほどよく残り、ニンニクと生姜の風味が食欲をかきたてる。
焼肉のタレといいつつ冷奴やサラダにもよく合う万能ダレだ。
作ったものは各々の家庭で消費するか、近隣住民や親戚にお裾分けする。市場に出回ることは滅多にない。
葛尾村にはこういった地域活動を通した互助意識が脈々と受け継がれている。
このタレで味付けした肉は、それはそれは絶品だ。
豚肉と玉ねぎをフライパンで炒め、タレのみで味付けした焼肉が今でも好きでよく食べる。
豚の旨味とタレの中の野菜が絶妙に絡み合い、白いご飯によく合うのだ。
一口食べると、懐かしい記憶が蘇る。
祖父母と両親と姉兄と囲んだ幼少期の食卓……もう二度と体験することのないあの光景がいまでも鮮明に蘇る。
こういったノスタルジー効果もあり、余計に美味しく感じるのかもしれない。
やっぱり美味い。
葛尾村には焼肉屋などない。これまであったと聞いたこともない。
それどころか、商店だって数える程度だ。
じゃあなぜタレ?
タレ作りをする婦人会「ひまわりグループ」の責任者 松本順子さんに活動のルーツを聞いた。
松本さんによると、作り始められたのは40年以上前とのこと。婦人会に参加した頃にはすでに作られていたという。
当時、農業改良普及所という農家を支援する役所の方が提案してくれたのが焼肉のタレ作りだった。
「昔の焼肉といえばマトン(羊肉)が主流だったんですが、お肉を食べるためのタレは農家にある材料で作れることを、普及所の方が教えてくれたんだと思います」
村内の地域ごとに農家のお嫁さんが集まり、複数の婦人会で始まったタレ作り。しかし今でも続けているのはひまわりグループだけだという。
一年でもっとも寒い1月末から2月上旬にメンバーが集まり、500mlのペットボトルにして500本あまりの量をつくる。
身内で消費するとはいえ、国産野菜を中心に使うなど材料にはこだわっているそうだ。
「食べた方の評判はいいです。売っている焼肉のタレと違って、さっぱりしていて美味しいとよく言われます。親戚の小学生の男の子は焼肉屋に持ち込んだりしているそうです笑」
震災で避難している間も、避難先の居酒屋の厨房をかりてタレ作りを続けた。
「やめるっていう選択はありませんでした。作れば避難先でも食べるし、お礼に渡せるしね」
いま僕の手元には今年作られたタレがある。
新作も非常に爽やかでバランスの取れた最高の仕上がりだ。
ラベルがヨレているところがいい。手作り感があって愛せる。
あと何年、このタレを食べることができるだろう。
おふくろたちの健康を願うばかりだ。
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