Updated on 2019年7月14日. Posted on 2019年7月14日

    テレ東「ヤバ飯」番組、まさかのゴールデン進出!どれだけ“ヤバい”かプロデューサーに聞いてきた

    ケニアのゴミ山に生きる青年、ボリビアの人食い炭鉱で死の瀬戸際で働く人たち、ブルガリアのキャビア密漁者たち…今回も、「ヤバい」です。

    「ヤバいやつらのヤバい飯の番組がマジでヤバい」。

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    2017年、テレ東深夜枠でひっそり放送され、ネットで大きな話題を呼んだ異色の“グルメ番組”「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の新作がゴールデンタイムで放送されます。

    リベリアの元少年兵、殺し合うアメリカのギャングたち、シベリア奥地のカルト教団村に住む少年……世界各地のヤバい人々が「何を食べているか?」という視点から紹介してきたこの番組。

    深夜ながら評価は高く、NetflixやAmazonでも全世界配信が始まる人気ぶり。SNSでは「最近見た一番凄まじい番組」「地球はめちゃ広いんだなと痛感した」など今もアツい感想が寄せられています。

    上出さん提供

    ゴミの山に立つ女性。ここは一体…?

    新作の取材で、上出遼平プロデューサーが赴いた先はケニアの「ゴミ山」

    昼夜問わず燃え続ける生ゴミやプラスチックに囲まれて、スラム街よりも過酷な環境に生きる彼らは、何を食べ、どう生きているのか――。

    「続編はないかもと思っていた」

    ――1年ぶりの新作、ゴールデンで2時間とすごいことになっていますね。

    そうなんですよ! 2時間、見ていただけるのか心配です。テレビの前で胃もたれしそう。

    ――第1弾の放送が2017年。深夜番組ながら大きな話題になり、第3弾まで放送してきました。「ギャラクシー賞」を受賞、今年になってからはNetflixやAmazonで全世界配信されるなど大躍進ですが……。

    もう一言、「大きすぎた評価」ですよね。自分含め誰一人こんなこと予想していなかったですよ。

    Haruna Yamazaki / BuzzFeed

    上出遼平プロデューサー

    たくさんの方にお褒めの言葉をいただいて本当にありがたかったのですが、正直、前回の放送のあと「もうないかもな」と思っていたんですよ。

    「いい加減辞めなさい」「危険すぎる」「何かあったらどうするんだ」という空気が漂っていたというか……会社としてはOK出しにくい企画ですよね、その判断もわかりますし。

    なので、自分としては続編やりたい気持ちはありつつ、なかなかタイミングがなかったんですよね。今回社内で「ゴールデンのこの枠、上出にやらせてみよう」と思い出してくださった奇特な方がいたようで、チャンスが巡ってきました。

    ――ゴールデンになって予算は増えましたか?

    多少増えましたが、すべてロケに消えました。スタジオは有吉(弘行)さんが座るパイプ椅子が1個増えただけです(笑)。

    そもそも「ゴールデンで2時間やるよ」が正式に決まったのは4月末で。その1カ月前くらいからなんとなく話はもらっていたとはいえ、本格的に制作できた期間は3カ月なかったですね。

    ゴミ山、人食い炭鉱、キャビア密漁

    ――今回はどんな「ヤバい世界」を覗けるんでしょうか。

    以下3つのテーマで構成するつもりです。

    1.ケニア ゴミ山暮らしの若者飯

    アフリカ・ケニアではナイロビの巨大なゴミ山に潜入。周囲をスラム街で囲われるこのゴミ山は犯罪の温床になっており、殺人事件が頻発する。3000人以上がこのゴミ山でゴミを拾って生活の糧を得ており、そのほとんどは周囲のスラムから通っている者たちだ。しかしほんの数人だけ、このゴミ山の奥地、まさにゴミのど真ん中に暮らしている者がいるという。一体誰がどんな暮らしをしているのか、そして何を食うのか。

    2.ボリビア 人食い山の炭鉱飯

    南米・ボリビアではこれまでに800万人以上が命を落としたといわれる銀鉱山に潜入。落盤や窒息性ガスの事故で1カ月に平均14人が亡くなるというこの鉱山で、今なお大勢の男たちが洞穴に潜り一獲千金を狙ってハンマーを振っている。事故には遭わずとも、彼らの肺は粉じんで侵され、寿命はみるみる縮んでいく。彼らはどうして命を危険にさらしてまで金を稼ごうとするのか、そして彼らは、何を食うのか。

    3.ブルガリア 密漁キャビア飯

    東南ヨーロッパ・ブルガリアには、かの有名な大河ドナウ川が流れる。実はこの川はヨーロッパ唯一のチョウザメ生息域であり、良質なキャビアの産地である。しかし、ドナウのチョウザメは乱獲によって絶滅の危機に瀕しており、全面的にその漁は禁止されている。にもかかわらずドナウ川沿いのある村では、漁師の大部分がチョウザメの密漁に手を染めているという。今回は密漁を終えて岸に戻ってくる漁師を直撃。彼らは何を食い、何を思うのか。

    ――それぞれ毛色が違いますね。

    ディレクターの個性が出ましたね。ケニアは僕で、ボリビアとブルガリアはこれまでも一緒にやってきた28歳と24歳の若いディレクターが担当しています。映像の雰囲気も全然違う仕上がりになっていますよ。

    僕は、着いた瞬間に体調が悪くなるようなヤバさの場所に惹かれるタイプなので(笑)今回もそんな場所に行ってきました。

    殺人事件も起こる、“危険すぎる”ゴミ山

    ケニアの首都、ナイロビは結構都会なわりに、近くにダンドラという巨大な「ゴミ山」があるんです。ナイロビ中で出るゴミが1日千トン近くも集められ、分別もされず埋められる集積所です。

    Jan Hetfleisch / Getty Images

    ダンドラのゴミ山。広大な敷地にゴミが積み上げられている

    ゴミを目当てに、毎日2000〜3000人もの人がやってきます。周囲のスラム街に住む多くの人がゴミ拾いを生業にしているんです。トラックがゴミを落とすとワッと群がって、プラスチックや段ボール、金属など自分の担当のものを集めて、近くの業者に売りに行く。

    Jan Hetfleisch / Getty Images

    3000人もの人がゴミを集めにやってくる

    ケニアにはスラムがいくつかあるんですが、ここは特に危険な場所で、観光客向けには「絶対に行ってはいけない場所」とされています。

    人が寄り付かない広大なゴミ山、何が起こるかわからないですからね……。殺人とかもまぁまぁ起こっています。暗くなると本当にヤバい感じでした。

    ――お望み通り、着いた瞬間具合悪くなる感じでしたか?

    そうですね(笑)。ゴミ捨て場だから、まず匂いがすごい。腐敗臭、アンモニア臭、プラスチックが燃える匂い……いろんな刺激臭が混ざって鼻がやられました。

    NPOなどの慈善活動と思しき西洋人たちも入り口付近にちらほらいたんですが、みなさんガッチガチの防護マスクしてましたよ(笑)。そんな感じの空気の悪さです。僕はマスクをせず取材していたんですが、帰ってきて数週間経つ今もまだ喉がちょっとおかしいです。

    Jan Hetfleisch / Getty Images

    凄まじい迫力の巨大な鳥。この正体はオンエアで

    あと、これは「ゴミ山あるある」なんですが、24時間ずっと燃えているんですよ。常にどこかからもくもくと煙が上がっている。

    ――ゴミ山あるある……。

    フィリピンのスモーキーマウンテンとかもそうですね。生ゴミが腐敗する熱が内側にこもって、日光で熱されて発火するらしいです。なので、ゴミ山の山肌はほんのり温かいんですよ。

    それから、ゴミ山に家畜がいっぱいいるのに驚きました。豚が牧草代わりに生ゴミを食べているんです。こんな感じで(映像を見せてもらう)。

    上出さん提供

    ――これは……。ゴミの中に普通に豚がいる異物感がすごいです。

    この豚たちの血中鉛濃度が35倍とかものすごく高いらしくて。ゴミと一緒に溶け出した金属も口に入ってしまうから。

    その豚肉を食べた人間の体にも鉛が溜まって、病に倒れる人も多いそうです。空気から呼吸器もやられるでしょうしね。長生きは難しい環境だとは思います。

    ……あ、でも、この豚肉、味はおいしいって評判なんですよ。いろんなエサを食べてるから脂が乗るんですかね。僕も近くの精肉店で調理してもらって食べてきました。

    ――ど、どうでした?

    めちゃくちゃ美味かったですよ! いや、本当にうまかったです。トマトと玉ねぎと一緒に炒めたような料理でした。

    ――……とりあえず、今回も「ヤバい飯」が出てくることはよくわかりました。

    14歳でストリートに放り出された

    豚を飼っているような人は周辺のスラムに住んでいる“お金持ち”なんですが、僕が今回出会ったのは本当に「ゴミ山の中」に住んでいる18歳の青年でした。山の中腹に穴を掘って、適当な屋根をつけて。自分の家のこと“Cave”(洞窟)って言ってましたね。

    テレビ東京

    ――彼はどういう経緯でこのゴミ山に?

    アフリカはまだ多産多死の傾向が強いですが、医療の発展で子どもたちが死ぬ確率はどんどん下がっています。「多産少死」になることでどうなるかというと、貧しい家庭は子どもたちを単純に養えなくなる。具体的には、学校に通わせられなくなります。

    彼も14歳までは親元にいて学校にも通っていたらしいのですが、下の兄弟たちを学校に行かせるために長男として家を出たと言っていました。つまり、当てもなくストリートに放り出されたってことですよね。

    ――それでここに行き着いたんですね。

    そんな彼も、ここでは「エリート」なんです。学校に行ったことすらない人も多いですからね。自分でも「俺は知恵があるんだ、学校に行ってたから」と言っていました。

    なので、他の人たちと同じようにトラックに群がってゴミを集めることはしないで、ある工夫をしているんです。詳しくは放送で紹介していますが。

    ――ということは、そこそこ稼げる状態にあるんですか?

    いやいや、それはまったく。1日働いて100円とか200円とか、ようやく1日分の食事にありつける程度。ゴミ山の燃えている所から火種をとってきて火を起こして、食い物を拾った空き缶に入れて、煮込んで食べる。それが彼の食事です。

    家族や親類で支え合って暮らすことすらできないから、働かないと食えない、体調崩して働けないと何も食べられない、というスーパー自転車操業です。

    ――そんな状況だと、この生活を抜け出す術もそうそうないですね。

    まさにそうで「出られる希望がない」と言ってましたよ。「きれいな服もないから外に着ていくものもない」って。

    Jan Hetfleisch / Getty Images

    アフリカ最大規模のスラム、キベラスラム(2018年)

    ケニアではスラム街のストリートチルドレンにも会ったんですが、彼ら、みんなペットボトル持って遊んでるんですよね。

    ――ほんとですね。飲み物?

    上出さん提供

    これ、シンナーやってるんです。靴の修理に使うゴムのりを20円とかで買って底に注いで、揮発したものを吸い込んでいる。

    この「ペットボトルシンナー飯」はスラム街の子どもあるあるで、南米なんかでもいます。というのは、シンナーって空腹感が軽減されるんですよ。少しずつ薄くはなっていくけど長く吸ってられるし、ごはんを食べるより安上がりなんです。だから、感覚としては「飯」。

    Jan Hetfleisch / Getty Images

    キベラスラムの小学校

    スラムにいる彼らの生業は、物乞いと強盗です。車の窓が開いてたらそこから手を突っ込んでスマホやら金目のものを奪って売り払います。運がよければ、1日1000円くらい手に入る。「シンナー飯」以外も十分に食べられる稼ぎです。

    ――ゴミ山の彼の、10倍ですね。

    そう、稼げるかどうかで言うと盗みの方が「稼げちゃう」わけですよ。スラムの子どもたちとゴミ山の青年、多分最初の境遇はそう変わらなかったと思います。何らかの理由があって、家を出された。一人でやっていくしかなかった。

    でも彼は、そうなった時に犯罪に手を染めなかった。その選択にプライドを感じたんです、僕は。本人が実際どう考えてるかわからないですけどね。

    汗水垂らして長時間仕事する姿を見て、「物乞いや盗みをしようと思ったことある?」って聞きたくなった瞬間もあったんですよ。でも、やめました。聞くことじゃないなって。

    ――14歳までは学校に行っていたというのも切ないです。

    また学校行きたいって言ってましたよ、勉強したいって。でも、このまま同じ生活を続けていても難しいのはきっと本人もわかっていて……。

    テレビ東京

    医療が発展したのも、子どもが死ななくなったのも素晴らしいことだし、社会全体で見ればよくなっているんだけれど、その狭間にこぼれ落ちている人も存在する。

    ゴミ拾いする人たちを見ながら、「例えば、ナイロビ中でちゃんと分別して捨てるようになったら、この人たちの仕事はなくなってしまうんだよなぁ」とも考えました。

    ヤバい飯、ヤバい世界をのぞき見しにきた皆さんに、背景にあるそんな問題にも思いを馳せてもらえたらいいなと思います。

    「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」は7月15日午後9時から。過去の放送は各種配信サイトのほか、「ネットでテレ東」で7月22日まで無料で見ることができます。

    提供画像


    バズフィード・ジャパン ニュース記者

    Contact Haruna Yamazaki at haruna.yamazaki@buzzfeed.com.

    Got a confidential tip? Submit it here