「昭和に流行ったビーズバッグ、捨てちゃダメだよ」――細かいビーズを鞄に縫い付けたビーズバッグの貴重さを呼びかけるツイートが話題を呼んでいます。
昭和に流行ったビーズバッグ。 持っている人は捨てちゃダメだよ。いらないと思ったら誰かに譲って。ほつれてダメになってたら、手芸する人に材料としてあげて。 光り輝く日本のビーズはスワロスキーですら再現できない。なのに、作る人がもうい… https://t.co/yt4ycqjVFW
「お母さんやおばあちゃんにもらったやつ、押し入れの中にあるはず!」という人も少なくないかもしれません。TwitterやInstagramでも「母のお古」「祖母宅を片付けた時に出てきました」などと投稿する人が相次いでいます。
ビーズバッグ、うちの出してみたけどアンティークとかそんないい物じゃないです。 白いのは姉の成人式のために親が用意したもの。昭和四十年代くらいはこういうの流行ったよね。
さて、このビーズバッグ、今もよく見る……とは言えないとはいえ、一般的に流通していた商品です。本当にそれほど貴重なものなのでしょうか?
文化人類学・民族学の研究所、国立民族学博物館(みんぱく)の池谷和信教授に聞きました。
古墳時代以来?1000年ぶりの“流行”
池谷教授は「昭和のビーズバッグ」が文化的に価値がある理由を2点あげます。

ひとつは、長くビーズを装飾として使う文化がなかった日本で、突然広まったこと。
ビーズが誕生したのは今から約10万年前のホモ・サピエンスの時代。アフリカや欧米、アジアでは、古代から服や髪をビーズで飾る文化が根付いていますが、本州以西の日本では「古墳時代のあとで一度発展が止まった」といいます。

昭和に入り、海外からの輸入品の人気の高まりなどもあり、国産のビーズバッグが一大ブームとなりました。花や植物など、海外のものとはタッチが異なる繊細なデザインも多く、独自の進化を遂げていきます。
池谷教授は「日本では1000年以上経て、再度流行したと言える」と話します。
参考までに、みんぱくが世界中から集める収蔵品約34万点のうち、3%程度の約1万点がビーズ関連のものだそう。それほどまでに、人類の生活や文化とビーズは密接に結びついているのです。
もうひとつは、「線」ではなく「面」の装飾として生まれ、浸透したこと。
アクセサリー、服の刺繍など、ビーズ装飾は初めは線状のものから始まることが多いですが、バッグは最初から面を前提としたデザインです。和のテイストを取り入れ、アート性が高く仕上がっているものも多いといいます。

「着物の素材とビーズの相性があまりよくなかったのか、いきなりバッグから始まっているのは興味深い。世界的にも珍しい広がり方」と池谷教授は話します。
「ビーズバッグ、そして刺繍の技巧自体は海外にも古くからあるもの。なので、素材としてのビーズそのものや、技術面よりも、文化的な側面から“価値がある”と捉えています」
使ってないバッグ、保管してもらえる?
Twitterでは「いらないビーズバッグはみんぱくへ寄贈しよう」という呼びかけもあるようですが、実際はどうなのでしょうか?
同館に問い合わせたところ、収蔵を希望する場合「まずは写真と情報を送ってほしい」とのことでした。
資料を受け入れる際、その資料の背景となる情報を資料と一緒に聞き取りして、資料情報を作成しております。たとえばいつ作られたか、いつ購入されたか、どこで入手されたか、制作者の判明が可能か、などです。
これは、標本資料が研究資料として保存および活用できるかに係る、重要な情報となります。
通常は、写真などものの形がわかるものと、情報をお送りいただき、受け入れの可否を判断しています。
現在、開催中の特別展「ビーズ―つなぐ・かざる・みせる」でも、日本製のビーズバッグを10点以上展示しています。

池谷教授は「どれも本当に素晴らしいデザイン、その繊細さをぜひ目にしていただきたい」とする一方、「今回の展示物は我々の収蔵品ではなくお借りしたものなので、館のコレクションに加えたい気持ちも大いにある」と呼びかけています。
ビーズバッグは「失われた技術」…?
もうひとつ、論点として「当時のビーズの輝きは今はもう再現できない」「ビーズバッグは失われゆく技術」というものもありました。この点ではどうでしょうか?
「先に述べたように、まずビーズバッグの貴重性は技術面だけではありません。加えて、最盛期よりは小さくなっているとはいえ、国産のビーズバッグは、今も手作りで作られ続けています」(池谷教授)
昭和のビーズに、現代では再現できない高度な技術が使われており、今や復刻不可能……ということではないようです。むしろ技術は今も守られ、時代を超えて伝承されています。
「多くの伝統工芸と同じく、技術をどのようにして伝承していくかは課題のひとつ」。
1937年の創業以来、3代にわたってビーズバッグを作り続ける「柏ビーズ」の仙田和雅代表に現状を聞くと、こんな答えが返ってきました。
「時代は移ろうものなので、ただ同じようにというわけでなく、人や生活に寄り添いながら進化させ、技術を残していくのが私どもの使命と考えています。そうでないと、せっかく長く綺麗に使えるはずのビーズバッグが、修理もできないまま捨てられてしまいますから」
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ビーズを使ったバッグや小物を求める人は、年齢も性別も問わずさまざま。フルオーダーにも対応しており、プレゼントや記念に注文する人もいるそうです。
「ビーズバッグというと、糸を引っ掛けるとポロポロと落ちてしまうようなイメージがあるかもしれませんが、日本刺繍を応用した手法で作られた国産のものはとても丈夫。親から子へ、世代を超えて贈り主の思いとともに引き継がれていく魅力的な物だと思います」