河出書房新社は7月10日、季刊文芸誌「文藝」2019年秋季号を重版すると発表した。「文藝」の重版は、2002年以来17年ぶりだ。
特集は「韓国・フェミニズム・日本」。
一人の女性の人生を描いた『82年生まれ、キム・ジヨン』がベストセラーになるなど、日本でも注目を集めつつある韓国文学。現在の隣国の文学とフェミニズム的な視点にフォーカスし、日本文学とのつながりを探ろうという試みだ。
特集に短編を寄せた作家陣10人のうち、半分の5人が韓国人作家。日本の文芸誌で海外の作家をこれだけ取り上げること自体が、まず珍しいという。
チャレンジングなテーマと内容が発売前からネットを中心に話題に。
発売直後から「いくつか書店を回ったけど売り切れだった」「Amazonで予約したのに、入荷見込みなしになって予約取り消しに」など、入手できなかった人の声が多く見られた。
一度は「増刷しない」と発表していたものの、発売から5日で紀伊國屋書店での全国消化率が76%を超えるなど、売れ行きも好調であることから重版が決まった。
売り切れ続出「ありえない売れ行き」
河出書房新社の広報担当は「書籍でもありえない数字」と驚きを語る。
「本来雑誌は、次の号の発売まで最新号が並び続ける想定で部数を決定するもの。たった5日でこれだけ売れてしまうのは異例中の異例、書籍でも見たことがない消化率です」(広報)
女性の問題より、世代の問題?
最も多い購入者の属性は「30〜49歳の女性」、次いで「30〜49歳の男性」だ。
購入者全体を男女比で見ると「女性の方がやや多い程度で、大きな差はない」。
むしろ、性別より世代で見た方が分布が顕著で「30〜49歳」が半分以上を占めているという。次いで「19〜29歳」が4分の1程度となった。
「この数字を見ると『女性たちの問題』ではなく、『自分たちの世代の問題』と捉えていらっしゃる方が多いのかも知れませんね」(広報)
11月には、この特集をさらに深めた単行本を発売予定。韓国の出版社との合同企画も進行中という。
Twitterでは、「ど真ん中ぶっこんでくる」「目頭が熱くなる」など熱量のある感想が多く寄せられている。
坂上陽子編集長は、重版にあたって以下のようにコメントしている。
「文藝」は今年4月発売の夏季号よりコンセプトとデザインを一新、約20年ぶりの大幅リニューアルが好評を博しました。そのリニューアル号を上回る今回の反響に、編集部は非常に驚きながらも、現代における文芸誌の役割に大きな手応えを感じています。今後も最高に面白い世界/日本文学シーンの最前線を発信していきます。