「からっぱ」って、どんな意味の言葉かわかりますか? じゃあ「ままんぶり」は? 「むけせっく」は?
実はこれ、全部「広辞苑」に載っている言葉です。
……知らねーよ! と思いましたよね? 正しいです。その「知らねーよ!」を楽しむ、広辞苑1冊でできるゲームが「たほいや」、なのです。
今から20年以上前にフジテレビの深夜番組で生まれたこのゲーム。決して知名度は高くないですが、コアなファンも多い、伝説的な番組でした。
長らく復活を待ち望むファンの一人がしびれを切らして(?)自らクラウドファンディングを立ち上げたのが今年はじめ。
約100万円を集め、2月にイベント形式の「たほいや甲子゛園(こうじえん)」をスタートしました。往年のファンから、この数カ月の盛り上がりを見て初めて知った人まで。回を追う度にイベントの熱は高まっています。
当時の番組は知らないけれど、聞いてるだけでなんだか楽しそう。長く愛し続けてきたアツいファンがこれだけいるのもすごい! どこがみなさんの熱狂ポイントなんだろう?
5月31日、3度目の「たほいや甲子゛園」に遊びに行ってきました。
「たほいや」って?
今回の出場者は、松尾貴史さん、大高洋夫さん、森雪之丞さん、デッツ松田さんと、当時番組に出演していたレジェンドだらけ。この4人に加え、プロジェクト発起人である眞形隆之さんの5人で繰り広げます。
「たほいや」のルールは以下の通り。欧米ではほぼ同じゲームが「Fictionary」と呼ばれています。
- 親が広辞苑に書かれている、聞いたこともないような言葉を選びます。
- 子はその言葉を聞いて、さも広辞苑に書かれているような言葉で意味を考えます。
- 親が実際の広辞苑の意味と、子が考えた嘘の意味を混ぜて読み上げます。
- 子は親の読み上げたいくつかの意味の中から、広辞苑に書かれた本当の意味を当てます。
文字で説明してもちょっとわかりにくいかもしれないですね。実際の出題を見ればわかります!
ちなみに「たほいや」という不思議な響きの言葉も、広辞苑に載っている単語です。意味は「イノシシを追うための小屋」。へえ〜〜。
まずこの日の1問目、森さんの出した問題は「からっぱ」。
出題者は広辞苑に書かれた本当の意味を、それ以外の回答者は「あたかも広辞苑に書いてありそうな嘘の意味」を考えます。センスが問われる……。
出揃った答えがこちら。さて、読者のみなさまも予想してください(実際はひらがなで表記しますが、以下は適宜漢字に変換しています)。
- 「はらっぱー」に同じ
- 何も入っていない様子 からっぽ
- カラッパ科、特にそのうちのカラッパ族のカニの総称
- スペインの詩人、小説家
- 青森県地方でいうカッパのこと
う〜〜ん、どれもそれっぽい。考えるメンバーの顔を見渡して、森さんが一言。
「言っちゃいけないんだよね、何も。あれじゃないよ、って言いたいのがあるんだけど」(森)「印象操作はやめていただきたい!」(松尾)
予想は1に大高さん、3に眞形さん、4に松尾さんとデッツさん。結構割れました。
「1は手抜きな気がするし、2もそれらしいけどなんかピンとこないですし、3は『属』とか『科』とかいうなら動物っぽい名前であってほしいんですよね〜、というわけでナシ! 5も、なんで音が増えるの? と。東北の言葉って音を略す傾向にありますもんね? ……消去法で、4番」(松尾)
「一番会場も笑ってた、意味がわからないこれ(3番)で。まず、これを想像で考えた人がいたら、むしろその思考回路すごいですよね? というわけで賭けたくなりました」(眞形)
「3番はね、僕はデッツであってほしいんですよ!」(大高)。
この回答者っぽい発想、という予想の仕方もあるのか! ただの知識勝負でなく、推測の上手さだけでなく「この人が書きそう」も考える要素になってくるんですね。なるほどな〜〜。
ひとしきり議論したのち、正解発表。広辞苑に載っているのは……なんと3番「カラッパ属のカニの総称」でした。予想外の答えに会場からもどよめきが。
「こんなの想像だとしたら思いつきようがない」という眞形さんの予想が的中です。
確かに、こうして辞書の上で見ると不自然ではないですね。音だけだと、不思議な響きに聞こえます。
カラッパ、カニなんだ。人生に役に立つ機会はそうそうなさそうですが、ひとつ賢くなりました。
個人的に一番おもしろかった問題は、松尾さんが出題した「こかんしれん」。
……シモネタじゃないですよ! (“別にそんな意味ではないのになんだかやらしく聞こえる言葉”、当時の番組では山田五郎さんがよく出題していたそうです)
回答候補はこちら。
- 鎌倉末 南北朝時代の臨済宗の僧
- 極寒を克服する鍛錬のいち(一)
- 徳島県 阿波踊りの組のひとつ
- 下半身がしびれて力が入らないこと
- 全国古書連合の前身団体
「この中に答えあるの!?」(大高)の叫びに客席からも笑い声。全部ありそうでなさそう。
悩みながらひとつを選ぶ回答者のみなさん。1にデッツさん、2に大高さん、5に森さん、3に眞形さん。完全に割れました。
「2番は『〜の いち』って結びが広辞苑っぽいよね」「逆にそれっぽくて怪しい」なんてやりとりも。
広辞苑っぽい言い回し、もあるんだ!いや、あるんでしょうけど、考えたこと、ありませんでした。これから辞書を引く時に気になっちゃいそうです。
大高さんからは「『かまくらまつ』って言い方、変じゃない? 鎌倉時代末期、とかじゃないかな」という指摘が。
会場も確かにそう言われてみると……!? という空気になります。さて、正解は?
広辞苑での意味は……1番の「鎌倉末〜南北朝時代の臨済宗の僧」でした! デッツさんのみが正解。
松尾さんは大高さんの指摘の意味もわかっていて、だからこそ選んだとのこと。
「広辞苑では『〜』って表記になってるんですよ。よくありますよね。文字で見ると違和感はないけど、記号を読まないとちょっと不自然な響きになる」とニヤリ。
動画でもちょっとだけ。「はばはば」の意味は?
約3時間、飽きずにずっと楽しかったです。壇上と客席と一緒になって考えてる感じ。スマホでささっと検索すればわかっちゃうわけですが、あえてそれをしないでみんなでこねくり回す。
世の中には知らない言葉がたくさんある、という事実が超楽しい。じっくり辞書を引く……じゃなくて読みたくなりました。酒の席で友達と、まねしてやってみても楽しそう。広辞苑は宇宙!!
今回のイベントの様子(前半)はニコニコ生放送でタイムシフト試聴できます。
「たほいや甲子゙園」は今後も開催を予定しているそうなので、気になる人はTwitter公式アカウントをチェックしてくださいね。