「孤独死は嫌だ!」は「人生どうすればいいの!?」という心の叫び

    血縁関係でも、恋人でも、伴侶でもない人と一緒に住む。こんな“家族”の形を選んだ理由。

    独身者には正直他人事じゃない、悲しい「孤独死」のニュース。それなりの老後を過ごすには、2000万円貯めないといけないらしい。ああ、我々の人生は本当に前途多難ですね……。

    「孤独死したくない」「将来が不安すぎる」と夜泣き(?)していたひとり暮らしのアラフォー独身女性が行き着いたのは、オタク友達4人で助け合いながら一緒に住むという形でした。

    〈当たり前ですが、そもそも私たちは一生一緒にいられるとは思ってないんですよね。そこは家族や伴侶なんかの関係性とは違うところかもしれません〉

    〈今そこそこ元気で、利害関係が一致しているから手を組んでいる……という感覚で、「疑似家族」を目指しているわけではないんです〉

    血縁関係でも、恋人でも、伴侶でもない人と一緒に住む。こんな“家族”の形もありかもしれない……どころかこれから増えていくかもしれません。

    『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)の著者、藤谷千明さんに「友達同士で暮らす選択肢、オススメですか?」を聞きました。

    「孤独死は嫌だ!」の正体

    ――帯に「孤独死は嫌だ!」とありますが、明日は我が身という感じもあったのでしょうか。

    これは、孤独死そのものへの切実な恐怖というより、漠然とした将来への不安を凝縮したワードなんですよね。

    独身アラフォーがさみしさから感じている漠然とした巨大な不安であって、本当に孤独死をリアルに感じている人の切迫感とはまた別の感情なのではないでしょうか。もちろん、孤独死は誰にでも起こりうることなのですが……。

    「孤独死嫌だ!」「老後資金2000万円なんて貯められない」なんて言葉はそれこそネット上でもよく使われますが、あくまでキャッチーな要素であって……要は「人生、これからどうすればいいの!?」という心の叫びですよね。

    ――その「漠然とした不安」は、ルームシェアすることで軽減した部分はありますか?

    新型コロナの外出自粛期間は、人と住んでいるありがたみをひしひし感じました。

    家の中で誰かとちょっとした話をできるだけで精神衛生上よかったですし、誰かが体調を崩してもサポートできる。ひとりだったら不安でたまらなかったと思います。

    目指すのは「疑似家族」じゃない

    ――複数人で暮らすことで安定する面もありつつ、コントロールしにくくなる面もあると思います。例えば、家庭の事情や結婚で誰かが抜ける可能性もありますよね。

    遠くない将来、それは十分ありえますよね。不動産屋さんからも、ルームシェアはそれで破綻する人が多いから大家さんが渋るという話は聞きました。

    でもまぁ、今の家の家賃は21万円なので、1人抜けて3人でも払えない額じゃない。新しく誰かを探すか、一度解散するか、検討する期間くらいは大丈夫かなと思いました。

    当たり前ですが、そもそも私たちは一生一緒にいられるとは思ってないんですよね。そこは家族や伴侶なんかの関係性とは違うところかもしれません。

    今そこそこ元気で、利害関係が一致しているから手を組んでいる……という感覚で、「疑似家族」を目指しているわけではないんです。

    もちろん誰かが怪我や病気をしたらできる範囲で助けますが、老いや介護の範ちゅうになってくると話は別。

    行政サービスをフル活用して、一緒に暮らしていく可能性もありますが、誰かの介護を誰かが一生懸命する、ってイメージはないですね。ここが終の棲家、とはまったく思っていない。

    ……というか、本来は家族であってもバランスが崩れた時、助けが必要なときは行政や福祉に最大限頼れる環境であるべきですよね。だからこそ公助はちゃんと充実していてほしいです。

    ――「今、利害関係が一致しているから」というのはいい言葉ですね。例えば数年だけでもルームシェアして固定費を下げられればその後の人生の選択肢が増えるわけで。

    本当に! お金は大事ですよ。先ほどの「漠然とした不安」への対処として、一番大きいのはやっぱり生活にかかるコストが安いことです。貯金ができると精神がかなり安定します。それは間違いない!

    ひとり暮らしでもすごく頑張ればお金は貯められると思うんですが、切り詰めるのってしんどいじゃないですか。生活レベルを下げずに、お金に余裕が出るのは大きいです。

    とはいえ、「節約したい!」って一点だけでこの生活がうまくいくかっていうとそれはそれで難しい気もするんですよね。それこそ「面白そう」「楽しそう」なんて動機が複数ある方がうまくやっていける気がします。オタク友達って距離感はそのあたりがちょうどいいですね。

    「楽になる人がいる」今は細い道を、少しでも太く

    ――総じて、友達同士で暮らすという選択肢はオススメですか?

    そうですね。じゃないと続いてないと思います。

    別に結婚や血縁関係がよくないというわけではなく、逆にこっちが上位互換だと思っているわけでもなく、「こういう道もありますよ〜」をもっと広く伝えられればいいなと思っています。

    これが誰にとっても大正解! なわけでもないですし、いろんな暮らし方があった方がなんかいいなって。その時々のベターを選んでいくしかないですよね。

    「ルームシェア、自分もやりたいです!」と私に相談してくれた人はこれまで何人かいるのですが、その中に4人で住む物件を決めるところまで進んでいる人がいて。

    ――すごい! すでに後進が!

    うれしいですよね。「こういうのできるんだ」「ありだな」と具体的に思い描けたらやっぱり踏み出しやすいじゃないですか。この本も少しでも役にたてばと思っています。

    今はまだ、ルームシェアで借りられる部屋ってめちゃくちゃ少ないんですよ。体感的にはペット可物件よりも少ない(笑)。

    でも、こういう選択肢が広がっていくことで楽になる人は、絶対にいると思うので。

    まだまだ細い道ですが、実践する人が増えることで少しずつでも太くなっていけばいいなと思います。

    アニメやゲームでもユーザーが増えてジャンルが盛り上がったら、イベントやグッズなど、いろいろな「供給」が増えるじゃないですか。それを期待したいですね(笑)。

    【試し読み】 『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』の試し読みが公開されております。だいたいこのようなテンションで終始お送りしている本なので、興味のある方はぜひご覧ください。 https://t.co/XTvuwclPtp https://t.co/XTvuwclPtp