どこへ行っても、ハロウィン一色ですね! オレンジ色のかぼちゃのサインを見ない日はありません。
この数年で季節の定番イベントとして一気に存在感が増している気がしますが、考えてみると、一体いつからこんなに浸透していたのでしょうか。
国内ではまだハロウィンという言葉が聞きなれないかなり早い段階から、関連イベントを大々的に展開していた施設の1つが、東京ディズニーランドです。
東京ディズニーランドで初めてハロウィン関連イベントを開催したのは、今から19年前の1997年。
消費税率が3%から5%に引き上げられ、映画では「もののけ姫」が大ヒット、月9では「ラブジェネレーション」を放送していた年です。け、結構前に感じますね……?
そんな時期から、映画や小説の中の海の向こうの行事を日本人向けにアレンジし、レジャーにしていたディズニーランド。日本のハロウィンを牽引し、独自の文化に育てた存在と言っても過言ではありません。
20年近く続き、ファンの間では定番となっているディズニーのハロウィンイベント。その傾向やトレンドを見ることで、日本のハロウィンの未来が分かるかも。
ディズニー専門メディア「dpost.jp」を主宰する宮田健さんに聞きました。
東京ハロウィンの特徴は?
まずは歴史を振り返る前に、素朴な疑問から。
ハロウィンと言えば、やっぱり本場は欧米なのでは? 海外に比べたらまだまだ、なんでしょうか。
「実は、各国のパークの中で一番盛り上がっているのは東京なんです。海外のファンから『東京は派手でグッズも多くて羨ましい!』という声が上がるくらい」
「そもそも、クリスマス以外のシーズンイベントにこれだけ注力しているのは日本だけ。欧米にすでにあるものを輸入したのではなく、日本向けに“魔改造”した独自の文化が今のディズニーのハロウィンなんです」
2000年から本格的に
そんな日本ならではの“魔改造”の歩みを振り返りましょう。
東京ディズニーランドで初めてハロウィンイベントを開催したのは1997年。当時は10月31日のみの1日限定イベントで、仮装パレードなどを実施していました。
その後、2000年には10月の1カ月を使ったイベントに“昇格”。2003年からは会期が9月からになり、大幅延長しました。
2016年は9月9日から10月31日までの開催となっています。
ハロウィンシーズンの来園者数は、不動の1位であるクリスマスに次ぐ2位。日本全体のトレンドに先んじて、ハロウィン人気の傾向が出ていたようです。
日本全体で見ても、ハロウィンの市場規模はこの数年に急速に成長しています。2015年は前年比11%増の1220億円と、季節イベントとしてはバレンタインデーを抜き、クリスマスに次ぐ2位になりました。
宮田さんによると、特別仕様のショーやパレードが本格的に始まったのは2000年前後。
ハロウィン用のコスプレ衣装メーカーは、売り上げが急激に伸びたのは「この3〜4年ほど」と話しているので、やはり世間一般の流行よりもかなり早い段階から力を入れていたことがわかります。
「世間的に盛り上がり始めたのはこの数年のようですが、東京ディズニーリゾートでは20年近く続く定番イベント。切り口はすでにマンネリ化している印象さえあります」
仮装トレンドは「よりマニアックに」
世のハロウィンの華は仮装。コスプレした若者たちが渋谷センター街に集うお祭りのような喧騒も、もうすっかりおなじみになりました。
東京ディズニーリゾートでは、たった1日の開催だった1997年から仮装OK。その後、認知拡大や利用者の増加で、大人が仮装できる期間は2005年から指定日のみになりました(小学生以下は毎日)。
この数年は、ハロウィン期間の最初と最後の1週間ずつを、コスチュームやメイクを含めたフル仮装可能な日として指定しています。
一般的なハロウィンの仮装と異なるのは、ディズニーに関連するもののみを対象としていること。作品に登場するキャラクターだけでなく、パークでのショー/パレードの衣装も可能です。
宮田さんは仮装トレンドとして「よりニッチな、マニアックなキャラクターを探す傾向がある」と話します。
「定番イベントとなり、みんなが知らないもの、やらないものを選んだり、新作をいち早く取り入れる“ネタ選び”が重要になってきた。ニッチなものをあえて選択することで、キャラへの愛、ディズニーへの愛をより深く示すような意味合いでしょうか」
その結果として、今年はパーク側が初めて詳細な「仮装対象作品」リストを公開しました。マイナーな作品になればなるほど「この仮装はしていいか」を問い合わせる声が後を絶たないからです。
リストには、宮田さんが見ても「聞いたことがないマイナーな作品がいくつもある」そうです。ゲーム「キングダム ハーツ」や映画「スター・ウォーズ」シリーズなどファン以外が見ると「そうか、これもディズニーになるんだ!」という名前も。
しかし、仮装となると本場の海外の方が本格的なのでは……?
「意外にそんなことはないんですよ。海外パークは、テロ対策の意味で、持ち込めるアイテムや着用できるものの規制が厳しいのが大きいですね」
顔面を覆い隠すマスクの着用、銃や剣を模した武器の持ち込みなどが禁止事項になっており、キャラクターによってはフル仮装が難しくなってしまいます。
日本でも昨年、熊本県でフルマスクとチェーンソーで“仮装”した男が通報される事件がありました。テーマパークだけでなく、公の場所でも何らかの規制をかけるケースは出てくるかもしれません。
なりきり、二次創作
「日本の場合、コスプレ文化の素地があるのか、衣装やアイテムの完成度を高め、キャラクターになりきる方向の仮装が比較的多い気がします」
「海外では持ち込み規制の影響もあり、キャラクターをイメージした色やモチーフをちりばめるタイプの“二次創作”的な仮装も目立ちます」
「今の仮装は、マニア化、先鋭化の傾向がありますが、これからは創作要素が含まれるものがさらに増えていくかも。定番のキャラクターでもいろいろな形で工夫して表現できそうです」
ハロウィンに続く“日本文化”になるのは
ハロウィンがここまで盛り上がった背景に、欧米のカルチャーを日本向けにアレンジしたディズニーの功績があると仮定すると、次に開拓する文化は?
宮田さんが一番にあげるのは「イースター」。東京ディズニーランドでは、2010年にイースターを冠したイベントが初めて開催され、2014年からは4〜6月の季節イベントとして定着しています。
「本来の宗教的な文脈では、イエス・キリストの復活を祝う『復活祭』ですがディズニー・イースターでは、『春に行われるうさぎとたまごをモチーフにしたお祭り』程度にデフォルメされています」
「ハロウィンの時と同じように、一般的な小売店でも関連したお菓子やグッズを見かけることが年々増えている印象。春先にイースターを銘打ったキャンペーンをする企業も出てきています」
「ほかに個人的に注目しているのは、アイルランドのお祭り『セントパトリックス・デー』や南米の死者を弔う祝日『死者の日』。日本人には馴染みが薄いものの、緑のものを身に着ける、カラフルな骸骨を飾るなど、視覚的にまねしやすい要素が多いです。『死者の日』は2017年冬公開予定の映画『Coco』のモチーフでもあるので、日本でも大きく取り上げられるかもしれません」
ハロウィンに続く“日本化”するお祭りは一体?