お盆も過ぎた8月の終わり。ここは、まだまだ暑い日が続く京都です。
富子さん、85歳。趣味は野菜作り。
自慢の畑にはトマトやナス、かぼちゃ、しそ、ゴーヤなどの夏野菜が所狭しとひしめいています。
富子さんのもうひとつの顔は「tomico」。メルカリで野菜を販売するユーザー名です。
……と言っても、富子さん自身がメルカリで販売しているわけではありません。
「田舎の親戚から送られてきた季節のおすそ分けのように、梱包は母が、ご連絡は嫁がいたします」
この説明の通り、梱包・発送作業を娘の裕子さん、メルカリを使ったユーザーとのやりとりは孫の俊江さんがおこなっています。親子3世代で「おばあちゃんの野菜」を全国へ!
メルカリは若者だけのものじゃない
国内ダウンロード数5000万を超えたメルカリ。10〜20代のユーザーが多いのは事実ですが、もはや若者だけのものではありません。
「野菜詰め合わせ」の出品も、じわじわ増えているのです。
BuzzFeed Newsは、京都の片隅から全国に「おばあちゃんの野菜」を届ける3人の半日に密着しました。
「おばあちゃんの味」をそのまま
収穫は、暑くなる前の早朝からスタート。富子さんは、多品目を少しずつ育てています。
この日は俊江さんがお手伝い。ゴーヤ、こんなに大きくなってます。
ゴーヤって、中身赤くなるんだ!
モロヘイヤ、ツルムラサキ、赤しそ、かぼちゃ、ナス、きゅうり、冬瓜……バランスを見ながらどんどん収穫していきます。
梱包は家の土間で。その日の箱数を確認し、必要なものは袋詰めしていきます。
「立派な子やね〜」おしゃべりしながら和気あいあい。
わかりにくい品種はホワイトボードに書いてあります。
「野菜、メルカリで売ってみたらいいんじゃない?」
ちょうど1年ほど前、そう思い立ったのは俊江さんでした。1ユーザーとしてメルカリを使う中で「これで野菜も売れるかも」と考え始めたそうです。
一時は京都市内を中心に、定期購入を募っていましたが、小さな家庭菜園は天候や獣害で取れ高が大きく左右されます。継続的に販売するのは難しい現状がありました。
メルカリで都度出品する形式であれば、収穫量に合わせて箱数を決めることができます。
当初はなかなか売れませんでしたが、今は1日多い日は8箱ほど、平均して4〜5箱を出荷しています。体感的には3割ほどがリピーターだそうです。
注文者の多くは東京・神奈川・名古屋などの都市圏から。子どもがいる人も多く、頻繁に注文する人のなかにはベジタリアンの方もいるそうです。
「お子さんと一緒に、野菜を見て触って楽しんでくれている方もいます。大きさが違うね、とか、ここにとげとげがあるね、とか。スーパーの野菜とやっぱり違いますもんね」(俊江さん)
写真の80サイズで7〜12品の野菜が入ります。
「1年やってきて、詰めるのすっごくうまくなっちゃった」(裕子さん)
「本当にすごいんです、パズルみたいに目いっぱい詰めるんですよ!」(俊江さん)
真ん中の6つ、形も大きさも違いますが、全部ナス。品種ごとに適した食べ方があります。なので……
わかりにくいものには、レシピを書いた説明書きを貼りつけます。丁寧…!
例えば、かぼちゃ「南部一郎」はこんな感じ。おすすめの食べ方が書いてあるとやってみたくなりますね。
最後に、手書きのお品書きを封入して完成。本当に「実家から届いた荷物」みたいです。
1年続けてきて、手応えはどうでしょうか?
「リピーターの方がだいぶ増えてきて『この野菜がおいしかったです』なんてコメントをいただけるのは、とてもありがたいです。何より、おばあちゃんが生き生きしてるのがすごくうれしい!」(俊江さん)
「好きで作ってる野菜をね、こうやっていろんな人に喜んでもらえるのはうれしいね」
富子さんも笑顔でこう話します。
「野菜って放っておいたら大きくなっちゃうし、食べきれなくても取らなくちゃいけないじゃない。今までどうしても捨てちゃってたんだけど、こうやって食べてもらえると張り合いがあるね」
「私ももう年だから、そんないろいろ作れんけど……。でもおいしいものとか珍しいものを食べると『これ育ててみようかな』ってなりますね。そう思って新しくやってみたものもありました」
「これからもできる範囲でね、やっていければいいなって思います」