ベビーシッターマッチングアプリの大手「キッズライン」は6月4日、性犯罪対策のため、男性シッターへの新規予約を一時停止したと発表した。
実質的に男性シッターの“締め出し”にあたると、ユーザーを中心に非難の声が相次いでいる。
保育時に起きた性犯罪
きっかけは、昨年11月にキッズライン利用者間で発生した性犯罪事件。
同社に登録していた男性サポーター(シッター)が、保育中の男児にわいせつ行為をしたとして、強制わいせつ容疑で4月に逮捕された。
報道を受け、同社は5月3日、サポート体制の強化、経歴チェックを登録後も定期的に実施するなど、再発防止への取り組み強化を発表していた。
性犯罪は「男性により発生する傾向が高い」
6月4日の発表は、安全面強化のための追加の対応となる。
社内に設置した安全対策委員会や、専門家と協議した結果という。
5月3日に弊社よりお知らせをさせていただきましたが、過去に登録していた男性サポーターが逮捕されたことを重く受け止め、様々な安全管理の対策のみならず、性犯罪撲滅のためにも、社内に安全対策委員会を設置し、専門家とも度重なる協議を重ねてまいりました。
弊社としましては、国や自治体との性犯罪データベースの共有が実現することや、安全性に関する充分な仕組みが構築されるまで、また、専門家から性犯罪が男性により発生する傾向が高いことを指摘されたことなどを鑑み、男性サポーターのサポート(家事代行を除く)を一時停止することといたしました。
男性保育者に困惑の声
登録している男性シッターにも突然の通知だったという。
わいせつ事件の発生から半年以上、逮捕から1ヶ月以上の時間がありながら、個別にシッティングの安全性を向上しようという動きはなく、「男性である」という理由での一律停止であることにも困惑が広がっている。
「なんの事前連絡もなく、唐突にメールを送られてきた」
「事件があった以上は何かしらの対策をしないといけないのは理解はしています。でも、それが全ての男性ベビーシッターを処分するような対応でいいのか」
「早急に対応するなら全てを切るのが一番早いかもしれない。だったら、なぜ、報道が、いや、事件が発覚した時点で対処しなかったのか!」
「言ってることはわからなくもないが、マジで偏見すぎる…」
「もっとしっかりした理由で説明してくれないと男性シッターのみんな納得しませんし、残酷すぎます」
性差別では? ユーザーからも非難の声
「一時的」とうたっているとはいえ、男性シッターを一律で締め出すこの対応に、ユーザーを中心に多くの非難の声が上がっている。
「自分たちの審査やシステムで排除できないから統計的差別をしますということか」
「男性だから犯罪予備軍なのか、育児は女性がしろということなのか」
「犯人以外の、真面目にやっていたはずの男性保育者を貶めているように感じる」
「素晴らしいシッターさんが属性だけで区分けされてしまうの、絶対おかしい……」
「一概に《男だから》というのは、個人的には納得がいかない」
「結婚後の退職率が女性の方が高いので、男性のみ採用しますとか、医大への得点に下駄履かせますもOKなのでは?」
「子供にとっても良い選択とはとても思えない」
「利用者が求めてるのはシッターの信頼性のはず 企業としてするべきは、男性一律排除じゃなく安全性の向上」
不安は当然、でも…
「男性保育士に女児の着替えをさせないで」「オムツ替えに抵抗がある」
これまでも、例えば保育園で男性保育士が携わることに反発する声はあった。現場ではどのように向き合ってきたのだろうか?
男性保育士らの任意の集まり「東京男性保育者連絡会」の事務局長、山本慎介さんは以前、BuzzFeed Newsの取材にこう答えている。
「親が男性保育士のことを不安に思う心理は当然」
「不安にさせるような事件が起きているのは事実で、保育園の安全性を確立することが大前提」
その上で、性別が異なるという理由だけで男性保育士を子どもから引き離すことが、子どもに「保育は女性の仕事」というジェンダー観を植え付けることを危惧した。
「(男性保育士に対して)漠然とした不安もあるでしょうし、なかには保護者のつらい体験や理不尽な経験から生まれた不安もあるかもしれません。それは、悔しいけれど、自ら好んで持つようになった感情ではないですよね。不本意に植え付けられてしまった感情や価値観を、子どもにも植え付けたいでしょうか?」