Updated on 2020年7月2日. Posted on 2020年6月17日

    今すぐ、何も知らず、5分間この曲を聴いてほしい。32歳男性が音楽をやめて選んだ道。ラストに訪れる衝撃

    32歳の男性が音楽をやめて選んだ道。「衝撃のラスト」を目撃してください。

    「とりあえず、コメ欄読まないで最後まで聴いてほしい」「ええなぁと思って聴いてたら、ラストマジか声も出なかった…」

    「Sai no Kawara」。YouTubeにアップされたそんなタイトルの楽曲がSNSを中心に静かに話題を集めている。

    YouTubeでこの動画を見る

    youtube.com

    ある男性の人生の1シーンを切り取ったようなリリックの、心地よいヒップホップ。楽曲としての完成度も高いが、さらにすごいのはその歌詞だ。衝撃のラストが待っている。

    「曲を聴いてほしい」というメッセージを頂きまして、聴いたんですが、最後に衝撃の展開が。 いただいたメッセージから察するに実体験のようなんですが、「えっ、あの人?」と思わず声が出てしまいました。 とりあえず、コメ欄読まないで最後まで聴いてほしいです。 https://t.co/7TeffcbXLo

    ええなぁと思って聴いてたら、ラストマジか声も出なかった… https://t.co/BIKa0FNQIo

    この中で歌われてる事も、これだけの歌が歌えるアーティストがそれだけで食ってけないのも、両方もどかしい。 https://t.co/66YX1QF8wq

    BuzzFeed Newsはこの楽曲とMVを制作したラッパー、トラックメイカーのcrystal-z氏に話を聞いた。

    (※以下、重大なネタバレを含みます。約5分の楽曲を絶対に最後まで聞いてからお読みください)

    32歳、音楽をやめ医学部を目指す

    仲間たちとシェアハウスで共同生活しながら、音楽活動を続けてきたある男性。30歳を過ぎ、音楽をやめて医学部受験を考え出すところから物語は始まる。

    32歳 あてのない仄暗い未来

    その先に光当てるのは自分次第

    目指してみようか 医学の道 それは茨の道

    開館から閉館まで図書館にこもり、予備校には通わず独学で猛勉強。模試では毎月のように自己ベストを塗り替え、成績は順調に上がっていく。

    そして迎えた初めての冬。センター試験では現役時代の点数も上回り、「悪くない手応え ゴールはもう目の前」と感じた。

    しかし、二次試験では東京の大学はすべて不合格。その翌年もまさかの全滅という結果になった。

    模試ではいつもA判定、ペーパーテストの点数だけで言えば問題ないはずなのに……。予想もしない大きな「壁」にぶち当たる。

    そして今の俺の持てる全てだした二次試験

    だけどまったく結果は出ず

    目標の東京の学校は全部

    その年もその次の年も全滅

    ペーパーができても越えられない面接

    模試の結果はいつもA判定

    でも合格発表では「えっなんで?」

    年齢のハンデ? 夢にさえ思わねえ

    ゴールテープごとずらされるなんて

    地方に進学したら、東京で生活する恋人(のちの妻)と別居を強いられてしまう――。

    葛藤しながら、地方大学の医学部に志望を変えて勉強を再開。3度目の挑戦で見事合格し、医学部に入学する。

    あれ、この話まさか……と思った矢先、女性アナウンサーが淡々と読み上げるニュース音声が流れてくる。

    医学部の入試で年齢などを理由に不合格にされたと主張する元受験生の男性が大学を提訴しました。

    34歳の男性は去年不合格にされましたが、その後、大学側が調査した結果、合格点に達していたことがわかりました。

    youtube.com / Via youtube.com

    男性は姿を消し、窓辺のスマートフォンに流れるニュース映像。横には積み上げられた石が

    そして画面は暗転。スマホをカバンの中に潜め、隠し撮りをしているような映像に。男性たちがしゃべる声が切れ切れに聞こえる。

    「33歳という年齢は」「大変申し訳ないと思ってますが」「年齢の問題で」「真面目でいらっしゃるから」「不正ではない」「これは不正ではないと思っています」「気持ちはよくわかります、せっかく受けていただいたのに」

    この物語は、crystal-z氏の実体験だ。

    「年齢差別」を受けた側から

    2018年、国内外で連日大きく報道された医学部の入試不正問題。

    東京医科大学をはじめ、順天堂大学、昭和大学、聖マリアンナ医科大学などが、女性受験生や多浪生に対し、大幅に不利になるような得点操作をし、合格人数を不正に抑えていた。

    時事通信

    医学部の不適切入試について記者会見し、頭を下げる順天堂大学の新井一学長(右)ら=2018年12月

    crystal-z氏はまさにその「差別」を受けた側、渦中にあった人物の一人だ。

    楽曲内にあるように、2019年12月に順天堂大学を相手取った訴訟を起こしている。

    東京医科大学の入試では、本来の合格点を大きく上回り、特待生合格の基準も超える点数を獲得したが、補欠ですらなく不合格に。こちらは訴訟ではなく、裁判外紛争解決(ADR)の形で協議を続けている。

    結末を知ってからもう一度聞くと、サビのリリックがそのヒントになっている。

    調じゃなくていいから

    才じゃなくていいから

    々めぐり、めぐり、繰り返し

    東京

    偉大(医大)なこの街

    楽曲タイトル「Sai no Kawara(“再”の河原)」……「賽の河原」は、「いくら続けても、あとからあとからくずされる、むだな努力のたとえ」(デジタル大辞泉)だ。

    何度も聞きたくなる、見たくなる仕掛けを

    MVのイラスト、アニメーションもすべて自身で手掛けた。

    窓の向こうには中央線と神田川を臨む御茶ノ水駅を思わせる景色(順天堂大学は御茶ノ水駅にある)。

    机の上にある参考書、「チャート式」は「青」から、より難易度の高い「赤」に途中で変わっている。

    長く聴いてもらえるように、楽曲の衝撃やトピックのことを風化させないように。

    一つ一つの言葉はもちろん、MVにも、何度も聞きたくなる、見たくなるたくさんの仕掛けを散りばめた。

    YouTubeのコメント欄で多くのユーザーが込められた意味を“推理”しているが、crystal-z氏は「まだまだ気付かれてないポイントがあります」と話す。

    それは「対岸の火事」ではない

    「当事者それぞれの人生の一大事であるはずのニュースが、対岸の火事として加速度的に消費されていく現在のあり方に疑問を抱いています。その流れを止めることは出来ないのかもしれませんが、抗うことはできると思っています」

    「当事者の思いを少しでも長い時間立ち止まって考えて頂く、そのための“イースターエッグ”です」

    キリスト教の復活祭で、子どもたちが探す色とりどりの“イースター・エッグ”。コンピュータやソフトウェアの世界においては「隠しメッセージ」を意味する。

    平等であるはずの大学入試という場で、明らかな年齢差別、女性差別があったという衝撃から丸2年。当時よく報道を目にし、強い怒りを感じていても、時間が経つにつれ忘れかけていた……という人も少なくないだろう。

    世間にとっては「過去のニュース」であったとしても、当事者にとっては現在進行形の戦いだ。

    気づいていないだけで、さまざまな社会問題の“イースター・エッグ”は、私たちの日常に潜んでいる。

    BuzzFeed Daily

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