「ありえない売れ行き」文芸誌「文藝」異例の重版 ネットのアツい口コミが力に

    購買層はどんな人? 出版社に聞きました。

    河出書房新社は7月10日、季刊文芸誌「文藝」2019年秋季号を重版すると発表した。「文藝」の重版は、2002年以来17年ぶりだ。

    特集は「韓国・フェミニズム・日本」。

    一人の女性の人生を描いた『82年生まれ、キム・ジヨン』がベストセラーになるなど、日本でも注目を集めつつある韓国文学。現在の隣国の文学とフェミニズム的な視点にフォーカスし、日本文学とのつながりを探ろうという試みだ。

    特集に短編を寄せた作家陣10人のうち、半分の5人が韓国人作家。日本の文芸誌で海外の作家をこれだけ取り上げること自体が、まず珍しいという。

    『文藝』2019秋季号 韓国作家作品は ハン・ガン、イ・ラン、パク・ソルメのお三方が書き下ろし(イ・ランさんのは、今年韓国で出る小説集から先行掲載)。 パク・ミンギュ、チョ・ナムジュのお二方は、韓国で雑誌に発表され、まだ単行本化されてないものを初訳、です。

    チャレンジングなテーマと内容が発売前からネットを中心に話題に。

    発売直後から「いくつか書店を回ったけど売り切れだった」「Amazonで予約したのに、入荷見込みなしになって予約取り消しに」など、入手できなかった人の声が多く見られた。

    (´-`).。oO(先週金曜発売の「文藝」2019年秋季号ですが 朝:品切れ? 会社には在庫いっぱいあるし注文してもらえば からの 昼:…何この注文電話の多さ…もう帰りたい…他の仕事できない… からの 夕:…注文多すぎでFAX紙切れ… 今は、お急ぎください、しか言えない。 https://t.co/yn8a1UeST0

    河出書房新社 / Via kawade.co.jp

    【悲報】すみません、「文藝」秋季号は…注文殺到しすぎて……品切れました……もう……在庫ないです…… https://t.co/BlwrZ7KTcp

    一度は「増刷しない」と発表していたものの、発売から5日で紀伊國屋書店での全国消化率が76%を超えるなど、売れ行きも好調であることから重版が決まった。

    売り切れ続出「ありえない売れ行き」

    河出書房新社の広報担当は「書籍でもありえない数字」と驚きを語る。

    「本来雑誌は、次の号の発売まで最新号が並び続ける想定で部数を決定するもの。たった5日でこれだけ売れてしまうのは異例中の異例、書籍でも見たことがない消化率です」(広報)

    女性の問題より、世代の問題?

    最も多い購入者の属性は「30〜49歳の女性」、次いで「30〜49歳の男性」だ。

    購入者全体を男女比で見ると「女性の方がやや多い程度で、大きな差はない」。

    むしろ、性別より世代で見た方が分布が顕著で「30〜49歳」が半分以上を占めているという。次いで「19〜29歳」が4分の1程度となった。

    「この数字を見ると『女性たちの問題』ではなく、『自分たちの世代の問題』と捉えていらっしゃる方が多いのかも知れませんね」(広報)

    11月には、この特集をさらに深めた単行本を発売予定。韓国の出版社との合同企画も進行中という。

    Twitterでは、「ど真ん中ぶっこんでくる」「目頭が熱くなる」など熱量のある感想が多く寄せられている。

    韓国・フェミニズム・日本!!! 『文藝』すごいな。この「ど真ん中ぶっこんでくる」感じ。これは売れる /「特集「韓国・フェミニズム・日本」対談:斎藤真理子×鴻巣友季子/小説:イ・ラン、チョ・ナムジュ、西加奈子」 文藝 2019年秋季号 |河出書房新社 https://t.co/fWQuHcNvn9

    「ポップな鈍器」こと文藝秋季号の韓国・フェミニズム・日本特集、斎藤真理子×鴻巣友季子「世界文学のなかの隣人ーー祈りを共にするための「私たち文学」」面白くて鋭い。〈小さい武器で小刻みに書く〉〈「私たち」が盲目にならないように〉〈翻訳文学は日本文学の一部〉……小見出しですでに興奮ぎみ

    待望!の『文藝 2019秋号』。なんだろう、文芸誌の表紙をみて目頭が熱くなるのははじめてかも。特集もスゴいけど、磯部涼さんの新連載に血湧き肉踊ってしまう。姜信子さんの「極私的在日文学論 針、あるいは、たどたどしさをめぐって。」を、とにかく読んでみんな読んでおねがい読んで…と叫びたい!

    「面白い翻訳小説や、編集部が渾身の力で投げかけた特集の文芸誌が何故かめちゃめちゃ売れてるんです」 「当たり前では?」 「たしかに?」

    坂上陽子編集長は、重版にあたって以下のようにコメントしている。

    「文藝」は今年4月発売の夏季号よりコンセプトとデザインを一新、約20年ぶりの大幅リニューアルが好評を博しました。そのリニューアル号を上回る今回の反響に、編集部は非常に驚きながらも、現代における文芸誌の役割に大きな手応えを感じています。今後も最高に面白い世界/日本文学シーンの最前線を発信していきます。