「話題になってるのは知ってるけど…」 聖地・飛騨の人々は『君の名は。』を見ていない?

    最寄りの映画館は隣の県!

    公開から約1カ月経ち、興行収入100億円超え目前の「君の名は。」。物語の舞台になっている飛騨地方の人々は、聖地巡礼で訪れるファンを歓迎しつつ、1つ大きな悩みを抱えている。

    それは……「飛騨には映画館がない!」

    飛騨地方の中核となる飛騨市と高山市には2016年夏時点で映画館が1つもない。地域内最後の映画館だった「旭座」(高山市)は2014年に閉館した。

    Twitterでは、地元の人が自分の住む地域が映画の舞台になっていることを喜びつつ「飛騨が舞台なのに映画館ないから見れん」「富山まで行かないと」などと嘆く声も見られる。

    飛騨から最も近い映画館は、隣県・富山県の「TOHOシネマズファボーレ富山」で、車で1時間半ほどの距離だ。

    ネット上では「飛騨で見たいなあ」「上映会があればいいのに」などの声もあがっている。

    「話題なのは知ってるけど」

    ネットユーザーだけでなく、飛騨市図書館も市民の声を代弁し、TwitterやFacebookで自虐ネタを投稿している。

    こんにちは。「君の名は。」ブームにあやかっている飛騨市図書館です。 悲しいときー(悲しいときー)「こんなにブームになっているのに、飛騨に映画館がなかったときー」

    \比較的近い!映画館ランキング/

    TOHOシネマズファボーレ富山【1時間22分】

    TOHOシネマズ高岡【1時間36分】

    シネックスマーゴ【1時間39分】

    ユナイテッド・シネマ【1時間40分】

    イオンシネマ各務原【1時間45分】

    イオンシネマ金沢フォーラス【1時間45分】

    ※飛騨市図書館を出発地点とした場合。所要時間はgoogle mapによる。有料道路使用。(9月9日のFacebook投稿より)

    司書の堀夏美さんはBuzzFeed Newsの取材にこう話す。

    「そうなんですよ、近くに映画館がなくて……。なので地元の人は、話題になっているのは知ってるけど、まだ見てないという人も多いですね」

    劇中では、同館をモデルとした図書館が登場しており、「君の名は。」を見たファンが早速“聖地巡礼”として訪れている。公開直後は1日数人程度だったが、9月の週末の撮影・見学者は1日200人以上にもなっている。

    「県外からたくさんの人に来ていただいていますが、みなさんマナーを守ってくださってありがたいです。住民の方からの苦情も今のところありません」

    「町がにぎわうのはうれしいこと、たくさんの人に来てほしい」

    もうすでに出回っていますが、図書館よりお願いです。君の名は。効果すごい((((;゚д゚))))アワワワワ

    ユーモアたっぷりに歓迎の意とマナー向上を促す注意書きも話題に。「館内を撮影していいものか迷っている人が多かったので制作した」とのこと。

    市民向け上映会の可能性は?

    飛騨市の公式観光サイトでも「君の名は。」の登場スポットをめぐるおすすめコースを紹介している。コラボポスターも制作するなど、市を挙げた応援体制だ。

    飛騨市役所観光課の砂田貴弘さんはBuzzFeed Newsの取材に対し、「はっきりと数は把握していないが、観光客の数は明らかに増えている」と映画公開後からの手応えを話す。

    市が無料開放している駐車場には、北海道から九州までさまざまな地域のナンバーが並ぶ。9月16日からスタートしたパネル展にも休日には200〜300人程度が訪れているという。

    「君の名は。」の舞台として飛騨地方が描かれていることは、事前には知らされておらず、試写会段階で配給会社である東宝から案内があったそうだ。

    実際に作品を見たところ「見覚えのある景色が予想以上に多かった」。

    「ここまで描かれていれば見学に来る人もいるのでは」と“聖地巡礼”ルートの制作を始め、公式サイトで9月初めに公開した。


    観光客向けの施策は積極的に展開しているが、地元の人に届ける手段はないのだろうか。

    「映画館へのアクセスが悪いことは市としても認識してます。公開前から東宝さんに何らかの形で上映できないかとおうかがいはしているのですが、なかなか……」


    飛騨市の都竹淳也市長のFacebookページを見ても、声掛けは難航しているようだ。

    公開前からずっと交渉しているのですが、結構難航してます。原則、劇場優先なのと、貸し出すフィルム確保の問題のようです。(9月10日)

    飛騨市内、飛騨地域ではまだ観れていない方が多いのですが、上映会がなかなか難しい状態なので、別のことを考えたいと思います。(9月19日)

    新海誠監督は公開前、岐阜新聞の取材に対し、「岐阜県、飛騨の皆さんには劇場で近くの町の風景を感じてほしい」と話していた。飛騨の人々の気持ちは届くのだろうか。


    劇中で登場したスポットの実際の写真