「カタコト感がかわいい」海老蔵さんもメロメロ 元大関琴欧洲、癒やしのブログの秘密

    ひらがなだらけの鳴戸親方(元大関琴欧洲)のブログが「癒やしのパワーがすごい」と話題に。実はブログ歴10年の大ベテラン。どんなことを考えて書いてるの?

    「癒やしのパワーがすごい」ある漫画の一コマをきっかけに話題になった、鳴戸親方(元大関琴欧洲)のブログ

    ひらがなを多く使ったゆるいブログ、確かにかわいい……。ちょっと気の抜けた写真もいい具合にキュートです。

    こちらがきっかけになった漫画「波よ聞いてくれ」(4巻)。

    「琴欧洲のブログを読んで下さい、下手なセラピーよりホンワカしますよ」の力強さよ! 9月末にこのコマを紹介したツイートは4万RTを超えています。

    市川海老蔵さんがブログで紹介したことでさらに広がり、一時はアメブロ急上昇ランキング1位に。

    最近ハマりだしたのが琴欧洲さん

    今の鳴戸親方のブログ

    言葉のカタコト感が失礼ながら可愛い。

    そして 内容もなんか面白い。

    唐揚げ40キロってー

    なに? それーーーーーーー?!

    そして

    40キロ むりでした

    とか、

    なんかニュアンスが本当つぼる。

    1日で100万アクセス以上を集め、相撲ファンのみならず、多くの人が注目しました。

    2014年に惜しまれながら引退した鳴戸親方こと元大関琴欧洲。今年4月に独立し、鳴戸部屋を開いたばかりです。

    実はブログ歴約10年のベテラン。最初は「日本語の勉強をするため」だったそうです。ブログを書く時に考えていること、「癒やしのパワー」の秘密、親方としてのこれから。九州場所直前に聞いてきました。

    からあげ、焼肉、お寿司…「みんなごはんの話が好き」

    ――Twitterで話題になり、市川海老蔵さんのブログで紹介され、トレンドワードにもなり……反響はどうご覧になりましたか?

    びっくりしましたよ! ちょうどテレビ番組でうちの部屋のことが紹介されたタイミングだったのもあって、24時間で(アメブロ読者数が)5000〜6000人増えました。「何があったの!?」って。ヤフーニュースまで載ってたんですよね? すごいですね〜。

    ――特にリアクションが大きかった記事はどれですか?

    からあげかな? あと寿司焼肉。みんなごはんの話が好きですね。

    お寿司屋さん、弟子たちを連れて行ったんですけど、好きなもの頼んでいいよって言ったら「炙り大トロ12貫」「あ、それサビ抜き10貫追加」とかで大変でした(笑)。

    ――すごい量! お店が心配になるレベルです。

    大丈夫!「すしざんまい」だから(笑)。

    ――ごはんといえば、Twitterでもおいしそうな写真があがっていますね。

    部屋で毎日食べているごはんですね。お相撲さんの食事は1日2回、昼と夜、ちゃんこ鍋とおかずとごはんが基本です。ごはんはどんぶりで。

    皆さんこんにちは 今日のちゃんこシリーズ 豚味噌ちゃんこ、厚焼き玉子、キュフテ(ブルガリアのハンバーグ)、サーモンタルタルとアボカドのサラダ、焼きナス、生プルーンでした。 キュフテにはヨーグルトのソースがよく合います! サラダには… https://t.co/pHKqZcvZct

    ――お米はどれくらい食べるんですか。

    1カ月で40〜50キロくらいかな。1食あたり20合炊きます。

    ――にじゅうごう!

    でも少ないですよ、弟子まだ4人しかいないですからね。佐渡ヶ嶽部屋なんて40人いたから、この10倍です。

    ――ブログやTwitterでこういう生活が垣間見えるのも楽しいです。

    現役の時は、場所前だと稽古ばかりだから全然書くことなかったですね。巡業中はできますけど。今のほうがブログに書けることが多いです。イベントとかパーティとかいっぱいありますから。

    「癒される」ひらがなの秘密

    ――ブログ開設から来年で10年ですが、始めたきっかけは覚えていますか?

    お相撲さんのプライベートってなかなかファンのみなさんは知りえないですし、興味があるかなと思って。もうひとつは、日本語を勉強するため。その2つでした。

    ブログを始めた場所(2008年5月場所)で初優勝。縁起がいいなって思いました。もう10年かぁ。

    ――ひらがなが多くて「癒される」と好評ですが……。

    本当は簡単な漢字なら書けるんだけどね。

    ――え、そうなんですか!

    はい、最初はひらがなしか書けなかったけど、今は少しなら書けます。

    だんだん日本語できるようになってきた時、もう少し漢字入れた方がいいかなと1回変えてみたんだけど、間違えることが多くて。「ひらがなかわいい」と言ってくださる方もいらっしゃるので、そのままにしています。

    漢字、手で書くのは今も苦手だけど、小学生で習うような簡単なものや相撲用語、四股名なら書けるかな。

    ――コメント欄も、本文に合わせてひらがなが多いですね。

    そう、みなさん優しいです。コメントはちゃんと読んでいます。お会いした方に「ブログにコメントしてます」って言われると、名前を聞いてるのですが、そんなに数ないから結構覚えてますよ。100人いたら覚えられないと思うけど、まだわかります!

    ――これだけ長くブログを続けられたコツはなんですか?

    無理しないこと。頑張らない。あと、勝ち負けに関わることを書かない。「勝ちました」「負けました」を毎回報告していくと、しんどいですから。

    「相撲 は ぼくの 人生 いままで も これから も」

    ――これまでたくさん書いてきた中で、記憶に残っているエントリはありますか。

    やっぱり、引退の時かな。今まで書いた日本語の文章で一番長いと思う。引退の会見での言葉ですが、ファンの皆さんに伝えたいことを2〜3日は考えました。

    ――「もう からだ きもち げんかい」……引退にあたっては、前々から悩んでいたのでしょうか?

    迷わなかったです。すぐに決めた。というかね、直前まで全然引退する気はなかったです。ゼロ。

    怪我から復帰して、またこれから頑張ろうと土俵に戻って、でも勝てなくて、精神的にダメになっちゃった。関取には残れたけど、自分が力士としてこれからやっていくことを見失ってしまったんです。ただやってるだけになってしまった。

    「続けた方がいいよ」といろんな人に言われましたけど、自分の中ではもう終わりだと思いました。勝負にこだわれなくなったら、相手にも失礼ですし、土俵にいる価値がないなって。

    怪我した時は、辛かったですね。痛みもそうだけど、部屋から出られないのが辛かった。何日も家にいると、いろいろ考えすぎてしまって頭がおかしくなりそうだったな。

    ――引退を機に「もう相撲から離れよう」とは思わなかったんでしょうか。

    思わなかったね。だって好きだから、相撲は。相撲が嫌になったわけじゃないから。

    これまでもこれからも、相撲が自分の人生だと思ってます。全て、と言っても過言じゃない。人生そのものです。

    何世紀の話? 相撲界に残る非合理

    ――佐渡ヶ嶽部屋の部屋付き親方を経て、今年4月に「鳴戸部屋」の師匠として独立しました。心境は変わりましたか?

    全然違います、責任感が。社長、経営者ですからね。過去には、ビジネスがうまくいかなくて閉鎖した部屋もあるくらいですから。

    部屋付きの時は稽古だけだったけど、自分の部屋持つと、マネジメント、スカウト、地方場所の準備、パーティやイベントへの出席……全部やらないといけなくて忙しいです。昔は稽古のことだけ考えていればよかったので、今考えるとラクでした(笑)。

    ――現役の頃から「いつか自分の部屋を持ちたい」と考えていたのでしょうか。

    その気持ちは関取はみんなあると思いますよ。成果を出した、限られた人にしか許されないことですから。

    先代の佐渡ヶ嶽親方には、22歳で大関になった時に「独立していいよ」と言われたのですが、正直当時は「え、今!?」って思いましたね、これからまだまだやるのに? って(笑)。

    今振り返ると、そうやって先の道を示してくれたのはありがたかったなと思います。

    親方としてやりたいこと、変えたいこと、弟子に伝えたいことは、たくさんあります。

    僕ね、日本に来て相撲始めた時、ショックだったんですよ。

    ――ショック?

    ずっとアマチュアでレスリングをしていて、プロの世界ってどんなだろう? とわくわくして来日したのに「これがプロ?」ってショックだったんです。

    日本語が一言もわからず来日したこともあり「この稽古にはこんな意味がある」と教えてくれる人がいなかったので、一つ一つの稽古の意味が理論的にわからなかった。とにかく根性だけで過ごしました。根性は大切ですが、それだけでは絶対に強くなりません。

    相撲界では「稽古して食べて寝れば強くなる」って、それ何世紀の話?みたいな指導が今も平気でまかり通ってる。

    今、プロスポーツの世界では、体のケアして、休みもちゃんと取って、メンタルトレーニングもして……って当たり前じゃないですか。ただがむしゃらに稽古して、よく食べてよく寝れば強くなるわけではない。

    大好きな相撲が、これからもずっと愛されてほしい。だからこそ、よいものは残しつつ、近代的なプロスポーツの常識もうまく取り入れて、今の若い人に合った理論的な稽古をしていきたいです。

    その分、結果出さないとね。そうじゃなきゃ「ほら、違った」って言われてしまうので。

    「相撲の未来は、正直厳しいと思います」

    ――親方として、一番やりがいを感じる瞬間は。

    そりゃあもう、弟子が勝ってくれること。7月の名古屋場所は4人とも勝ち越して、嬉しかったですね。

    いい時はしっかり褒めて、ダメな時はダメ出しして、負けた取り組みも一緒にビデオを見て分析までちゃんとやる。「バカヤロー!」って怒鳴るだけじゃなくてね。

    弟子たちにはもちろん力士として強くなってほしいですが、10代の多感な時期ですから、何よりまず人間的に成長してほしい。これからの人生をよくするために、親方に言われたとおりにやるだけじゃなくて、自分で考えて動けるようになってほしいです。

    ――親方としてのご自分はどうですか?

    まだ途中なので……どうでしょう。地方場所をすべて乗り越えて、1年間回ったら少し先が見えてくるかな。

    ――親方、そして鳴戸部屋のこれからの目標はなんですか。

    部屋として第一の目標は、関取を出すこと。弟子が勝っていくのは本当にうれしいです。

    相撲の未来は、正直今すごく厳しいと思います。日本全体で子どもが少なくなってる上に、野球と相撲しかなかった時代はとっくに終わってますからね。

    でも、僕は相撲が大好き。人生を懸ける価値があると思ってる。

    もっと多くの人にそう感じてもらえるように、よさを知ってもらえる機会をつくらないといけないですね。力士のことを知らなければ、土俵が身近になければ、「相撲やりたい」とも思わないでしょうし。

    実際、うちの4人の弟子たちは全員相撲未経験です。空手、ボクシング、柔道、レスリング……それぞれのバックグラウンドがあって、スカウトでこの世界に導きました。

    弟子は来年もまた増えます。4月に来るのは15歳の子かな。うちの弟子は、みんないいこです。

    稽古場も今は仮のプレハブですが、1年半後にちゃんとした部屋がこの近くに建つ予定です。そこからまた、新しいスタートですね。

    (※ 10月23日、東京・墨田区の鳴戸部屋にて)

    BuzzFeed JapanNews