「たべっ子どうぶつ」のグッズが今、若者に大ヒットしている理由 懐かしお菓子が“推せる”キャラに

    ロングセラーのお菓子「たべっ子どうぶつ」のパッケージに描かれたどうぶつたちのグッズやコラボ商品が大ヒットとなっています。若者を中心に多くの人に愛される秘密は?ギンビスにその戦略を聞きました。

    幼少期の思い出のお菓子のひとつ、「たべっ子どうぶつ」。

    そのキャラクターたちが今、さまざまなグッズになり、幅広い世代から人気を集めているのをご存知でしょうか?

    ぬいぐるみやキーホルダーなどを扱うポップアップショップや、どうぶつたちをモチーフにしたフードやドリンクを楽しめるカフェは全国で大盛況。

    GUやヴィレッジヴァンガードなど人気ブランドとも続々コラボし、その度にSNSで大きな話題を集めています。

    素朴でカラフルな「どうぶつさん」のキャラクターたちは子どもだけでなく大人にも大人気。Instagramの「#たべっ子どうぶつ」のハッシュタグは8万件以上投稿されています。

    「かわいい!」「推せる」「SNSで映える」と新たなファンを獲得し続けており、発売45周年を迎える今年、史上最大規模のリアルイベント「たべっ子どうぶつLAND」を開催するほどになりました。

    ロングセラーの歴史あるお菓子ですが、キャラクターたちの人気に火がついたのはここ数年のこと。

    いったい、どんな戦略のもとででここまでの大ヒットとなったのでしょうか? 世代を超えて愛される秘密を、ギンビスの広報担当に聞きました。

    きっかけは「カプセルトイ」

    ――この数年で急速にグッズ展開が増えていますが、ヒットのきっかけは何だったのでしょうか?

    本格的にグッズ化に取り組み始めたのが2018年頃、より多くのお客様に反響いただいたのが、2019年10月に発売した「カプセルトイ」(いわゆるガチャガチャのこと)です。

    「たべっ子どうぶつ」のパッケージから飛び出してきたかのようなサイズ感や色味にこだわり、第1弾(らいおんくん、かばさん、ねこさん、ひよこさん、ぞうさん)、第2弾(きりんさん、さるさん、わにさん、うさぎさん、ぱんださん)と発売しました。

    これが予想以上の大反響で、発売前からSNSで話題になり、ほんの数日で完売するほどに。本当に驚きました。

    年が明け2020年2月に、女優の山本美月さんが「今カプセルトイにハマっている」とテレビ番組でこのフィギュアを紹介してくださり、SNSを通してさらに注目が集まりました。

    ――いきなり大ヒット!たしかに発売前からかわいい、ほしい、という声がたくさん上がっていましたよね。

    店舗ではなくカプセルトイなので「どこで買えるの?」という声も多かったですね。発売してからも「何箇所も探したのに全然なかった」という嘆きもたくさんいただき、その後何度か再販を繰り返すほどのヒットとなりました。

    私たちとしては自信を持ってかわいい子たちを送り出したつもりではあったのですが、いかんせんグッズ化の経験がなく……どう受け取られるのかは不安だったので、喜んでもらえたのは素直にうれしかったです。

    キャラとお菓子、両方からターゲット層にアプローチ

    ――逆に、それまではグッズ化には力を入れてこなかったのでしょうか。

    多少はあったのですが、「キャラクターたちを愛してもらって『たべっ子どうぶつ』ファンを増やそう」と本格的に考えはじめたのは2018年頃でした。

    たべっ子どうぶつのメインの購買層は、今も昔も変わらず、お子さまとその親です。

    子どもの頃によく食べていて、自分に子どもができたことでまた買うようになりました……というケースが多いです。

    さらに多くのお客様に何かしらの形でリーチできないかというのが、グッズ化に力を入れようと思った理由でした。

    並行して、同じ頃から小袋タイプのコンビニ限定商品の展開にも力を入れており、これも同じ理由――「たべっ子のことは知っているけど最近食べてない」若い皆さんに手にとっていただくチャンスを増やしたいからでした。

    ありがたいことにこちらも好評で、今は大手コンビニで毎月新商品をあつかっていただくまでになっています。

    コンビニ展開の成功とキャラクターたちへの注目が集まるタイミングが重なったのは幸運でしたし、相乗効果は確実にあると思います。

    ――なるほど。キャラクターと商品、両面からターゲット世代にアプローチしたんですね。SNSでの拡散などを見ているとまさにその世代にドンピシャに見えます。

    そうですね、どうぶつたちのイラストを使ったメニューを楽しめるコラボカフェも何度か開催しているのですが、お客様で一番多いのは若年層の女性です。

    お友達同士で来て、フードを楽しんだり、“推しどうぶつ”のフィギュアやグッズを並べたり、かわいいフォトスポットで写真を撮ったり。

    他にも、カップルや、小さなお子様とお母様、親子3世代で……などかなり世代は幅広いと感じます。発売から45年が経つお菓子ですが、こうして新しい愛され方をしてもらえるのは本当に嬉しいなぁと思っています。

    「本当にお金を出して買いたいか?」愛を込めてかわいく

    ――これまでさまざまなコラボ商品が登場していますが、特に大変だったもの、思い入れがあるものはありますか?

    やはり最初のフィギュアは大変だったと聞いております。パッケージイラストの雰囲気を壊さず立体にするのにかなり苦労したそうです。

    誰も横からや後ろからを見たことがないので(笑)おしりやしっぽのフォルムを想像しながら何度もリテイクを繰り返し、こだわって作りました。

    ――結構、リテイクはするんですか?

    そうですね……メーカーさんには苦労をかけていると思いますが、かわいさは徹底的にこだわっています。

    これだけグッズ展開が多くなってくると私たちもファンの方も目が肥えていますし、「本当にお金を出して買いたいか?」「これで喜んでもらえるか?」というのはすごく考えています。

    かわいいものがたくさんある中で選んでもらえるのは光栄なことですし、「人気あるならどんどん出そう」と手を抜いてしまうと、短期的には売れてもブランドは毀損してしまうと思うので。

    とはいえ、どうぶつたちの優しくてほのぼのした世界観は壊さず、ファンの方の期待も超えていきたい、かわいい!と思ってほしい、驚いてほしい、と考えると、どんどんハードルは上がっていっているのも正直なところですが……。日々、頑張っています(笑)

    社長も制作するすべてのグッズに目を通して最終チェックしていますし、こだわりと愛情はお菓子と同じくらい込めています。

    ――グッズ化はあくまで声かけがあれば、なんでしょうか?

    どちらもですね。ただ、お声かけいただくことが多いです。

    クレーンゲームの展開も多いのですが、今はぬいぐるみだけじゃなくて本当にいろいろあるんですよ。ポーチにクッション、カトラリーに水筒…「こんなのもあるんだ!」と私も驚くことが多いです。

    全国でポップアップショップを多数開催してくれているのは「ヴィレッジヴァンガード」で、ここからも若い人たちに届いている実感はありますね。

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    Twitter: @vv__official

    「グッズの会社になりたいわけじゃない」あくまでお菓子メーカーであるこだわり

    ――これだけ人気を集めるとコラボの声かけもたくさんあると思うのですが、大事にしていることはありますか?

    ギンビスは「あくまでお菓子メーカーであること」はブレないようにしています。

    中心にあるお菓子の品質やおいしさにこだわるのが大前提。キャラクターを通して商品の魅力を伝えたいですし、お菓子を手にとってもらいたいのが一番です。

    グッズの会社になりたいわけではないので、業務量の意味でもそこは気をつけています。

    ――となると、断っているケースも多いんでしょうか。

    そうですね。いろいろお話はいただくのですが、現状すべては受けられていないです。

    ポップな色味やコロンとした丸い形など、パッケージのイメージからかけ離れないことも気を付けていて、そこを吟味してお断りすることもあります。

    多少パステルカラーや落ち着いた色味を使うことはありますが、まるっきり違う色にしたり、等身を変えたりなどは今まで一度もしていません。

    元々お菓子のファンでいらっしゃる方を大切にしながら、ファン層を広げられるように取り組んでいます。

    “推し”どうぶつに会いたい!

    ――どうぶつさんたちが今ここまで愛される理由はなんだと思いますか?

    今はSNSの力は大きいですね。どうぶつさんたちは元気な色味が目立ちますし、並べて写真を撮るととってもかわいいので集めたくなる。DMやメンションで写真を共有してくださるファンの方も多くて、いつも楽しませてもらっています。

    近年のレトロブームも追い風になり、本当に年代関係なく愛していただいている実感があります。

    メインのどうぶつさんは9匹いるのですが、“推し”がいる方も多いです。

    イベントやコラボカフェでキャラクターのグリーティング写真を撮れるチャンスは大人気で、みなさんどうぶつさんのシフトを確認して、グッズをたくさん持って会いに来てくださるんです。アイドルみたいですよね。

    ――“推し”カルチャーとの重なりも面白いですね。

    何よりも「たべっ子どうぶつ」というお菓子自体の魅力や親しみが一番だと思います。キャラクター自体ももちろんとてもキュートなんですが、「おいしい」「懐かしい」とつながっていることの意味はすごく大きくて。

    例えば、子どもの頃、お母さんやお父さんとどうぶつビスケットを見ながら「この動物なんだろう?」「英語でなんて書いてある?」なんておしゃべりした経験がある方も多いと思うんです。

    ただのおやつ以上に、幼い頃の温かい思い出や記憶と直結している……ロングセラーのお菓子だからこそ、キャラクターたちに愛着を感じていただけている部分も大きいのではないでしょうか。

    ――45周年を記念し、過去最大規模のイベント「たべっ子どうぶつLAND」が開催中です。

    どうぶつたちをモチーフにしたオリジナルメニューやさまざまなフォトスポットなど、たべっ子どうぶつの世界に浸れる空間になっており、幅広い世代の方に楽しんでもらえると思います。

    これまで商品化されていないものも含め、56種類のどうぶつを初めてグッズ化。アニバーサリーイヤーにふさわしい商品になっています。

    ――どうぶつさんたち、こんなにいるんだ!とびっくりしました。

    圧巻ですよね。パッケージの裏に描かれている子たちが、みんな飛び出してきました。

    たべっ子どうぶつ史上初のチャレンジ、360度のVRシアターも見どころです。お菓子メーカーとしては異例の最先端技術を使ったデジタルアトラクションで、ファンの方には新たな魅力を発見してもらえると思います。

    ――ますますアイドル感が!

    (キャラクターの)撮りおろし写真集やチェキ風のキーホルダーも発売されて本当にアイドルですよ!まさかこんな風に推していただけるとは数年前は想像していませんでした。 

    これからもお菓子メーカーとしてのこだわりを第一に、みなさんが喜んでもらえるグッズやイベントを展開していきたいです。

    「たべっ子どうぶつLAND」開催情報