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「東京五輪、チケット払い戻し不可」朝日新聞報道を組織委が否定「規約には記載はない」

「規約には『払い戻しは不可』との記載はなく、報道は事実とは異なる」とコメントを発表した。

「新型コロナウイルスの影響で東京オリンピック・パラリンピックが中止になった場合、観戦チケットの払い戻しはできない」。

大会関係者に取材したという朝日新聞の報道が話題を呼んでいる。

SNSでは「購入時に規約に同意しているから仕方がない」「当たらなくてよかった」「さすがに悲しい…」などさまざまな意見が寄せられている。

オリンピックのチケットは、競技によってはかなり高額。最も高い開会式(30万円)、閉会式(22万円)、男子陸上決勝(13万円)など、10万円以上のものもある。すべて返金不可となると、相当な損失になる人も多いだろう。

新型コロナウイルスの影響で中止になったイベントの返金対応はまちまちだ。

音楽ライブやスポーツ観戦などは多くで払い戻しがおこなわれているが、東京マラソンの一般参加者への返金はなかった。

実際、どのような対応がありえるのだろうか? 組織委員会に聞いた。

新型コロナは「不可抗力」?

朝日新聞の記事では「観戦チケットの購入・利用規約上、払い戻しはできない見通し」と関係者が語ったとしている。

まず規約を確認しよう。「東京2020チケット購入・利用規約」から関係する箇所を抜粋する。

第45条(免責)

4.当法人、公式チケット販売元、会場の保有者および管理者その他本大会の運営に関与する当法人の委託先または本大会関係団体は、その責めに帰すべき事由がある場合を除き、チケット保有者がセッションを観覧する際に生じた損害について一切責任を負いません。例えば、免責される責任には以下に定めるものを含みます。

(1)セッション中におけるボール、競技器具の観客席への飛び込みなど、セッションの正当な実施に起因して生じた損害

(2)チケット利用者による東京2020チケット規約への違反行為に起因する損害

(3)不可抗力に起因する損害

第46条(不可抗力)

当法人が東京2020チケット規約に定められた義務を履行できなかった場合に、その原因が不可抗力による場合には、当法人はその不履行について責任を負いません。

第1条(定義)

(22) 「不可抗力」とは、天災、戦争、暴動、反乱、内乱、テロ、火災、爆発、洪水、盗難、害意による損害、ストライキ、立入制限、天候、第三者による差止行為、国防、公衆衛生に関わる緊急事態、国または地方公共団体の行為または規制など、当法人のコントロールの及ばないあらゆる原因をいいます。

一読すると、新型コロナウイルスの感染拡大は、「不可抗力」のうち、「公衆衛生に関わる緊急事態」に当てはまりそうだ。

そして「(中止や延期が)不可抗力による場合には、当法人はその不履行について責任を負いません」ある。

素直に読めば「チケットの払い戻しはしない」スタンスと捉えることもできそうだ。

過去、天候で中止になった時は?

「組織委員会としては、あくまで計画通りの開催に向けて動いています」

「万が一中止になった時のチケットの扱いに関しては『規約に準拠します』としかお答えできません」

組織委員会広報はBuzzFeed Newsの取材にこう答えた。

では、似たような理由で過去中止になったことはあるのだろうか?

今回のような世界的な感染症の広がりとは状況が異なるが、天候をはじめとした外部要因により、一部競技が中止・開催不可能になったことは複数回あると言う。「不可抗力」の要件の中には「天災」もある。

その場合、無条件で払い戻し不可だったわけでなく、状況に応じてケース・バイ・ケースで判断されてきたという。

規約には「原因が不可抗力による場合には、当法人はその不履行について責任を負いません」とあるが、「払い戻しを一切しないということではありません」(広報)。

また、規約の中には以下のような項目もある。

第39条(セッションの中止)

1.当法人は、自らの裁量により、セッションを中止することができます。(後略)

2.セッションが中止される場合には、当法人は、合理的な範囲でチケット購入者に事前に中止の旨を通知するように努めます(後略)

3.セッションが中止された場合は、チケット購入者は、東京2020チケット規約に従って払戻しを申請することができます。

新型コロナウイルスの流行そのものはもちろん「不可抗力」だが、そこからの判断は組織委員会による「自らの裁量」による中止と解釈することもできるかもしれない。

「万が一、大会自体や一部競技が中止になった場合『規約上の不可抗力とは何を指すか』から改めて協議することになると思います。現段階では、払い戻しをしますともしませんとも断言はできません」(広報)

UPDATE

18日午後6時ごろ、組織委員会が以下のコメントを寄せた。

規約には「払い戻しは不可」との記載はなく、報道は事実とは異なる。

昨日(17日)、IOCの理事会発表もあり、7月24日の大会開幕に向けて計画通り準備を進めているところ。中止は全く検討していない。

大会の中止を前提として議論することは適切ではない。

組織委員会、IOC及びIPCは、これまで同様、事態の推移を注視しつつ、ステークホルダーと連携をとりながら、予定通り安全安心な大会運営に向けて準備して参りたい。