「決して知ることのなかったはずの音たちを視覚化してくれてありがとう」
駅のホームって、こんな音が鳴っているんだ…!
耳がきこえない人が、今まで知らなかった“正解の音たち”を知ったマンガに大きな反響が寄せられています。
描いたのは、生まれつき耳がきこえないうさささん。補聴器を通して音を聞きますが、人が話す言葉と違って、環境音はどこからどんな風になっているか、明確にはわかりません。
電車が通る音、ドアが閉まる音、ホームに響くアナウンス。本当はどんな音?
そんなある日、上野駅に設置された「エキマトペ」に出会います。電車が近づいてくる「ビュウウウウ」という轟音、黄色い線まで下がるように知らせるアナウンスなどを文字で「聞く」ことができました!
「私は驚いた」「そんなこと言っていたの?」「知らなかったことばかりだ」「これが正解の音たち!」
決して知ることのなかった音たちを「聞いた」喜びを胸に、うさささんは駅を後にしたのでした。
9月2日に投稿され、6日までに9万8000いいね、3万5000リツイートされる大反響を集めています。
「めちゃ感動して涙出た。すごく嬉しくなった」「ぜひ普及してほしい!」「補聴器で音は聴こえていても『正解の音がわからない』という世界に初めて気付いた」などの声が寄せられています。
BuzzFeed Newsは、うさささんにお話を聞きました。
エキマトペは、駅のアナウンスや電車の音といった環境音を、文字や手話、オノマトペとして視覚的に表現する装置です。
川崎市立聾学校の子どもたちとともに、富士通やJR東日本、大日本印刷などが開発しました。
一度上野駅まで来たものの…「膝から崩れ落ちました」
現在、実証実験として上野駅に設置されており、平日午前10時から午後5時まで稼働しています。
エキマトペの設置を知ったうさささんが上野駅を訪れたのは、8月半ばのこと。
その前に一度、家族を連れて上野駅におもむいていましたが、ちょうど祝日だったそう。
「祝日はやっていないということをその場で知り、膝から崩れ落ちました(笑)なので、リベンジとしてこの日は一人で上野駅まで向かいました」
流れている音をAIを使って識別し、字幕や手話で表示。リアルタイムに字幕にするだけでなく、文章の内容に適したマンガのようなフォントで表示されます。
ダイヤ乱れのアナウンスがわからない
事件・事故や災害などによるダイヤの乱れや運休は、多くの場合駅内のアナウンスで一報がありますが、耳のきこえない人が状況をすぐに知るのは困難です。
「私自身も経験があります。駅員さんに聞こうにも、他のお客さんへの対応に追われていたり、他のお客さんに聞こうにも、空気がピリピリしていると話しかけにくかったり……」
「スマホが主流ではなかった時代の方が大変だったと思います。例えば、東日本大震災の時はなかなか大変でした」
「今は電車内の掲示板でなぜ遅延しているのか知ることができますが、電車によってはなかったり更新が遅かったりします。いつ復旧するのかなどは表示されないので、そういう細かい部分も表示されるようになるといいなと思っています」
ちなみに、スマホとSNSが当たり前になった今は、Twitterで「遅延 〇〇線」で検索するのが一番確実なんだそう。
確かにそれはリアルタイムかつ最速で状況が知れそうですね!
「エキマトペ」は駅の環境音を対象にしていますが、うささんが他に知りたいシーンはどこでしょうか?
「日常にあふれるさまざまな音は全て予測なので、ぶっちゃけ全部知りたいですね」
「最近はテレビの字幕に表示される(怯える音)(騒がしい音)が一体どんな音になるのかとても気になっています」
エキマトペは2022年12月14日まで、上野駅1・2番線(京浜東北線と山手線)ホームに設置されています。
うささんのお話の通り、稼働は平日のみですので、実際に見てみたい方はご注意ください!