兵庫・宝塚市の「手塚治虫記念館」で初音ミクとコラボした企画展が開催中です(10月23日まで)。漫画界の巨匠とミクがなぜコラボ? 現地で聞いてきました。
展覧会の正式名称は「初音ミク×手塚治虫展ー冨田勲が繋いだ世界ー」。
タイトル通り、昨年急逝した世界的作曲家・冨田勲さんをきっかけに生まれたものです。
「ジャングル大帝」をはじめとした手塚アニメの音楽を手掛けたことで知られる冨田さん。晩年は初音ミクとオーケストラやオペラのコラボレーションに積極的に取り組んでいました。
2012年、「イーハトーヴ交響曲」の中で「リボンの騎士」を演奏。主人公サファイアの衣装をまとったミクが登場したことが、初音ミクと手塚治虫ワールドの出会いでした。
8月31日は、初音ミク誕生から10周年。アニバーサリーイヤーの記念となる展示です。会場には大きなミクさん!
初期の設定資料も見られます。手塚治虫記念館でこんなにしっかり初音ミクの説明がある…!
見どころは、人気イラストレーターと手塚治虫作品のコラボビジュアルコーナー。全11点がオリジナル作品のイラストとともにずらっと並びます。
初音ミク×ユニコ(ちゃもーい)
初音ミク×リボンの騎士(柚希きひろ)
初音ミク×鉄腕アトム(ねこいた)
初音ミク×ジャングル大帝(ヒョーゴノスケ)
グッズコーナーにもここだけのグッズがたくさん。
手塚タッチのミクたちのシール、すごくかわいい!
9月23日には、初音ミクの生みの親であるクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之代表や、手塚るみ子さん(手塚治虫の長女)などを招いたトークショーも開催予定です。
どうしてミクとコラボ?
手塚治虫と初音ミク。きっかけがあるとはいえ、こうして手塚治虫記念館の企画展になるのは意外な気もします。
実は過去の展示を見ると、現代のサブカルチャーやポップカルチャーとのコラボ企画は珍しいことではありません。
これまでも「エヴァンゲリオン展」「忌野清志郎展」「ウルトラマンワールド展」などを開催してきました。
同館の矢野喬士さんは「手塚治虫が与えた影響を今の作品たちからひもとくことで、新たな層に興味を持ってもらえれば」と話します。
今回の企画は夏休みシーズンに合わせ若者層に届く企画にしたかったこと、8月31日が初音ミク誕生から10周年のアニバーサリーイヤーであることなどから決まりました。
ネットカルチャーの中で育ってきたミクに敬意を示し、すべての展示物が撮影可能になっています。「いくつかは撮影禁止にしようかという案もあったのですが、関係者で相談し、思い切ってすべてOKにしました」(矢野さん)
「大人になってまた手塚作品に触れてほしい」
企画の反響は大きく、初日は開館を待つ人の列が。関西圏だけでなく、東京や名古屋、遠くは北海道からやってきた人もいたそうです。
狙い通り、若者層も多く訪れています。記者が取材した日は、中高生のグループや親子連れも目立ちました。
矢野さんは「遠方のファンの方はもちろん、近隣の学生たちが訪れているのがうれしい」と話します。
「『小学校の時に来た』という子たちがあらためて足を運んでくれることがうれしいです。何か機会がないと、なかなかもう一度来ることはないと思うんですよね、近所だと逆に」
「『火の鳥』も『ブッダ』も、同じものを読んでも、大人になるとテーマの受け取り方がずいぶん変わるはずで、そこが手塚作品の魅力。また読んでみようかな、と手にとってくれる人が一人でもいれば」