東京駅構内に、ムスリム(イスラム教徒)向けの「祈祷室」が6月5日に開設します。増加する訪日外国人旅行者のニーズに応える施設です。
祈祷室は、丸の内北口改札の近くにある、「JR東日本訪日旅行センター」内にオープン。祈りの前に手足を清める「小浄施設」も設けられます。
ムスリム向けではありますが、宗教や宗派を問わず、礼拝の場所として利用できるようです。
利用者として見込むのは、急激に増えている東南アジアからの観光客。世界で最もイスラム教徒の人口が多い国インドネシアに加え、マレーシアもムスリムが多い地域です。
日本ではまだ聞きなれない「祈祷室」ですが、実は数年前から少しずつ設置が進んでいます。
BuzzFeed Newsは、鉄道会社が設置した「駅前祈祷室」の先行事例となる2箇所の利用状況を、南海電鉄とJR西日本に聞きました。
地下鉄・難波駅直結の商業施設「なんばCITY」は2014年9月、JR大阪駅の「大阪ステーションシティ」は、同年10月に祈祷室を設置しました。
ほぼ同時期にスタートした、2つの祈祷室。2年半経った現在、利用者はどちらも増加傾向にあります。
「なんばCITY」の利用者は、2015年度は月平均290人だったところ、2016年度は350人程度に伸びています。「大阪ステーションシティ」も、2014年の開設当時1日7〜8人程度だったところ、直近では日に20人ほどと、倍増しました。
ともに利用者の多くは東南アジアからの観光客。やはりインドネシア、マレーシアの人の利用が目立つそうです。
オフィスの多い地域にある「大阪ステーションシティ」は、近隣で働くムスリムのビジネスマンが継続的に利用しているケースもあると言います。
Wi-Fi環境の整備などに並ぶインバウンド施策のひとつとして位置づけ、宗教を問わず利用を受け入れています。絶対数としては少ないものの、キリスト教徒や仏教徒の方も訪れているそうです。
どちらにも共通していたのは「積極的にPRしているわけではないが、口コミや旅行サイト、海外メディアの記事などで利用につながっているようだ」ということ。
異なる宗教の生活習慣はなかなか想像しにくいですが、確実に求めている人がいるからこそ、利用者増につながっているといえそうです。
駅前やショッピングモールの「祈祷室」。2020年の東京オリンピックを控え、今後、さらに増えていくかもしれません。