映画「先生! 、、、好きになってもいいですか?」が10月28日に公開される。
累計発行部数570万部を超える大ヒットコミック「先生!」(河原和音)を原作に、高校教師・伊藤貢作を生田斗真、伊藤に恋する高校生・島田響を広瀬すずが演じる。
監督は「ホットロード」「アオハライド」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」など、10代の女子を主人公にした恋愛映画を多数手がける三木孝浩。来年には「坂道のアポロン」の公開も控える。
主に漫画を原作としたティーン向け恋愛映画は、この数年で増えており、興行収入10億円を超えるヒット作も多い。
「胸キュン」映画のパイオニアの一人、三木監督の考える、恋愛映画の面白さや可能性とは?
生田斗真と広瀬すず、安心感とピュアさ
三木監督と生田斗真さんのタッグは「僕等がいた」(2012年)に続く2度目。
「前作の撮影終了時、10年後くらいにまたラブストーリーやりたいね、と話していたんです。思ったより早く、その夢が叶いました」。
30代になった生田が挑むのは、生徒に想いを寄せられる高校教師・伊藤。正統派のラブストーリーへの出演は久しぶりだ。
「生田くんは座長としての立ち居振る舞い、主役として映画を引っ張っていく姿勢が本当に素晴らしい。自分の演技だけでなく、映画全体の中で自分はどうあればいいのか、広い視点で考えられる人。ヒロインの(広瀬)すずちゃんがのびのびお芝居できるよう丁寧に気遣ってくれて、絶対的な安心感がありました」
広瀬は原作の響にそっくり。「恋愛初心者」ながら伊藤にまっすぐ気持ちを伝え続ける。
「すずちゃん、僕はこの髪型が一番似合ってると思います。これがベスト!(笑)」
「彼女とお仕事するのは初めてですが、実は4年ほど前にオーディションで会ったことが。当時から飛び抜けてかわいくて強く記憶に残っていました。いつか撮りたいと思ってたら……あっという間に主役級に上り詰めてましたね」
形を変えた「ロミオとジュリエット」
約20年前(1996年連載開始)に描かれた作品は、教師と生徒の禁断の恋でありながら、スキャンダラスな視点はなく、誠実で真摯な物語。
スカートが長めできっちりしたデザインの制服をはじめ、映画全体にもどこかクラシカルな雰囲気がただよっている。
監督も、ストーリーの印象を「形を変えた『ロミオとジュリエット』」「抑圧された中に秘められた普遍的な恋心を描きたかった」と話す。
高校を舞台に描かれる2人の毎日には、大きな事件はない。だからこそ、「今時いないくらいウブ」な響のリアリティをどう演出するか、そのさじ加減には苦労したという。
「恋愛って、距離感じゃないですか。同じセリフでも強く言うのか、つぶやくのかでニュアンスが全然変わる。あいづちが『ええ』なのか『はい』なのか『うん』なのかでも違う」
「細かい部分のボリュームや言い回し、声の高さまで、現場で細かく役者と相談します。そこが一貫していないと、キャラクターとしての魅力がぶれてしまうので」
増える「胸キュン」恋愛映画たち
少女漫画を実写化した、10代女子向けの恋愛映画のヒット作は多い。
近年の興行収入ランキングを見ても「orange-オレンジ-」(32億円)、「ヒロイン失格」(24億円)、「ストロボ・エッジ」(23億円)などが上位にランクインしている。
人気と実績は明確にありつつ、その存在感ゆえに「同じような映画ばかり」とひとまとめに揶揄されることもしばしば。「胸キュン」映画のパイオニアとして、三木監督は現状をどう捉えているのだろうか。
「どうでしょうね? 増えるのは需要があるからでしょうし、実際楽しんで観てくれている人がこれだけいるのはありがたいことだと思います」
「もちろん一人の映画ファンとしてはさまざまなジャンルが盛り上がっていてほしいですが、僕は作り手としても観客としてもラブストーリーが大好き。やりがいはずっと感じています」
恋愛は、未成熟な人間が成長していく過程――作り手としての恋愛映画の面白さやコンセプトをこう話す。
「今まで物事を『自分』の一人称でしか考えていなかった子が、『あの人、私のことどう思ってるんだろう?』って相手の感情を考えるようになる。他者と向き合って、存在を意識することで人って成長すると思うんですよね」
「だから、恋がうまくいってもいかなくても、いいんです。その葛藤にこそ意味がある。結末だけを見て『付き合った』『フラれた』と簡単に言えたとしても、ひとつとして同じ恋愛はないと思うんですよね。人の成長の仕方が限りなくあるように」
原作と異なり、映画では伊藤と響が心を通わせる「片想い」の過程にフォーカスしているのもこれが理由だ。
原作者・河原和音からも「2人の思いが通じるまでを丁寧に描いてほしい」とコメントがあったという。
「いるだけでキラキラが溢れ出ている」
「撮る側の視点で言うと、かわいく魅力的な女の子が撮れることはやっぱり楽しいですよ」
広瀬だけでなく、「僕等がいた」の吉高由里子、「ホットロード」の能年玲奈(のん)、「青空エール」の土屋太鳳など、これまでもブレイク前後の女優たちをヒロインとして撮り続けてきた。
「本人も自覚していないと思うんですけど、今が旬の若い女優さんたちはキラキラが溢れ出ているんですよ。画面の中で何をしていても、そこに目がいってしまう輝き! この時期にしか撮れなかったものをすくいとれた、という喜びは毎作品ありますね」
映画はシーンの順序を大幅に入れ替えて撮影することも多いが、三木監督はできるだけ物語の序盤からラストにかけて「順撮り」していく。キャラクターの成長と役者自身の変化を重ね合わせるためだ。
「10代〜20代前半の役者は本当に成長が早いんです。こちらがビックリするくらい、撮影中に進化していく、表情も演技もよくなっていく。そこに立ち会えるのは本当に幸せなことですね」
「現場のこの感覚を、少しでもカメラの向こうにも届けられればといつも思っています。青春映画の楽しさややりがいは、ここかもしれません」