「夢が見つけられない、ほとんどすべての人が抱え続ける悩みですが…」東大入学式のスピーチがSNSで絶賛の嵐。その内容は?

    東京大学の入学式での祝辞スピーチがSNSで大きな話題を呼んでいます。「大人こそ刺さる」「子供にも伝えたい」と多くの人が心震えた内容とは。

    「すごい文章を読んだ」「素晴らしい人選、今の時代らしい素晴らしいスピーチ」「いいから読んで。そして、お子様にも気持ちが熱いうちに伝えて」

    ――2023年度の東京大学の学部入学式での祝辞がSNSで話題を呼んでいます。

    4月12日におこなわれた入学式で、新入生に向けてメッセージを贈ったのは、低・中所得国での感染症対策を支援する国際機関「グローバルファンド」で保健システム及びパンデミック対策部長を務める馬渕俊介さんです。

    〈長い受験勉強が終わって、ついに自由。たくさん遊んで、恋人作って、ガンガンやっていいと思います〉と背中を押すとともに、〈同時に、大学の4年間は、「自分で創り、自分で切り拓く、自分の人生」のスタート地点です〉。

    〈私が皆さんより少し人生を先に生きてきて、とても大事だと感じていること、大学に入るときに知っておきたかったと思うことを、2つのお話を通して共有します〉とスピーチを始めました。

    「本当に好きなことをやらないと、徹底的に突き詰めることはできません」

    1つは「夢」について。大学時代にグアテマラの少数民族の村でホームステイしたことで、途上国の人々が病気や感染症に命や可能性を奪われずに生きられるサポートをしたいと思うようになった――現在の仕事につながる「夢」を抱いた瞬間を振り返ります。

    〈「夢」について皆さんにお伝えしたいことは2つです。1つは、夢に関わる、心震える仕事をして欲しいということ。修行のために敢えて途上国の支援とは関係のない仕事をしたときに実感したのですが、自分の夢に関わる本当に好きなことをやらないと、それを徹底的に突き詰めることはできません〉

    〈好きなことをやってないと、幸せの尺度が「自分が他人にどう評価されているか」になってしまう。それではうまくいかないときに持たないです。他人の評価を気にする他人の人生ではなく、自分がやりたいことに突き進む自分の人生を生きてください〉

    〈夢は、探し続けて行動し続ける人にしか見つけることはできないということです。夢が見つけられないというのは、ほとんどすべての人が抱え続ける悩みですが、夢は、待っていれば突然降ってくるものではありません。探し続けて、行動してみて、その中で少しづつ「彫刻」のように形作っていくものだと思います。周りに流されず、自分の興味のままに、探し続けてください〉

    ナンバーワンになることは難しい、でも…

    2つめは「経験」について。2014年にエボラ出血熱の緊急対策に取り組んだ際の自身の学びから、学問、仕事にかかわらず、さまざまな分野を横断した視野や考え方を持つ意義を語ります。

    〈皆さんはこれからいろいろな学問や仕事で身に着けた力、「経験」を組合わせて、そのすべてで問題解決に挑むということです。(中略)民間と公共の壁や、医療と文化、社会の壁などを「越境」した経験を持って、問題解決をまとめる力は、問題がどんどん複雑になるこれからの世界では、本当に重要になります〉

    〈一つの分野で世界のナンバーワンになることは、とても難しい。ですが、いくつかの重要な分野の経験やスキルを、自分だけにユニークな組合せとして持っていて、それらを掛け算して問題解決に使えるのは自分だけという「オンリーワン」には、なることができます〉

    それは本当に「リスク」ですか?

    最後に伝えたのは「人生のリスク」について。人生は日にちに換算すると約3万日という事実をどう考えるか?を語ります。

    〈時間がすごく限られている中で、考えるべきリスクは、何かに失敗するリスクではなくて、難しい挑戦に踏み込まないことで、成長できず、なりたい自分になれないリスク、世界に対してしたい貢献ができないリスク、行動を起こさずに「現状に留まることのリスク」だと思います〉

    〈人類が未来に希望を持って生きていくためには、世界の最高の頭脳が、気候変動や世界の不平等、感染症との戦いなど、世界の最大の問題に立ち向かっていかなければいけません。日本の最高の頭脳である皆さんにも、世界の、そして日本の最大の問題に立ち向かっていって欲しいです〉

    馬渕さんの祝辞は、東京大学のWebサイトで全文を読むことができます。