黒歴史と名高いmixi日記を読み返したら予想外にハタチの自分に励まされたよ

    タイトル一覧だけで殺傷力がすごい。

    mixi。

    私にとっては、クソ生意気で世間知らずで斜に構えてた大学入りたての頃、一番側にあったSNSだ。

    日記を書いて、紹介文を書いて、コミュニティを漁って、足跡を監視して、「マイミクになろ〜」って言ってた日々、遠い昔に感じる。

    就活する前にはもうTwitterに移行していた。もういつから開いていないんだろう。あんなに毎日見てたのにね!

    そんなmixiが過去の日記を読み返そう、というキャンペーンを始めた。

    うんうん、日記ね、書いてた書いてた。なつかしいな。

    と思ってたんだけど、フタをあけたら事態はどうもそんなノスタルジックな感じじゃなかったみたいだ。

    「なんだこの黒歴史」「日記のタイトルが並んでるだけで死んだ、ここより先に進むのは無理です」「マジで危険なのでみんな気をつけて」

    気付いた時には、先んじて勇気を持って重い扉をこじあけ、魔窟へ踏み入った人々によるうめき声がTwitterにあふれていた。

    いやいや、何があるのよ、そこに……。ブームに乗って、過去の日記を読み直しに行くことにする。

    いざ魔窟へ

    特設サイトから当時のメールアドレスをなんとか思い出してログインして、いきなり息が止まりそうになる。

    ヤバい。すでに負けそう、タイトルだけで。もう回れ右したい。一番ヤバさが漂ってるのは下から2番目ですね。

    まだ正気を保てそうな「みくしに手を出してしまいました。」をクリックする。初投稿っぽい。

    この2行だけで勘弁してください。いやー18歳。2行だけで「若い!!」って絶叫してしまう。

    みくし、って書くのが当時の私にはかわいかったのかな? 大した文章でもないのに「ww」の使い方にちょっと恥ずかしくなるわ……なぜ。

    読んで思い出したけど、そうだった、2008年3月、高校を卒業する直前にmixiを始めたのだった。周りに比べてもだいぶ遅かった気がする。調べてみると「mixi」が流行語大賞をとったのは2006年みたいだ。

    18歳以下はアカウントを作っちゃいけなかったのと(その前から持ってる子結構いたけど)当時の自分の交友関係は、高校の教室とケータイの中で完結していたのでこのオレンジの世界の中で話す必要性がなかった。明日の朝に学校でしゃべるわ、と思ってた。

    高校時代のブログは、友だち数人で読み合うだけのパスワード付きのやつだった。河合塾の自習室で、くだらないことをせっせと投稿してたよ……勉強サボってね。

    mixi、最初は何をどんな風に書けばいいかわからなかったなぁ。たった数十人でも、読む人が多すぎた。

    今考えると全然クローズドだけど、当時の私にはわりとパブリックな場所だったのだ。「友達」で一括りにするの、すごく難しかった。

    「死にたい」に死ぬ

    「死にたい」っていう背筋がざわざわするタイトルがあったので薄目でクリックした。えっ、もしかして、メンヘラめいたこと書いてるの? mixiで?

    バトン……そんなものもあったね……。もしかしてある世代より下は知らないのかしら。何か違う形で連綿と続いているのかな。

    半角カタカナもなつかしい。ガラケー時代は簡単に打てたんだよね。iPhoneに変えて打てなくなって、やだよ〜〜!!と思った記憶がある(半角カナはかわいい、という価値観)。

    さっきのヤバいタイトルのやつも、見てみたら中身はバトンだった。「やっぱりジブリ見ないのってだめなのか…」からあふれでるもの、すごすぎる。直視できない。声に出して読みたくない日本語だ。一般常識のように「知っている」ことを前提に語られる何かについていけなかったんだろう。

    歌詞とか本の一節とか死ぬほど恥ずかしい

    いろんな人が言ってるけど、歌詞の一節とか曲名をタイトルにしてるのマジで恥ずかしい。

    「桜の季節」「表参道26時」「冷えた僕の手が君の首筋に」「ねむるもりをとびこえ」

    いや、まぁ、内容についてはノーコメントにさせてください。

    あと自分のは、本のタイトルとか古典の引用も結構あってそれもヤバい。

    「ツミの対語は、ミツさ。蜜の如く甘しだ。」

    って太宰治「人間失格」の一節のタイトルを見つけた時は、物理的に本当に心臓が痛くなった。さすがに正気じゃ読み進められません!! ほんとにやめて!!

    ……ページを開いたら「人間失格」の実写映画を見てきた件で、生田斗真さんが超美しかった話とCGがショボくてがっかりした話しか書いていなかった。よかった。命拾いした。

    そんな風に日記を読み漁ってくらくらしていたら、各所から「mixiで本当にキツいのは紹介文」「昔付き合ってた女の子と出会ったころのてろてろしたメッセージが発掘されてマジでヤバかった」などの証言が寄せられた。

    すごいな、mixi。もはや遺跡や文化財めいている。「当時の人々はこうやって暮らしていました」レベルだ。

    黒歴史かわいい

    「黒歴史って勝手に運営に言われるのムカつく」「炎上マーケティングかよ!」って怒ってる人も見たけど、私にとってはこれ、紛れもなく黒歴史だわ。魔窟。直視するのにこんなにエネルギー使うと思わなかった。

    けど、そもそも黒歴史で当たり前だよね。人間は変化する生き物なわけで、恥ずかしくなって当然な気がしてきた。

    この数年間、何も変わってない、進歩してない気がしてたけど、mixiの中でぺちゃぺちゃ喋ってる私の世界は狭いし、考えも浅いし、知らないことが多すぎる。ちょっとでも前に進めているのかもしれない。

    バイトの時給が全然上がらないとか誰かと喧嘩したとか単位が足りないかも不安すぎるとか、本当にしょ〜〜もないことで悩んでぐずぐずしてて、いや当時の自分にとっては世界が崩れかねない大事なんだけど、今見るとハタチの私は情けなくてダメダメで、それでもかっこつけたがっていてかわいい。

    この時はこの時の精一杯で、全然嘘じゃなかった。今読むと恥ずかしいは恥ずかしいけど、それは消したいとかじゃなくて……なんだろう。かわいい。よかったね。そののぐだぐだは無駄じゃない。未来の私は結構ハッピーに生きてるから安心してくれ。

    会うの卒業式以来の子もたくさんいたのに、こんなに楽しいなんて、予想以上でした。

    どうもありがとー! ハタチおめでと! いつかみんなと仕事ができますように!

    これは成人式のあと。

    目の前で時代が加速していることを心の底から実感してる。この時代に生きててとてもうれしい。たのしい。

    就職氷河期なんてしらなーい! おじさんたちは、いまの若い子大変だねっていうけど、いいことだってたくさんあるのだ!

    帰ってきてまた缶ビール飲んでしまった。しあわせしあわせ。みんなもこうやってしあわせになればいいよ!

    これは就活が始まる前。

    なんか、いいな。元気出た。6年前の自分に励まされている。「いつかみんなと仕事できますように」って超いい言葉じゃん。

    2010年の自分を裏切らないように明日もがんばるぞ。「しあわせになればいいよ」!